面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「アウトレイジ ビヨンド」

2012年12月11日 | 映画
5年前、卑劣な“下剋上”で暴力団「山王会」の二代目会長に就いた加藤(三浦友和)。
かつて大友組の金庫番として資金稼ぎに辣腕をふるった石原(加瀬亮)を若頭に抜擢して経済力を高め、「山王会」を豊富な資金力を持つ関東随一の巨大組織へと成長させた。
今や政界にも影響力を持つほどの勢力を持った山王会に対して、巨大暴力組織の壊滅を目論む警察組織は、苦々しい思いを抱いていた。
そんな状況を最大限利用して立身出世を狙おうとするマル暴の刑事・片岡(小日向文世)は、関西の雄である暴力団「花菱会」に目を付ける。
片岡は、加藤体制になってから冷遇されている古参幹部を焚き付け、表向きは友好関係を保つ東西の巨大暴力団の対立を巻き起こすべく謀略を仕掛けていった。

同時に片岡は、獄中で死んだとしていた元山王会傘下大友組組長の大友(ビートたけし)に接近する。
そのうえで「大友は死んだ」という情報を伝えていた加藤と石原に、大友が生きていることを伝えた。
大友を裏切って加藤に付いた石原は恐れおののき、大友を殺そうと躍起になるのだった。
片岡が接見してからしばらくして、「模範囚」として大友は出所する。
部下を連れて出迎えた片岡だったが、大友は暴力団に戻る気はないと言い放つと出迎えを拒否し、昔からの馴染みである韓国系の有力者の元へと身を寄せた。
何とかして大友を“動かそう”とする片岡は、かつて大友にメンツを潰された挙句に大友を刺した木村(中野英雄)を煽り、大友と力を合わせて「山王会」を倒すよう仕向ける。
そして「山王会」に対する恨みという、木村と大友の共通点を接点として二人を引き合わせ、大友の木村に対する“負い目”と大友の“昔気質”の性格を巧みに利用し、二人を兄弟分として結びつける。
更に二人を「花菱会」に紹介し、後ろ盾として二人を支援させることに成功する。

「山王会」に対して落とし前をつけようとする大友と木村。
関東に勢力を伸ばそうと目論む「花菱会」。
あの手この手を駆使して「山王会」の弱体化を画策する片岡。
三者の思惑が交錯し、再び激しい抗争劇の火ぶたが切って落とされる……!


前作「アウトレイジ」では、「殺し方の見本市」を前面に押し出した北野監督だったが、今回は登場人物の人間関係に焦点を絞って、現代のヤクザ事情を描く。
そのため、残酷な殺人シーンはほとんどなく、銃撃やナイフなどによるオーソドックスな襲撃シーンにとどまり、様々な人間模様を見せることに終始している。
皆が“腹に一物”を抱えて接近して慎重に探りを入れながら自らの思惑を遂げようとし、「騙し騙される」というよりも、互いに「利用し利用される」という関係性が縦横に展開され、義理人情を重んじる昔ながらの「任侠」など雲散霧消してしまったヤクザ世界の冷酷さを活写した。

いわゆる「ヤクザ映画」に位置付けられる作品ではあるが、昔の東映任侠路線のテイストと一連の「仁義なき戦い」の雰囲気を内包しつつ“今”を織り込んだ物語の展開は見事。
筋を通すことにこだわる大友達は昔ながらの“任侠道”に生き、「花菱会」は二枚舌を巧みに使いこなして“仁義なき”戦いを仕掛け、勢力を伸ばそうとする。
そして、暴力団同士の抗争を企てて暗躍する片岡は、マル暴の刑事でありながら微塵も正義感が感じられず、正に“第三極”としての存在感を示す。
この片岡の姿こそが、過去のヤクザ映画に無い異彩を放つ要因となっている。
「今の世の中、どうなってんだよ!」というビートたけしのツッコミが聞こえるようで痛快だ!


前作に引き続き出演する面々に、関西暴力団の幹部として西田敏行、神山繁、塩見三省の迫力あるキャラクターが加わって更にヒートアップ!
…しかしながら個人的には、彼ら3人の大阪弁が“生粋”でな無いところに物足りなさを感じたのが残念。
「極道の妻たち」の岩下志麻的な違和感が否めない。。。
いっそ渋谷天外や大村昆を幹部に仕立て、思いきり関西弁の罵詈雑言をまくしたてさせたら面白かったろうに、というのはトーシローの浅知恵ではあるが、少なくとも堤真一や佐々木蔵之助ら、関西出身の俳優陣を起用してほしかったとは思う。

とはいえ、最後までドロドロの人間関係が渦巻いて、話の中にグイグイ引き込まれて目が離せない。
これまた個人的ながら、ぜひシリーズ化して平成のヤクザ映画として確立してほしいもの。
お子さんが観るのにはお勧めできないが、暴力的娯楽活劇として面白い“北野怒劇”。


それにしても、結局ビートたけしがカッコよく描かれていて、オイシイところも持っていってしまうというのも、監督特権ということか。


アウトレイジ ビヨンド
2012年/日本  監督:北野武
出演:ビートたけし、西田敏行、三浦友和、加瀬亮、中野英雄、松重豊、小日向文世、高橋克典、桐谷健太、新井浩文、塩見三省、中尾彬、神山繁、田中哲司、名高達男、光石研


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