面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「NINIFUNI」

2012年03月21日 | 映画
ある地方都市。
若い男の二人組が強盗を働いた。
犯人の一人・田中(宮崎将)は、盗んだ車でどこへ行くともなく彷徨い、やがて人気の無い浜辺へとたどり着く。
一人悶々と時間を過ごした田中は、おもむろに車の窓にガムテープを貼って目張りしていった…。

明るい日差しの下、田中の乗った車が停まっている浜辺に、プロモーションビデオの撮影のためにももいろクローバーがやって来た。
元気いっぱいに、跳ねて歌って踊る彼女達の後方に広がる草むらの中に、ひっそりと停まったままの車が見えている…


東京藝術大学修了作品として製作された長編デビュー作『イエローキッド』が、国内外で高く評価された真利子哲也監督がメガホンをとった本作は、経済産業省とNPO法人映像産業振興機構(VIPO)が主催する、次世代のクリエイター発掘を目的としたプロジェクト「コ・フェスタPAO」のうち、“movie PAO”のカテゴリで製作された42分の中編作品。
ある地方都市で実際に起こった事件から発想を得て作られたとのこと。

「NINIFUNI」とは、仏教用語で「二つであって二つではない」ということを意味する「而二不二」。
物事には「裏」と「表」、「光」と「影」というように「対(つい)」になるものがあり、更にその「対」になるものから何かの広がりが生まれるという監督の意図が織り込まれている。
中でも、世間から隔絶された空間の中で孤独に包まれている田中と、アイドルとして世間の注目を集めてまばゆいばかりに輝くももいろクローバーとの、互いの存在を対比させてとらえた絶妙のアングルに思わず唸った。
息を呑むほどのインパクトに心の琴線は轟音を立て、鑑賞後も余韻が込み上げてきて、そのシーンは脳裏に鮮明に焼きついた。


このご時世、ももクロの側に立つことは無くても、田中の側に転がり落ちることは、誰でも、今すぐにでもできる。
二つであって二つでない。
真逆のものが存在して一つの世界を築いている。
世の中の成り立ちについて思いを巡らせてみるのも、時には必要なことではないだろうか。

真利子監督の鬼才が光る“感じる映画”。


NINIFUNI
2011年/日本  監督:真利子哲也
出演:宮崎将、山中崇、百田夏菜子、玉井詩織、佐々木彩夏


最新の画像もっと見る

コメントを投稿