面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「幸せのちから」

2007年03月05日 | 映画
主人公のクリス・ガードナー(ウィル・スミス)は、実在の実業家で、いわゆる“勝ち組”と分類される人物。
そんな彼も、一時は住む家を失い、息子(ジェイデン・クリストファー・サイア・スミス)と共にホームレス生活をするほどの極貧にあえいでいた。
本作は、そんなクリス・ガードナーの足跡を基に描かれた実話である。
しかし、単に成功を描いたアメリカン・ドリームの物語ではなく、息子を想う父の愛情であり、彼の成功は息子を守ろうとする思いの強さに拠るものなのだ。

とはいえ、ぶっちゃけこんな“勝ち組”は、ほんの一握りに過ぎない。
いや、まずいないと言っても過言ではなかろう。
「信じれば必ず達成できる」というのは、本当に実力のある人間にしか通用しない。
そしてその実力とは、思いを実現することができる能力も含まれる。

「ワーキング・プア」というイヤな言葉がある。
働いても働いても極貧の生活から抜け出せない。
食うために懸命に働くが、それでも貧乏から逃れられない人々。
クリスのように、ビッグマネーを稼ぎたいと大望を抱いているワケではない。
普通に布団で寝られる家に住むことができ、とりあえずは食うに困らないだけの収入を安定的に得たいと思っていても、どうしようもなく抜け出せない人というのは、確実にいる。

本作を観て希望を持つ勇気が湧くのは、とりあえずは映画を観ることができる余裕がある人々だけなのではないだろうか。
「もともと頭が良くて、能力があったんだから、クリスが成功するのは当り前。自分にはこんな夢のようなことが起きるはずがない。」
果たしてこの映画がワーキング・プアと呼ばれる人々の“ちから”になれるだろうか…

エンドロールを観ながらそんなことを考えた。
少し前まで、ワーキング・プアなんてアメリカの話と思っていたのに、気がつけばすぐ周りにそんな人々が溢れ始めている日本。
みんな、こんな国を望んでいたのか?


幸せのちから
2006年/アメリカ  監督:ガブリエレ・ムッチーノ
出演:ウィル・スミス、ジェイデン・クリストファー・サイア・スミス、タンディ・ニュートン、ブライアン・ハウ


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