青山潤三の世界・あや子版

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中国の野生植物 Wild Plants of China リンドウ科Gentianoceae-68

2021-04-07 21:49:01 | コロナ 差別問題と民主化運動 中国の花


★4月5日と6日の記事に、いいね!その他ありがとうございました。
 
Swertia bimaculata 獐牙菜 (雲南省高黎貢山南部)



雲南省保山市謄沖高黎貢山。標高2300m付近。2006.10.4 (以下9枚同じ)
 
ここで紹介するセンブリ属の種のうち、獐牙菜组Sect. Swertia(折皱系Ser. Rugosae)の大药獐牙菜Swertia tibetica(第64回)以外は、全て多枝组Sect. Opheliaに所属し、3つのseriesに振り分けられている。
 
そのうちの大多数の種(前回紹介した3種や、日本産のセンブリ、イヌセンブリ、ムラサキセンブリなども)は、ほかの2seriesに所属、アケボノソウ(獐牙菜Swertia bimaculataおよび近縁種群)とヘツカリンドウ(Swertia tashiroiおよび近縁種群)だけが、腺斑系Ser. Maculataeとして分けられている。
 
「中国植物志」では、アケボノソウとヘツカリンドウ(本文に記述があるのは台湾北部産の「新店獐牙菜Swertia shintenensis」のみ)は特に下位分類群を区分されることなく、同じSer. Maculataeの一員とされる。
 
Ser. Maculataeが他の大多数のSwertiaと顕著に異なる特徴は、蜜腺溝の周りに繊毛群を生じないことである。また、蜜腺溝の位置が、他の多くの種の場合花被裂片の基部近くにあるのに対し、中央付近にあることが多いのも特徴と言えよう。
 
アケボノソウとヘツカリンドウにも、かなり明確な安定差がある。何よりもヘツカリンドウの特徴である、広く大きく肉厚の根生葉をアケボノソウには欠く。花被裂片の蜜腺溝の数は、アケボノソウでは常に2個、ヘツカリンドウでは基本的に1個(
稀に二分割する個体があり、ことに奄美大島産に屡々見られる)。
 
それらの事から、アケボノソウとヘツカリンドウを夫々別のseriesに配置し、その二分類群(series)を併せて、(他の獐牙菜组section Swertiaと対応する)新たなsectionを設置する方が理に適っている、と僕は想う(従ってここでは、アケボノソウの所属分類群を「Ser. Maculatae腺斑系A」、ヘツカリンドウの所属分類群を「Ser. Maculatae腺斑系B」と暫定表記しておく)。
 
他にアケボノソウとヘツカリンドウの特徴差は、前者が冷温帯性の種で、後者が亜熱帯性の種であること、前者では(近縁別種に置かれているものも含めて)花の色彩や斑紋パターンがごく安定しているのに対し、後者では地域集団ごとに著しい差が示されること、等々である。
 
「中国植物志」に示されている多枝組腺班系の種は、広域分布種のアケボノソウと、ヘツカリンドウと種の段階でも同一種と見做すことも出来る「新店獐牙菜」(「中国植物志」には大陸産についての正式な記述はない)のほかに4種。
 
ひとつは、今回紹介した台湾固有の搭山獐牙菜 Swertia tozanensis。確かに(斑紋パターンなどに僅かながら)固有の特徴が認められもするが、それもアケボノソウの特徴の延長線上にあるとみなすことも出来、仮に同一種に含める見解があってもおかしくはないと思われる。いずれにしろ、台湾におけるアケボノソウの代置的存在である。
 
台湾からはもう一種、细叶獐牙菜 Swertia matsudaeが記録されている。これについては、僕は確認していない。なお、次回に詳しく説明予定の、台湾東南部山地から記録されている「大漢山獐牙菜Swertia changii」(沖縄本島北部産のヘツカリンドウに形質的親和性あり)は「中国植物志」では全く触れられていない。
 
中国内陸部(重慶など)に分布するとされる鄂西獐牙菜 Swertia oculataについては、アケボノソウから種として分離すべき明確で安定的な形質を有しているとは思えない。(「中国植物図像庫」に紹介されている写真を見る限り)分類群の分割の是非はともかく、アケボノソウにごく近い存在であることは間違いない。
 
多枝組腺班系の種は、(「中国植物志」に紹介されている)6種のほかに、日本固有種シノノメソウSwertia swertopsisがある。本州の東海地方から九州にかけて分布する、いわゆる“襲速紀”要素の種である。この分布型の場合、飛んで中国のどこかの地域に同一種(または対応する近縁種)が分布していることが多いが、本種に関しては大陸産の対応集団をチェックできないでいる。将来、中国のどこかに、未知の対応集団が見つかる可能性もある。
 
気になるのは、このseriesの一員として「中国植物志」に紹介されているもう一つの種、心叶獐牙菜 Swertia cordata。鄂西獐牙菜や台湾の搭山獐牙菜はもちろん、シノノメソウも明らかにアケボノソウにごく近い植物であり、一方、新店獐牙菜(大陸産を含む)や大漢山獐牙菜は、ヘツカリンドウにごく近い植物である。そして、この2つのグループ間には、かなり大きな形質的相違点があるように思われる。
 
「中国植物図像庫」で写真をチェックした「心叶獐牙菜 Swertia cordata」(ヒマラヤ地方西部から雲南にかけて分布)は、どちらの固有的特徴も持ち合わせず、かつ、両者を結びつける「蜜腺溝の周囲に繊毛群を欠く」という「腺班系」としての共通の特徴を有している。蜜腺溝は一個で基部寄り。根生葉は肉厚大型にはならない(根生葉自体がない?)。アケボノソウとヘツカリンドウの相関性を知るカギを握っているのかも知れない。
 
















雲南省保山市謄沖高黎貢山。標高2300m付近。2006.10.4
 
 
Swertia bimaculata 獐牙菜 (広西壮族自治区南嶺)



広西壮族自治区永福県花坪原始森林。標高1500m付近。
(以下6枚同じ)
 










広西壮族自治区桂林市永福県花坪原始森林。標高1500m付近。
 
 
Swertia tozanensis 搭山獐牙菜  (台湾合歓山)









台湾花蓮県合歓山。標高2800m付近。2017.11.29
 
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青:謄沖/緑:桂林/赤:合歓山
 








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