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面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「ゴールデンスランバー」

2010年01月25日 | 映画
首相の凱旋パレードが行われるすぐそばで、宅配ドライバーの青柳(堺雅人)は、大学時代の友人・森田(吉岡秀隆)と久しぶりに再会していた。
停車した車の中で話し込む二人だったが、どうも森田の様子がおかしい。
そして、突然近くで轟く爆発音。
爆弾テロにより、首相が暗殺されたのだ。
「オズワルドにされるぞ!」。
ケネディ大統領暗殺犯とされる男の名前だが、なぜ森田が自分にそんなことを言うのか分からずに戸惑う青柳だが、気がつけば車に二人の警察官が近づいてきた。
「逃げろ!どんなにぶざまな姿になっても生き延びろ!」
車から無理やり追い出された青柳に、警官たちは銃を向ける。
とっさに逃げ出す青柳に警官が迫ったその刹那、森田の車は爆発した。
前からも横からも警察官が迫り、訳も分からずに逃走する青柳。
本人には全く身に覚えの無い“証拠映像”が次々とテレビで報道され、青柳は自分が首相暗殺の犯人に仕立てられていることを知る。
思い返せば、数日前からおかしなことはあった。
誰かが巧妙に仕組んだ計画だったのだ。
青柳は、大学時代の友人たちに助けを求めるのだが、警察は先回りするように彼を追い詰めていく…

「最後に残された武器は、人を信じることだ。」
孤独な逃亡に追い込まれ、人間不信に陥ってしまう境遇にありながらも、人を信じ続ける青柳。
そんな彼を助けようとして、今はバラバラに暮らしているかつての仲間達が再び結集する様を象徴する、ビートルズの名曲「ゴールデンスランバー」。
ビートルズ最後のアルバムとなった「アビーロード」に収録されているこの曲は、その次の曲とメドレーで繋がっている。
それぞれの曲を収録し終えたスタジオで、最後にひとり残ったポール・マッカートニーが、もはやバラバラになってしまったビートルズが、かつてのように再び一つとなれることを祈って編集したと言われている。
学生時代、みんなでよく聴いた「ゴールデンスランバー」を思い出し、青柳と心を合わせるように再び集結する仲間(竹内結子、劇団ひとり)姿に、心が温かくなる。

ところで、ケネディ大統領暗殺犯とされるオズワルドは犯人ではなく、真犯人たる黒幕は他にいる、という話は、もはや定説のようになっている。
“巨大組織”がその気になれば、無実の人間を犯罪者に仕立て上げることなど、いとも簡単にできるということは、昔から小説や映画の中でも語られてきた。
宅配ドライバーとして、ごく平凡な生活を送ってきた、ごくフツウの人間である青柳が、ある日突然首相暗殺犯とされ、瞬く間に数々の“証拠”が出てきて追い詰められていく。
非現実的な話だが、誰にでも起こりうる話と言える。
「そんなん、ありえへんわ!」と、果たして100%言い切れるだろうか?
嗚呼、怖い、怖い…

首相暗殺犯に“なった”息子について、反省や謝罪のコメントを求めて押し寄せてきたマスコミに対して、青柳の父親(伊東四郎)が言い放つ。
「『信じている』んじゃない。『知ってる』んだ。あいつは犯人じゃない!」
テレビのニュースで流れる様子をワンセグで見ていた青柳同様、胸にグッと迫るセリフがイイ。

また、オープニングのシーンとラストシーンとの“リンク”の仕方が実にニクい!
ひと癖もふた癖もある登場人物と、随所に散りばめられた“くすぐり”が、スリリングな逃亡劇に絶妙のテイストを加えていて、最後まで観客を飽きさせない佳作。


ゴールデンスランバー
2010年1月30日公開/日本  監督:中村義洋
出演:堺雅人、竹内結子、吉岡秀隆、劇団ひとり、貫地谷しほり、相武紗季、ソニン、大森南朋、柄本明、香川照之