青山潤三の世界・あや子版

あや子が紹介する、青山潤三氏の世界です。ジオログ「青山潤三ネイチャークラブ」もよろしく

中国の野生植物 Wild Plants of China リンドウ科Gentianoceae-51

2021-03-24 20:39:29 | コロナ 差別問題と民主化運動 中国の花


★3月23,24日にいいね!その他ありがとうございました。


読者の方々に質問です(僕は頭が悪いので、教えて頂ければ幸いです)。

【Ⅰ】
マスクは、なぜ必要なのですか?

【Ⅱ】
「沖縄に対する日本」
「台湾・チベット・ウイグルに対する中国」
の違いを教えて下さい。

*毎回(リンドウの項目奇数回)のブログ記事の冒頭に、この質問を繰り返し続けることにします。

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「ツルリンドウ」に纏わる“恨み辛み”を書きます(笑)。

この文章は、「リンドウ」の話題を最初に掲載した日(1月18日)の翌日に書き、どうせなら他のリンドウについても書いておこうと寄り道をしている間に、随分と後回しになってしまったものです。

いろんな世界の人たちから、「お前を潰してやる」「この世界から追放してやる」「生きていけないようにしてやる」と、
異口同音に言われ続けてきました。むろん、僕はどうしようもないダメ人間なので、仕方がない事ではあるのですが、どうしてそこまで嫌われねばならないのか。まあ、自分が悪いのでしょうけれど、、、。

その例の一つです。今までにも(ブログ以外のプラットホームでも)何度か書いてきました。 

屋久島産の「ツルリンドウ2種」の話。

以前は、屋久島のツルリンドウは、本土にも普遍的に分布するツルリンドウの一種とされてきました。低標高地産はツルリンドウそのもので、山岳地帯産はその変種(記載は品種だったかも知れない)ヤクシマツルリンドウ。

しかし、20世紀末になって山岳地帯のツルリンドウには、「ヤクシマツルリンドウ」のほかに、もうひとつ未記載の別種があることが判明し、T大学のY博士(僕より5-6歳下、1983~84年頃には20歳代後半から30代初めぐらい)によって、屋久島固有の新種が記載されました。

Y博士(当時まだ院生だったのですが一応「博士」と表記します)には、僕の2冊目の著作になるはずだった(1987年刊行予定)「屋久島植物図鑑」に、オリジナル報文として「屋久島の固有種(彼が命名した新分類群を含む)」を寄稿して貰っていたのです。

しかし、84年に僕が山で滑落して半年間入院、翌年担当編集者が重病で入院、と思わぬアクシデントが重なり、ほぼ仕上がったところで中断したままの状態になってしまっていました。

結局、予定より2年遅れの87年に刊行することになり、見本刷りも出来上がり、諸雑誌などに広告も紹介されました。しかし、その2年間の間に屋久島の植物の分類上の位置づけに関しての新たな見解が加わり、Y博士から頂いた「屋久島の固有種」の報文内容の幾つかを変更、それに伴って数枚の写真を組み替えざるを得なくなったのです。見本刷りの完了段階で写真を組み替えることは、出版社側にとっても容易なことではありません。でもY教授の要求も当然ですし、僕としても何枚かの写真の差し替えは絶対に譲れない。結局、出版社との交渉は決裂し、刊行を中止してしまいました。

それから数年経ち(その頃、僕自身は拠点を屋久島から中国に移していた)、ある植物関係の雑誌で、僕の写真と記事で屋久島の特集を組むことになりました。数10頁に及ぶ大きな企画です。

かなりのボリュウムで、その中にY教授が新種記載した屋久島固有種のツルリンドウもあった。それを見たY教授 が激怒しました。和名が違っている、と。

Y博士の(英文)記載には、日本名として「ハナヤマツルリンドウ」示されていました。厳格な規約のある学名と違って、和名(ローカルネーム)に対しては特に規約はありません。同じ植物に複数の和名が存在する例も数多くあります。淘汰されて、そのうちの一つが最終的に残るのです(今も複数の和名が併用されている例も少なからずある)。

私見では、出来る限り「昔からある名前」を使いたいですね(近年、それら「土着的な名前」が排除されていきつつあるのは、寂しいです)。

新しく学名を付けた時(いわゆる「新種」発表の際)は、通常、命名者(それが日本人の場合)によって「和名」が提唱されます。必ずしも拘束力はないのですが、それを尊重して使用するのが通常です。

ぼくは、Y博士が新種としたツルリンドウの和名を、「ハナヤマツルリンドウ」ではなく「ハゴロモツルリンドウ」として、写真とともにその雑誌に掲載しました。

それは、僕が付けた名前ではありません。Y博士の提唱です。

新種として記載する前に、Y博士から「こういう和名にしようと思うのだけれど、青山さんはどう思いますか?」と相談されました。僕は「それいいですね、それにしましょう!」と賛成。

そのような経緯がありました。

単行本(図鑑)の刊行が中止となり、Y博士とも連絡が途絶え、数年が経って雑誌に紹介したときに、Y博士の最初の提案どおり「ハゴロモツルリンドウ」にしたのです。

Y博士は、僕の図鑑の刊行が停止され、次に僕が雑誌に掲載するまでの間に、(もとは僕の図鑑に寄稿して頂く予定だった)草稿を、改めて正式な新種記載論文として学会誌に発表しました。その論文中に「日本名は“ハナヤマツルリンドウ”としたい」と付されていたのです。

しかし、僕は、その論文自体の存在を知らなかった。「ハナヤマツルリンドウ」の名が提唱されたことも知りません。だから、最初に提唱されていた「ハゴロモツルリンドウ」を使用したのです。

知っておくべきなのを知らなかったのは僕の手落ちです(当然Y教授から論文掲載紙の献呈があるだろうと、お人よしにも考えていたこともあって、知らなかったのです)。

電話での会話を鮮明に覚えています。とにかく彼は激怒した。

すぐさま訂正しろ、と。そんなの無理に決まってるじゃないですか(既に刊行された雑誌だし)。

そして、“たかがカメラマンごときが、学問の領域に足を踏み入れてはならん”、という、お決まりのフレーズ。今後、このような記事(屋久島の植物についてのオリジナル見解に因る記事)を欠くようなら、この世界で生きて行けなくなるよう「抹殺してやる」、ということです。

それはまあ、いつものことで、(昆虫の世界でも植物の世界でも)数え切れないほど浴びせ続けられています。議論するつもりはありません。

それよりも、Y博士の怒りは、僕が「和名を間違えて紹介したこと」で、彼の立場が傷つけられてしまったことにあるのだと思います。

というのは、彼の屋久島での調査は(個人で自分のお金で行っている僕などとは違って)国(あるいは何らかの機関)からの援助で為されているわけです。「新種発表」を行う際は、国(や各機関)への忖度のようなものが必要になってきます(それ自体は分かるし、別に否定すべきことじゃないと思います)。

その論文には、3つの新種が記載されていました。
「コスギニガナ」
「ヤエダケオトギリ」
「ハナヤマツルリンドウ」
です。

Y博士の言うに、新種発表に当たっては、(国や県からの援助に対してのお礼の意味も込めて)屋久島を象徴する地名を和名に冠する、という申し合わせが前もってあったようなのです。

小杉谷の「コスギ」、山上部山岳地帯の総称・八重岳「ヤエダケ」、そして屋久島の山岳原生林を代表する花山自然保護地域の「ハナヤマ」。

ニガナの一種と、オトギリソウの一種と、ツルリンドウの一種の新種の和名に、それらの名を冠せたのです。

オトギリソウについてはよく知らないのですが、「山上部のツルリンドウ」と「山麓の不思議なニガナ」については、僕も別個に調べていました。集落周辺の雑草的植生の中に育つ「ニガナ」の多くが、この「コスギニガナ」に相当します。

無論、トロッコが分け入り昔は大きな集落さえ成していた小杉谷にも分布していますが、本来は麓の人里植物です。 「小杉谷」の名は、ふさわしくないと思います。でもまあ、こういう“変化球めいた命名”は、たまにはあっても良いのかも知れない、と、とりあえずは納得しています。

しかし、「ハナヤマツルリンドウ」の方に関しては、遥かに大きな違和感がある。この植物は、山上部の、開けた明るい環境(ヤクシマシャクナゲなどの灌木を交えたヤクザサ草原)に生育します。

鬱閉した花山原生林の名は、どう考えても場違いです。そこはY教授も重々承知したうえで、あえて「ハナヤマ」を選んだのでしょうから、仕方ないことではあるのですが、、、、。

でも僕は想うのです。Y教授が最初に提案した(そして新種記載時にそれを和名として指名するものとてっきり思っていた)「ハゴロモツルリンドウ」、、、、。いやもう、実にこの植物にぴったりの名前です。

従来から知られていたツルリンドウ(及び山上部変種ヤクシマツルリンドウ)と異なる特徴と言えば、もちろん実が液果にならず蒴果になることにあるのですが、花の外観も、花筒や花冠部がふっくらしていて、色も明るく、株全体も 蔓が樹木や岩にふんわりと寄りかかって、まさに“羽衣”的印象なのですね。

生育環境も、広大な笹原に不思議な巨岩が鎮座した、天上の神話の世界を思わせる、まさに「はごろも」が漂い浮かぶ印象の中にあります。

同じところに生育する代表的な屋久島固有植物「イッスンキンカ」(麓には別変種あるいは近縁別種のアキノキリンソウやシマコガネギクが生育)とセット。

「ハゴロモツルリンドウ/羽衣蔓竜胆」
「イッスンキンカ/一寸金花」
この「天上の神話の世界」に何とピッタリな、そして、なんて素敵な和名ではないですか。

Y博士は、最初に自身が提唱していた「ハゴロモツルリンドウ」の名を捨て、「ハナヤマツルリンドウ」の名を(「コスギ」「ヤエダケ」共々もしかすると本意ではなく?)受け入れたわけですが、でも僕は(元はY博士本人提案の)この素敵な名は、絶対に捨て去るべきではない、と思っています。

「抹殺してやる」云々に対する恨み辛み(笑)ではなく、そのこととは関係なく、屋久島を心から愛する人間としての使命であるとも思っています。

(繰り返し言うけれど「和名」呼称の使用には基本的に制約はない)

僕やY博士は、そのうちに消えてしまいます。でも屋久島の自然は、永久に(だと思う、、、余り自信はないですが、笑)残る。屋久島の自然の魅力を、植物の呼び名で分かり易く伝えるために(たとえ僕の存在が抹殺されようとも)、「ハゴロモツルリンドウ」の名は残さねばなりません。

ちなみに、屋久島の山(少なくとも山上部のヤクザサ帯周辺)に生えているツルリンドウは、大多数がこの「ハゴロモツルリンドウ」のほうです。普通のツルリンドウ(山地帯産は変種ヤクシマツルリンドウ)は、僕の知る限り稀にしか見ることが出来ない。概ね中腹以下の林内です。

そのことから考えて、最初に「屋久島固有変種ヤクシマツルリンドウ」として記載されたのも、もしかすると「ハゴロモツルリンドウ」の方の個体ではないのだろうか? と僕は疑っています。むろん、Y博士がきちんと検証してのことですから、原記載そのものに使われた標本個体(ホロタイプ)は「ツルリンドウ」の方であったとしても。

それと、ツルリンドウとハゴロモツルリンドウの大きな違いは、果実が液果になるか蒴果になるかですね。日本においては、「ツルリンドウの実は真っ赤に熟する液果」というのが常識でしょうが、中国を含めて俯瞰すれば、むしろ蒴果
のほうが主流なのではないか、と思っています。

それと、液果と蒴果の根本的な違いはどこにあるのか?(日本のツルリンドウはともかくとして)「中国植物図像庫」でチェックした「液果」の種の結実(種子の)状況は、「蒴果」の種と(果実の表面が滑らかで赤いというだけで)基本的には何ら変わらないのではないか? と思ったりします。まあ、単なる想像に過ぎませんが、、、。

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ツルリンドウ属についての情報は、「週刊朝日植物の世界㉖リンドウ・トルコギキョウ」のリンドウ科責任執筆の、邑田仁氏の記事を参照しています。氏はY博士と共に、(僕が屋久島で活動していた頃と同時期に)屋久島で調査・研究活動されていて、この新種ツルリンドウTripterospermum distylumの共同命名者です。知識は(Y博士もそうだけれど)圧倒的ですね。むろん僕などとても太刀打ちできません。そのこと(プロの研究者と素人との圧倒的な知識量の差)は、十分すぎるほど自覚しているつもりです。

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中国大陸と台湾のツルリンドウ属(および近縁のCrawfurdia属)は、幾つかの地域個体群を撮影していますが、(果実を確かめていないこともあって)種の特定が出来ていません。とりあえず暫定的に纏めて、次回で紹介しておきます。








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