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面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「行旅死亡人」

2010年01月10日 | 映画
ノンフィクション作家を目指すも、なかなか思うようなものが書きだせず、スーパーでバイトして生活費を稼いで一人暮らしを続ける滝川ミサキ(藤堂海)。
悶々と日々を過ごしていたある日、電話がかかってきた。
「滝川ミサキさんが急病で倒れ、病院に運ばれました。」
「え?滝川ミサキは私ですけど…?」

誰が自分を騙っているのか!?
バイト仲間のアスカ(阿久沢麗加)を連れて病室を訪れると、こん睡状態でベッドに横たわっていたのは、以前勤めていた会社の先輩・吉村靖子(長宗我部陽子)だった。
「靖子さん!」
お世話になった先輩がなぜ自分の名前を?
そして“靖子”は正体を明かすことなく息を引き取り、ミサキは真相を確かめるために行動に出る…

「行旅死亡人」とは、飢えや寒さ、病気、もしくは自殺や他殺と推定される原因で、本人の氏名や本籍、住所などが判明せず、かつ遺体の引き取り手がいない死体を指す法律上の呼称。
「行旅病人及行旅死亡人取扱法」に基づき、死亡推定日時、発見場所、所持品や着衣、身体的な特徴などの詳細が「官報」に公告されるのだが、一般の人が「官報」を目にする機会は少ないため、引き取り手が現れることは稀だとか。

「行旅死亡人」になりそうだった一人の女性の足取りを追ううちに、その女性が生きてきた凄まじい人生に触れることになるミサキ。
ミサキの名前で息を引き取った女性の素性にようやくたどり着いたとき、そこに隠されていた切ない愛の物語が浮かび上がってくる。

井土紀州監督は、「他人の名前で15年余り生き、交通事故で死亡した男性がいた」という新聞記事に着想を得て本作を撮ったという。
しかし実際の「行旅死亡人」は、自らの意思で素性を隠してきたようなケースは少ないのだとか。
連日、日本各地で発見されている「行旅死亡人」。
このご時世、今後ますます増えていくのかもしれない。


行旅死亡人
2009年/日本  監督・脚本:井土紀州
出演:藤堂海、阿久沢麗加、たなかがん、小田篤、本村聡、長宗我部陽子