面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「ゾディアック」

2007年06月25日 | 映画
自分の中で勝手に「セブン」のイメージが膨らんでいたのが災いした。
実話であり、未解決事件であり、結局は事実を丁寧になぞるしかないところに、本作の限界がある。
サスペンス、推理劇というよりは、謎解きに魅せられ、人生を誤った男達がいたということを紹介するヒューマンドラマ。

法学部法律学科卒業、刑事学を専攻していた身として、ちょっと面白いと思った点がひとつ。
さまざまな物証による科学的根拠と、あらゆる状況証拠が揃っていても、その二つが結びつかなければ逮捕には至らない、犯人として必ずしも特定されるものではないという事実。
映画のなかで、こいつこそ真犯人だ!と観客に思わせる人物を特定しているが、確たる決定的な証拠は無い。
現場に残された物証と、証言その他の状況証拠との間に立ちながら、二つの証拠が直接的には合致しない。
グリコ事件の捕り物同様、ゾディアック事件でも犯人に警察が質問していたという。
その決定的な犯人逮捕の瞬間を逃したところから、完全な迷宮へと迷い込んでいったというこの事件。
自分の犯行声明に対する反応を楽しんでいた犯人が、もしかすると生きて本作を笑いながら鑑賞しているかもしれない…

アガサ・クリスティかエラリー・クイーンか、はたまた横溝正史か。
長編推理小説を読んでいるような気分。
エンドロールが流れたとき、「ふーっ」と大きく息をついてしまった…

気力・体力のしっかりしている時に観るべき。


ゾディアック
2007年/アメリカ  監督:デビッド・フィンチャー
出演:ジェイク・ギレンホール、マーク・ラファロ、ロバート・ダウニー・Jr、アンソニー・エドワーズ、ブライアン・コックス


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