青山潤三の世界・あや子版

あや子が紹介する、青山潤三氏の世界です。ジオログ「青山潤三ネイチャークラブ」もよろしく

朝と夜のはざまで My Sentimental Journey (第61回)

2011-07-21 11:34:15 | 野生アジサイ

Dコアジサイ上群

コアジサイ群一群より成る。

DⅠコアジサイ群(=アジサイ属コアジサイ節コアジサイ亜節Sect.Petlanthe+ジョウザン属Dichroa)

園芸品種の“アジサイ”や、アジサイ愛好家に人気の高い多くの品種を持つヤマアジサイなどが含まれる。以下の各亜群の設置を行った。有装飾花種の、ガクアジサイ亜群(ガクアジサイ、エゾアジサイ、ヤマアジサイ、および中国産のヤナギバハナアジサイなど)、ガクウツギ亜群(コガクウツギ、ガクウツギ、ヤクシマコンテリギ、トカラアジサイ、ヤエヤマコンテリギ、および中国ほかに分布するカラコンテリギ、ユンナンアジサイなど)、無装飾花花序の、コアジサイ亜群(コアジサイ)、リュウキュウコンテリギ亜群(リュウキュウコンテリギ)。一般には独立属とされる、ジョウザン属(およびハワイアジサイ属)も、基本的形態は本群の特徴を示し、DNA分析結果からも同様の結果が示されていることから、本群の一亜群として扱う。中国大陸には、ジョウザン属の種以外にも、無装飾花花序を持つ複数の種が知られているが、それらについては充分な情報を得ることが出来ず、処遇を保留しておく(便宜上、「無装飾花亜群」として表示)。


正常花は開出、または反り返って下垂し、開花後も宿存する。子房は上位または半下位、花柱は基部から明瞭に2~数分岐し、左右に広がる。花序の内部(花序腋および小花序腋)には、苞葉や托葉を生じない。種子には顕著な翼や突起を生じない。



上図の文字変更:ヤマアジサイ群→コアジサイ群

すでに紹介した各群に対しては、以下に示す特徴のうち、それぞれ三つ以上の形質が相違する。
●正常花の花弁は開出、または反り返って下垂し、開花後も宿存する。●子房は半上位または半下位、柱頭は基部が接近し、明瞭に2~数分岐する。●花序の基部、またはその下方にある苞葉は、一般の葉と同形で、花期にも脱落しない。●花序の中には、葉や苞葉は生じない。●種子は、顕著な翼や突起をもたない。●雄蕊は10本。●葉は対生。●本木。



ここで、ガクアジサイ群の、各亜群の分布域を見渡しておこう。まず、これまでに述べてきた「ガクアジサイ亜群」に含まれる種は、ほぼ日本固有の広義のヤマアジサイ(ガクアジサイを含む)と、中国大陸南部産のH.kwangsiensis(ヤナギバハナアジサイ=ニセヤナギバアジサイから改称)、およびその東西に分布するとされる、実態が不確かな数種が、その全てである。日本列島では主役だが、中国大陸では、限られた地域にしか見られない、ごくマイナーな一群のように思える。台湾にも分布を欠く。

逆に、日本本土では、西半部のみに限られる(ガクウツギ・コガクウツギ)ガクウツギ亜群は、南西諸島で多様に分化(ヤクシマコンテリギ、トカラアジサイ、ヤエヤマコンテリギ)、台湾・ルソン・中国大陸に、カラコンテリギが、やや普遍的に分布する。台湾や中国では複数の種に(人によっては非常に多くの種に)分割されているが、著者は、西部のユンナンアジサイH.davidiiのみを独立種とし、ほかは全てカラコンテリギH.chinensisに含める処置を採った。以上が有装飾花種。

日本に自生しないため、マイナーなイメージがあるが、ガクアジサイ群中、分布域の広さも種類数の多さも群を抜いているのが、無装飾花のジョウザン亜群(=ジョウザン属Dichroa)である。中国の南半部と熱帯アジアに広く分布し、10種前後からなるとされている。

ジョウザン属以外の中国産無装飾花種が、カラコンテリギ分布域中に5種知られているが、著者はそれらについての知識を持ち合わせていない。その他の無装飾花種としては、沖縄本島に(後述する理由で、暫定的に独立の亜群を設置した)リュウキュウコンテリギ亜群(1種)、ハワイ諸島固有属とされるハワイアジサイ属(1または2種=本書ではジョウザン亜群に含めた)、そして日本の本州にコアジサイ亜群(1種)が分布する。

なお、中国では、ガクアジサイ群のみでなく、アジサイ属の全ての種が、ほぼ北緯35度以南の中~南部に分布が限られ、朝鮮半島本体ともども、日本の関東地方辺りから北に相当する地域には、一種も分布していない(新大陸においても同様)。その点日本に於いては、関東地方だけでも10(~12)種を数えるわけだから、アジサイの分布域としては、例外的に北方に偏っている、ということになる。

ガクアジサイ群の、日本に自生する4亜群に、ジョウザン属を加えた計5亜群の、形態の比較を行っておく。

まず、有装飾花の2亜群、日本での主役を成す、ガクアジサイ亜群とガクウツギ亜群については、葉、装飾花、花序、樹勢などの概形にも違いが見られる。しかし、いかにも分かり易く感じるそれらの差異は、おおむね個体変異に基づく差で、余り安定的なものではない。分類指標となりうる安定した構造差は、より基本的な形質に表現される。

それぞれの項目に示した亜群の特徴と重複するが、改めて整理しておくと、次のようになる。

①子房(果実)は、ヤマアジサイ亜群では背方の盛り上がりに欠け、ガクウツギ亜群では球状に丸く盛り上がる。
②正常花の花弁は、前者では基部の幅が広く屈曲して下垂、後者では基部が細い柄状となり平開。
③前者は原則として花序柄を有し、後者は常に花序柄を欠く(稀に例外的な個体あり)。





注:ヤマアジサイ亜群→ガクアジサイ亜群



ガクアジサイ亜群(写真左から2枚目はヤマアジサイ、他はヤナギバハナアジサイ)
正常花弁は基部が幅広く、子房を取り囲むため、活着時には子房本体が外部から見え難い(写真左)。子房は半下位で前後に長く、ガク筒部が大半を占め、花筒だけが明確に露出する(写真右3枚)。果実は朔果、熟すと丸味を帯び、花柱は活着したままの状態で花後も残る(写真右=若い果実)。


ジョウザン亜群(ジョウザン)
正常花弁は基部が幅広く、子房を取り囲むため、活着時には子房本体が外部から見え難く、細長い花柱が左右に開いて雄蕊の外側に露出する(写真左)。子房は大きく、半下位で球型、ガク筒部が大半を占める(写真右3枚)。果実は熟すと紫色の液果となり、花柱が脱落する(写真右)。


ガクウツギ亜群(写真左から、ユンナンアジサイ、カラコンテリギ、ヤクシマコンテリギ、ユンナンアジサイ)
正常花弁の基部は細く、子房から明確に離れ、活着時にも子房本体が外部からよく見える(写真左)。子房は上位で球型、本体が大きく盛り上がってガク筒部の縁から著しく露出する(写真右3枚)。果実は最終的には朔花となり、花柱は活着したままの状態で花後も残る(写真右)。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする