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日々のあれこれ

現在は仕事に関わること以外の日々の「あれこれ」を綴っております♪
ここ数年は 主に楽器演奏🎹🎻🎸と読書📚

真昼のシンデレラボーイズ 地域密着型スーパー復活作戦会議!

2025-03-20 01:42:49 | ショート ショート

 二週間ほど安静にした結果、ぎっくり腰も回復に向かい、無事に業務をこなせるようになった。七人の爺さんたちに感化され、半信半疑なまま、狸神さま、どうか、スーパーが復活する案を下され~と祈ってみた。すると、爺さん達が言った通り、狸神が現れたから、こりゃ大変!いや、大変に有難いことだ。

「わしを呼んだかぇ?」

狸爺、もとい神は言う。しわくちゃの顔にキラリと光る小さな目を右から左へと動かしながら、杖の先で地面を軽く叩いた。

「はい、呼びましたとも!スーパー再建のアイデアを…」俺が最後まで言い終わらぬ内に、狸神は言った。

「顧客も地域の人々も若造も爺ちゃん婆ちゃんも巻き込んだ、地域の憩いの場とすることだな!そのために皆がアイデアを持ち寄れば良いではないかい!」

興奮したのか、隠れていた狸神の尻尾がぼわっと太くなり、一瞬揺れた。

「...と、言いますと…一体、どうやって⁉」

「お若いの、頭は大丈夫かぇ? 作戦会議を開けばよろしかろう!そのような単純なことも思いつかぬとは…」

そういうと、狸神は ふわりと宙に浮いた。

俺は、ぽりぽりと頭をかいた。確かにそうだ。

 

 「...という訳でして、この度、皆様に集まって頂いたという訳です、はい。ご意見がある方は挙手を… はい! そこの赤いちゃんちゃんこの御婆ちゃん、マイクを受け取って意見をどうぞ。」

七人の爺ちゃんグループ筆頭、光男の妻である、お梅婆ちゃんがすくっと立ち上がると🎤マイクを握り、梅干しのような口をして喋り始めた。

「私らは顔が広いけのぅ。爺さんたちは現役時代の人脈を頼りに地元農家、漁業者から地元の商品を取り扱う、ちゅうのは? それらを使った爺ちゃん婆ちゃん弁当を開発するのよぉ」

すると、爺ちゃん婆ちゃんたちから、次々と意見が出始めた。やはり、人生経験豊富だからな。俺はふむふむと頷きながら、耳を傾ける。

「おお、そうじゃ。子育て世代の母子にも参加してもろうてのぅ。お料理教室がてら、手伝ってもらうとよかろうて」

「投票箱を設置して、”あなたが選ぶ、地元商品、ここでしか買えない特産品の棚”を作るんはどうじゃろうか?」

「そりゃ、よかばい!」

と声を上げた光男は、手を叩いて笑いながら、隣の爺さんの肩を叩いた。

「元々とあるスーパーで定期的にやっておる、北海道、京都フェアに加えて、わが町フェア、っちゅうのをやるのよ! 地元の野菜や商品を売れば、なんじゃ…ほら、あれじゃよ、輸送費が余りかからないあれ…」

光男の隣で肩を叩かれた爺さんが天井を見た。

「もしかして、「地産地消」を推進することを言おうとしてるんじゃないですか?」

語彙が出てこないようで、困っている爺さんを気の毒に思ったのか、高校生男子が口を開いた。

少し遠慮がちに、小声で喋った地元高校生に皆の目が集まり、高校生男子はますます小さくなった。…と次の瞬間、どっと、どよめきが起きた。

「若者よ! よくぞ言った! 爺婆ばかりがさっきから意見を出しとるなぁと心配になっていたが、勇気あるぞよ。流石、若い頭は違うのぉ」

高校生男子は、はにかんだように笑う。彼の背後に腰かけていた光男の友人も負けじと言う。

「イベント会場… いや、待てよ。店内に交流スペースを復活させてはどうだろう? 中央にはテレビを設置したらよか。きっと、盛り上がるばい!」

うーむ… 俺は、この意見には正直賛成しかねた。というのも以前、交流スペースに置いてあったテレビのチャンネル争い、ベンチ争いが毎朝、勃発し、俺が口喧嘩を止めるために割って入ったこと、数知れず… 腕組みをしたまま、内心、焦っていると、紫色に白髪の一部を染めたモダン婆ちゃんの一人が言った。

「カフェコーナーとインターネットスペースにしたらどうじゃろう? スマホの使い方、ネット商品の取り扱い、足が悪くて歩けない高齢者も多いしのぅ。それぞれの特技を生かし、ネット注文と配達を若造にやってもらうというのは?」

これには皆も関心を寄せた様子だ。隣同士で意見交換が始まった。勿論俺も関心をよせつつ、内心ほっとしたのだった。テレビ設置を望む声は出て来ない。そうか!ネットだ!これはいいかもしれないな… これがあれば、高齢者も忙しい現役世代も、この地元スーパーをもっと頼りにするだろう。カフェにはあらゆる世代の人も必然的に集まるな! これぞ、交流スーパー、いいぞ、いいぞ!スーパーの日常や裏側を共有する「スーパー探検ツアー」を定期開催するのも良いかもしれない。以前、ブログから書籍化という流れもあったが、やはり、地元メディアに取り上げてもらわねば! 俺の頭も活発に動き始めた、その時、今度は三つ編みの小学生の女の子が手をあげた。

 「スーパーの裏側を見せて欲しいです! スィングドアの向こう側へ店員さんたちが消えていくでしょう。どうなっているのか見たいといつも思う」

俺は思わず、ガッツポーズをしてみせた。

「よっしゃ、君、いいこと言うね。名前は?」

「八木さくら、です」

「おお、あの伝説の調味担当者、八木さんのお孫さんか。どうりで賢い筈だね」

俺がそういうと、さくらちゃんは、顔を赤らめた。さくらちゃんの隣に座っていた友達も、座ったまま得意げに言う。

「Wi-Fi、ゲームのイベントもあると、いいと思います!」

「わいわい? わいわいゲームもよかばい」

光男の発言に、若者層はどっと沸いた。

わいわいゲームだってぇ。だれか教えてあげなきゃ。それぞれが勝手にしゃべり始めた数分後、副店長の俺が総括した。

「はい!皆さん、お静かに!会議の内容は、店内の掲示板に貼りだす他、地元メディアにも取り上げて頂きます。更に話題を呼び、更なる意見が集まることでしょう。では、これにてお開きにします」

 とにかくも、こうして、スーパー再建のためのアイデアは大方、出そろった。副店長としての俺の役割も最低限達成できたのではなかろうか...。俺は会議室に集まった地域住民を見まわし、少しほっとした。

皆が満足そうに去っていく後ろ姿を見ながら、俺は狸神と七人の爺ちゃんたち…真昼のシンデレラボーイズに感謝した。たまにぎっくり腰になるのも、そう悪くはない…かも…しれない。

何を売るか、も大事だが、成功のポイントは、世代間交流がどれだけ活発に行われるか、皆がどうスーパーに集い、支え合うか、だろう。大方、皆が同じ方向を向いていると確信した俺は、とあるスーパー再建の明るい未来を狸神より早く予言しておいた。えっへん❣ 

活発な会議に満足したのだろう。赤ちゃんから高齢者まで、皆がスーパーに集う明るい未来が見えた気がした。狸爺、いや、神はニヤっとすると、「お若いの、困ったらまた呼びなはれ」という言葉を残し、天へと帰っていったのだった。狸神さま、ありがとうよぉ! 

 会議から一年後… カフェコーナーには学校帰りの中高生、時には大学生や留学生が教科書やノートを広げ、主婦や高齢者も日常的に立ち寄っては、「元気にやっとるねぇ」とお互い声を掛け合っていた。子どもたちは親と一緒に「スーパー探検ツアー」で店内を巡り、農家さんたちは直売イベントで不揃いの野菜、果物も売りさばき、見た目より味と新鮮さで商品を選ぶ顧客が増えた意義も大きい。何より人気だったのは、爺ちゃん弁当だ。初日に完売した時は、俺の目頭も熱くなったものだ。豪快なメニューはあっという間に売り切れ、今ではリクエストメニューも増えた。こうしてスーパーがにぎわう光景は主に毎週末見られたのであった。活気を取り戻した店内を歩きながら、俺は地域住民やスタッフ一同に心から感謝した。あ… もう一人、いたなぁ。

 もしかして… わし、失業じゃろか? 狸神より

 

完❣

Comments (5)
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