青山潤三の世界・あや子版

あや子が紹介する、青山潤三氏の世界です。ジオログ「青山潤三ネイチャークラブ」もよろしく

日本列島および近隣地域の野生アジサイ

2010-11-22 21:28:09 | 雑記 報告

★昨日、編集後に載せた文章の一部が抜けていましたので、入れ直しました。

「青山潤三ネイチャークラブ」2008年4月29日~30日付けに「アジサイ属の分類」の表題で、第1回目の13項目、および12月8日~22日付けに、項を改めて「日本列島および近隣地域の野生アジサイ」の表題で、第1~10回を掲載(うち2010年9月の「あや子版」に1~5を再掲載)、前者は、クサアジサイ属・ギンバイソウ属・バイカアマチャ属の解説を終えたところで、後者は、アジサイ属ヤマアジサイ群ガクウツギ亜群の紹介の途中で、それぞれ中断したままになっています(希望者には、中断前までの原稿を纏めたCDまたは小冊子を配布致します、末尾参照)。今後の予定を、簡単にメモっておきます。

Ⅰヤマアジサイ群(途中まで終了)

■ガクウツギ~カラコンテリギのグループ(ヤマアジサイ群の1亜群)

●グループ内分類群の再検証。
(想定案①)同所的分布集団を含む多数の種に分割。
(想定案②)異所的に分布する数種にまとめる。
(想定案③)原則として全てを1つの種にまとめ、現行の種を亜種以下の分類群に振り分ける。
●日本本土産ガクウツギH.scandensとコガクウツギH.luteo-venosaの相関性の検証。
●南西諸島各島における分布の実態と、各島産(ヤクシマコンテリギH.grosseserrata、トカラアジサイH.kawagoeana、ヤエヤマコンテリギH.yayeyamensis)の相互比較。
●台湾および中国大陸本土における分布の実態と、複数の分類群設置の是非について。
●中国大陸産カラコンテリギH.chinensisとユンナンアジサイH.davudiiの関係。
●文献上の記録があるフィリッピン・ルソン島産カラコンテリギの実態。

更に今後の詳しい検証が必要と思われるのが、
●ガクウツギ・カラコンテリギ亜群と、ガクアジサイ・ヤマアジサイ亜群の相関性。
外観上(およびこれまでの常識からは)、両亜群は異質な存在に思えますが、形態的に見ても、遺伝的に見ても、様々な点で共通点を有し、主に西日本では、両亜群の中間的な形質を備えた個体群が、少なからず見出されています。その実態を知ることは、(マニアックな視点からでなく純粋な生物学的知見に基ずく)系統的な分類体系が未解決のままの、ガクアジサイ・ヤマアジサイ亜群の解明にも繋がります。
●中国大陸に、ガクアジサイ・ヤマアジサイ亜群の種が、在来自生するのか?
●東部山地(浙江・福建など)産の、H.chungii、H.caudatifolia、H.kwangsiensisの実態(自然分布か否かの検証、形質の確認)。
●西部山地(雲南北部や、おそらくミャンマー・アッサムなど)産の、H.stylosa、H.taroensisの実体(ユンナンアジサイとの相関性)。

2011年には、とりあえずは、明らかな在来分布種である、ヤマアジサイ亜群の特徴を備えた、広西壮族自治区北部産ニセヤナギバアジサイH.kwangsiensisの探索に向かいたいと考えています。加えて同地域に比較的広く見られるカラコンテリギとの相関性の検証も。

中国大陸に置いて、ガクウツギ・カラコンテリギ亜群と、ガクアジサイ・ヤマアジサイ亜群を、明確に分け得ることが出来るのかどうか?無装飾花の一群との関係を含め、実態は非常に複雑な様相を示しているのではないでしょうか。

●中国大陸産の無装飾花の一群(H.stenophllaほか)の実態。
●日本本土産コアジサイH.hirtaと、沖縄本島産リュウキュウコンテリギH.liukiuensisの位置付け。
●系統的には、ガクウツギ・ガクアジサイ群(以下ヤマアジサイ群と略称)の一亜群とされるべき、ジョウザン属Dichroa、およびハワイアジサイ属Broussaisiaの位置付け。

Ⅱその他の各群

■ノリウツギ群
●日本産ノリウツギH.paniculataは本当に単系統なのか?
●中国の高標高地帯に広く分布するミヤマアジサイH.heteromallaを、ノリウツギと同一群に含める処置は妥当なのか。

■アメリカアジサイH.arborescens
●ノリウツギ群との相関性は?
●ヤマアジサイ群とは、どのような関係にあるのか?

■イワガラミ属Schizophragma
●ノリウツギ群をはじめとする、従来のアジサイ属との類縁性の検証。

■シマユキカズラ属Pilecostegia
●イワガラミ属、セキヘキノキ属との類縁性。
●紀伊半島での分布の実態。

■セキヘキノキ属Decumaria
●イワガラミ属、シマユキカズラ属との類縁性。
●新旧大陸産Decumaria属の類縁性の再検証。

■アスペラ(オオアジサイ)H.aspera群
●他のアジサイ属(および近縁各属)との類縁性。
●中国大陸において同所的分布を示す群内各種の相関。

■ヤハズアジサイH.sikokiana
●中国大陸産の呼応姉妹種は?
●タマアジサイ・アスペラ群(広義)の中での位置付け。

■タマアジサイH.involcrate群(狭義)
●アスペラ群との相関性。
●中国大陸(湖北省西部)産の唯一の同群種と考えられるH.caeruleaの実態。
●トカラ火山列島(三島列島黒島・トカラ列島口之島・諏訪瀬島)産トカラタマアジサイ、および伊豆火山列島産ラセイタタマアジサイの位置付け。
●台湾産ナガバノタマアジサイH.kawakamiiを含めた上記分類群の系統考察。

■バイカアマチャ属Platycrater
●アジサイ族の中での位置付け。
●日本産と中国大陸産の相関性考察。

■ツルアジサイ群
●アジサイ属(および近縁各属)の中での位置付け。
●ゴトウヅルH.petiolarisとタイワンツルアジサイH.anomalaの関係(同一種とするべきか否か)。

■テリハタマアジサイH.integrifoliaほか
●熱帯アジア、および新大陸産アジサイ族各種の分布実態と、相互の類縁性の考察。

■ギンバイソウ属Deinanthe
●アジサイ族の中での位置付け。
●日本産D.bifidaと中国大陸産D.caeruleaの相関性考察。

■クサアジサイ属Cardiandra
●アジサイ族の中での位置付け(ことにギンバイソウ属との関係)。
●アマミクサアジサイC.amamioshimensisの実態(クサアジサイC.alternifoliaとの類縁性)。
●西表産、台湾産、中国大陸産(C.moellendorffii、C.formosanaほか)の整理。

Ⅲ 以上の検証を行なったのち、改めて、ガクアジサイ・ヤマアジサイ亜群の、分類再検討に移りたいと考えています。

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なにか写真を、と思い、手元にすぐ出てくる未発表のカットを探したところ、たまたま2009年5月18日、広西壮族自治区/湖南省省境の、南山(標高約2000m)で撮影した、タイワンツルアジサイが出てきたので、それを紹介しておきましょう。

この一帯には、カラコンテリギ(真正野生アジサイのひとつ)が非常に多く見られます。垂直分布は、およそ標高700m~1500mくらいの間。この5月18日という時点では、分布下限付近で開花最盛期、上限付近では蕾からちらほら開きかけた、というところです(ガクウツギ、ヤクシマコンテリギ、トカラアジサイ等と、ほぼ等しい状況)。その上限から僅かに上の滝壺脇に咲いていたのが、このタイワンツルアジサイです。日本産のゴトウズルと同一種とする見解、別種とする見解があり、最も顕著な相違点は、雄蕊の本数が大きく異なる(ゴトウヅルは15~20本、本種は25~30本)ことですが、花期の終えてしまっているこの写真では、それを確かめることは出来ません。

不思議なのは、その開花期。日本産のゴトウヅルは、盛夏(7~8月)で、初夏に開花するガクウツギやヤクシマコンテリギより明らかに遅いわけです。しかし、ここでは、完全に逆になっている。たまたまこの株だけが、異常開花なのか、それとも、(中国大陸産)タイワンツルアジサイ独自の性質なのか、今後の検証課題です。









タイワンツルアジサイ 写真:1滝壺脇の岩を覆う株、2花序、3花後の子房、4葉裏。

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「青山潤三ネイチャークラブ会報“Nature Asia”」(CD+冊子+写真原板)の配布について

2報文の中断までの草稿を、暫定的にまとめました(「アジサイ属の分類」の10~12を除く)。ネイチャークラブ会員を含む支援者には無料で、それ以外の方へは、実費にて配布いたします。入手ご希望の方は、メールアドレスjaoyama10@yahoo.co.jp へお問い合わせ下さい。

2008年4月29/30日付け「青山潤三ネイチャークラブ『アジサイ属の分類』」
1-1はじめに
1-2分類の現状について
1-3旧・ユキノシタ科(草本)
1-4旧・ユキノシタ科(木本)
1-5ウツギ族(アジサイ科ウツギ亜科)
1-6キレンゲショウマ(アジサイ科ウツギ亜科)
1-7“ウツギ”のいろいろ
1-8スイカズラ科の“アジサイ?”
1-9アジサイ族(アジサイ亜科)とは

2008年12月5日~22日付け「青山潤三ネイチャークラブ『日本列島および近隣地域の野生アジサイ』」
予告編 1~15
第1回 1~15 “アジサイ”とは?
第2回 1~15 【ヤマアジサイ群ヤマアジサイ亜群】ガクアジサイほか
第3回 1~15 ヤマアジサイ、エゾアジサイほか
第4回 1~15 ニセヤナギバアジサイ、ジョウザンほか
第5回 1~15 補遺
第6回 1~15 コアジサイ、リュウキュウコンテリギ、ヤマアジサイ亜群とガクウツギ亜群の交雑個体ほか
第7回 1~15 【ヤマアジサイ群ガクウツギ亜群】各種の紹介


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