面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「わたしの季節」

2006年07月02日 | 映画
滋賀県野洲市にある重症心身障害施設、第二びわこ学園。
1968年に開設されてから40年近い月日が経ち、2000年、新築移転計画が動き出したことをきっかけに映画制作の話が持ち上がり、製作されたドキュメンタリー。

カメラは、第二びわこ学園に住む人々の日常を淡々と写し撮る。
粘土遊びの時間、ある入所者が、水で柔らかくした粘土をただひたすら顔に塗りつけていく。
喜ぶでもなく、ただ黙々と無表情のまま、顔一面に粘土を塗り続ける。
そして、ひたすら粘土に水を混ぜて彼の“作業”手助けする職員。
そこには、私たちが日常生活を営むための行動における“意味”を見つけることはできない。
いや、見つける必要もない。
彼にとって顔に粘土を塗りつけることに“意味”は無い。
ただ「顔に粘土を塗りつけたい」から塗っている。

人は、疲れて心を病んでくると、「自分が生きることに意味があるのか」と自問し、答えを見つけられずに虚無感・無力感に襲われ、暗闇へと落ち込んでいく。
自分の人生、自分が生きることについての“意味”を、むやみやたらに追い求めて見つけられず、もがき苦しむ。

「生きている」ということ、ただそれだけで十分。
そんな普段は気にもとめないことを、思い起こさせてくれる。

心が疲れてどうしようもないとき、頭の中を真っ白にして、この映画を見てみるのもいいのでははいだろうか。
この映画の“意味”を考えるのではなく、観るものに何かを感じられれば、“心の汗”ではない涙が、自然と溢れ出すだろう。
そしてそれを止めるでもなく、溢れるがままに自然に任せた後、きっと心が安らかになるはず。

「わたしの季節」
2004年/日本  監督:小林茂