功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『ドラゴンズ・クロウ 五爪十八翻』

2018-02-16 16:17:03 | カンフー映画:佳作
「ドラゴンズ・クロウ 五爪十八翻」
原題:五爪十八翻/龍拳蛇刀
英題:Dragon's Claws
製作:1979年

▼こんにちは、今年から仕事のシフトが変わって夜勤の数が1.5倍になった龍争こ門です(げっそり)。今年から心機一転を誓った矢先の停滞ですが、忙しかったのは去年も同じ。新作のチェックも欠かしていないので、なんとか更新や特集を続けていきたいと思っています。
さて話は変わりますが、ひとくちにカンフー映画と言っても、年代や流行によって様々なタイプが存在します。その中で私がお気に入りを挙げるとするなら、やはり70年代末期~80年代前半にかけて量産されたコメディ功夫片を推したいと思います。
 『神打』で劉家良(ラウ・カーリョン)によって開拓されたコメディ功夫片は、『酔拳』『蛇拳』の大ヒットで数えきれないほどの亜流作品が作られました。私はこの時期の作品が好きで、ちょっと前に関連した特集を組んだ事もあります。
この手の亜流作品は、やんちゃ坊主に酔いどれ師匠のような“お約束”が多々あり、そのクオリティは製作側の判断に左右されます。果たしてギャグで押し切るのか、それともパターンを外すのか、或いはアクションに全てを賭けるのか、それとも…。
本作はそうしたコメディ功夫片の1つで、『少林寺への道』の郭南宏(ジョセフ・クォ)が製作・監督・脚本の三役を担当。ただし、作品としては執行導演を務めた魯俊谷のカラーが強く、功夫アクション尽くしの一篇となっています。

劉家勇は龍形門を率いる劉鶴年の一人息子。今日も熱心な父を横目に怠けていたが、突如として劉鶴年の体調が急変。すぐに道場へと戻るも、そこには恐るべき龍拳の使い手・黄正利(ウォン・チェン・リー)が待っていた。
この男、かつては劉鶴年と同じ龍形門の門弟であり、劉鶴年の妻・元秋(ユン・チウ)とも浅からぬ関係にあったという。黄正利は挑発的な態度を見せて去ったが、直後に現れた小汚い薬売り・白沙力のせいで珍騒動が持ち上がる。
 実は劉鶴年には後ろめたい過去があり、龍形門の跡取り娘であった元秋を手籠めにし、そのまま道場主の座に納まっていたのである。彼は抵抗した元秋によって死に至る拳を受け、今やその命は風前の灯であった。
その後、部下の朱鐵和・陳樓を引き連れて現れた黄正利は、劉鶴年を決闘の末に撃破。冴えない道場主はそのまま死亡し、その証であるメダルも奪われる…のだが、いつの間にかメダルは偽物にすり替わっていた。
 「本物はどこだ!」と迫る黄正利に刃向った劉家勇は、あろうことか父と同じ死に至る拳を受けてしまう。元秋は一門を解散させ、劉家勇の療養と修行の練り直しを行うべく、人里離れたあばら家に居を移した。
しばらくは親子によるマンツーマンの修行が続くが、その間にも黄正利一派は龍形門の門下生を次々と襲撃。動くことの出来ない劉家勇は苛立ちを覚えていたが、友人の韓國材(ハン・クォーツァイ)が妙に強くなっていることに気付く。
 彼が言うには、あの白沙力から拳法を習っているらしい。劉家勇は詫びを入れて弟子入り志願し、彼の身の上を察した白沙力は治療と修行を施していった。いつしか見違えるほど強くなった息子を見た元秋は、伝説の拳士=白沙力の存在を確証する。
その後、修行を完遂した劉家勇は本物のメダルを白沙力から渡される(前半の珍騒動のドサクサですり替えていた)が、敵の追及によって元秋と韓國材が犠牲となっていた。彼は朱鐵和と陳樓を倒し、因縁の黄正利と最後の決戦に臨むが…!?

▲ご覧の様にストーリーはかなり深刻で、主人公と師匠以外の登場人物はほとんど死亡。そこそこ笑えるシーンはあるんですが、話の根幹がまったくコメディ向きではないため、ストレートに楽しめる作品にはなっていません。
白沙力がメダルをすり替えていた件に関しても、黄正利の野望を防ぐという理由は分かるんですが、おかげで何の罪もない門下生たちが犠牲となっています。魯俊谷のコメディ功夫片は出来にムラがあるんですが、本作も例に漏れず…といったところでしょうか。
 とはいえ、李超俊(本作では師父仔名義)によって振り付けられた殺陣は実にアグレッシブで、話の粗を補って余りあるアクションを構築していました。
本作のファイトシーンは役者の長所を引き出すことに特化しており、劉家勇ならキビキビとした拳技を、元秋なら京劇仕込みの軽業を、黄正利なら蹴り技を中心にスタイルを設定。この方針は最初から最後まで徹底しており、アクションへの拘りを感じさせます。
 彼らが絡むバトルは質が高く、単なる小競り合いでも丁々発止の戦いが堪能できます。特にラストバトルでは、黄正利の猛攻に苦戦しつつも、白沙力から学んだ龍拳と元秋に教わった点穴を駆使し、トリッキーな戦法で戦う劉家勇の姿が実に勇ましく見えました。
話については難がありますが、コメディ功夫片の最盛期に作られただけあって、アクションの出来は二重丸。劉家勇&黄正利といえば『洪拳大師』という作品でも組んでいるようなので、コチラもちょっと気になりますね。

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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんばんは。 (ひろき)
2018-02-17 22:27:30
龍争こ門さん、こんばんは。
いつもお世話になります。
よろしくお願い致します。

寒い中、夜勤、お疲れ様ですね。
風邪を引かないように、暖かくして、頑張って下さいね。

「ドラゴンズ・クロウ 五爪十八翻」は、以前、輸入盤のVCDを購入して、持っていたので、見ました。
確かに、ストーリーは、陰惨で、気が滅入りますが、でも、アクションは、素晴らしかったですね。

僕は、カンフー映画は、70年代後半から80年代前半位に制作された、「型」が、リズミカルにビシバシ決まる、アクロバット系のコミックカンフー映画が、一番好きなんですよね。
なので、本作は、割と楽しめました♪

黄正利は、相変わらずのキッカー振りで、存在感抜群だし、主人公の青年も、跳ね起き、バク転、連続水面蹴りなどのアクロバティックなムーブ(動き)を取り入れた華麗なカンフーが、実に素晴らしかったと思います。
「ヤングマスター」のラストバトルや「ドラゴンロード」のラストバトルのような粗い立ち回りよりも、例え、「~拳」チックな段取り通りの振り付けであっても、洗練された、芸術的な美しい立ち回りの方が、断然、好きですね。

「ドランクモンキー・酔拳」や「ドラゴンカンフー・龍虎八拳」でも、同じことが言えますが、本当に、アクロバット系の主人公とキッカー系のラスボスが対決する展開の作品は、面白いですね。
お互いの持ち味がぶつかり合うって言う感じで、しびれますね♪

それでは、失礼致します。
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返信。 (龍争こ門)
2018-02-24 12:40:06
ひろきさんこんにちは、お返事がたいへん遅くなってしまい申し訳ありません。

>僕は、カンフー映画は、70年代後半から80年代前半位に制作された、「型」が、リズミカルにビシバシ決まる、アクロバット系のコミックカンフー映画が、一番好きなんですよね。
 地に足を付けたクラシカルな武打片もいいですが、明快なムーブや軽快な軽業が炸裂するコメディ功夫片も堪らないですね。
この手の作品は、香港・台湾・韓国で把握しきれないほど大量に作られましたから、今後も見ていく楽しみは尽きないと思います(笑

>「ドランクモンキー・酔拳」や「ドラゴンカンフー・龍虎八拳」でも、同じことが言えますが、本当に、アクロバット系の主人公とキッカー系のラスボスが対決する展開の作品は、面白いですね。
 特徴的な拳法で戦う主人公と、蹴り技の強敵が戦う構図は『蛇拳』『酔拳』からの伝統ですし、本当に画面映えする組み合わせだと思います。
特に黄正利は、数ある足技アクターの中でも技量という点ではナンバーワンに近く、棒術や扇子といった足技以外のアクションもそつなくこなせる腕前の持ち主です。
彼らの出演作には未見のものが沢山あるので、これからも当ブログでは逐一チェックしていこうと考えています。
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黄正利はやっぱり凄い! (亜州影帝)
2018-02-26 02:58:26
この作品には思い出がありまして、はじめて海外のサイトで購入したDVDでした。
当時は香港映画を日本語字幕なしで観るということをまったくしてなくて、黄正利の作品見たさに購入を始めたのがきっかけですね。

オープニングから黄正利のアクションがあって、ヘンテコ修業を経てラストバトルと功夫アクションも見応えがあって、面白く観た記憶がありますね。
黄正利の部下がでかいソロバン持っていたような。。
劉家勇の作品だとマシな方じゃないでしょうか(笑)

「洪拳大師」は英語版で観たので、詳しくは理解していないのですが、劉家勇は鐵橋三役なんですけど、個人的に鐵橋三を取り上げた作品はあまり面白いと思ったことがありません。(「広東鐵橋三」「白蓮邪神」「武状元鐵橋三」も)

黄正利は鬼脚役だったかな?ラストバトルの10分くらいしかまともに出てこないし、劉家勇&元菊とのバトルもおバカ度が高くて萎えた記憶があります(笑)
「五爪十八翻」の合間にでも撮ったんじゃないの? って感じでしたよ。
劉家勇より元秋の方が見せ場が多くて棒を使ったアクションは見所かもしれません。(「五爪十八翻」でもありましたね)
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返信。 (龍争こ門)
2018-03-04 00:28:15
亜州影帝さんこんばんは、お返事が遅くなってしまい本当に申し訳ありません。

>この作品には思い出がありまして、はじめて海外のサイトで購入したDVDでした。
 私が海外版のDVDを購入する際は、もっぱら国内の通販サイトを利用しているのですが、亜州影帝さんは国外のサイトもご利用になられているのですね。
国内なら目ぼしい通販サイトをいくつか知っているんですが、こと国外となるとまったく疎く、イエスアジアのように日本語対応しているサイトしか利用したことがありません。興味はあるんですが、ちょっと怖くて…(汗

>「洪拳大師」
 情報ありがとうございます、思ったよりもかなりギャグ寄りの作品のようですね(黄正利の出番が少ないという点は『迷拳三十六招』と似通っていますが、そういえばこれも郭南宏作品!)。
鐵橋三ものでは、今のところ梁家仁の『広東鐵橋三』だけ所有していますが、こちらはまだ未見です。共演に高飛、監督が『識英雄重英雄』の李超なので、アクションシーンに一縷の望みを賭けながら見てみたいと思います(苦笑
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鐵橋三 (亜州影帝)
2018-03-05 07:54:49
ども。

イエスアジアは日本語対応なので安心感はありますが、商品が少ないのが残念ですよね。(新しい作品はたくさんありますが。)
もし海外サイトで取り寄せするなら、リスクがあると覚悟してされたほうがいいかもしれませんね。商品未着や配送中の破損(ディスク傷)とか ありますし、英語でやり取りしなくてはいけないので面倒ではあります。私は、いまだ観たことない作品をもっと観たいという気持ちがあるので辞められないですが(笑)

鐵橋三ものだと、他にも劉家勇の「痲風怪拳」もありましたが、これもいまいちだった記憶がありますね。なぜか劉家勇の鐵橋三って最後に発狂するんですよね(苦笑)

「広東鐵橋三」を久しぶりに観直してみたんですけど、日本語字幕あり(日本語吹き替え)で観たら違うのかもしれませんが、あまり感想は変わらなかったですね。字幕なくても大体はわかります。
やはり梁家仁VS高飛は「必殺のダブルドラゴン」を観たあとだと物足りなく感じてしまいましたね。悪くはないと思いますが。

龍争こ門さんの感想もまた聞かせていただけたらなと思います。
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返信。 (龍争こ門)
2018-03-11 03:36:32
亜州影帝さんこんばんは、お返事たいへんお待たせ致しました。

>もし海外サイトで取り寄せするなら、リスクがあると覚悟してされたほうがいいかもしれませんね。
 以前、Amazonで国内の業者を介して海外ソフトを購入したんですが、その際に発送トラブルがあって商品到着が大幅に遅れた経験があります。
やはり海外サイトと直接取引となると、そうした問題と直接的に対面する事になりそうですね。私も海外サイトを使うときは、そうしたリスクを考慮したうえで利用したいです。

>劉家勇の「痲風怪拳」
 タイトルで気付きませんでしたが、これも鐡橋三ものだったんですね。惠英紅が出演している点に目を惹かれますが、オチはそうなっちゃうのか…(苦笑
残念ながら今月は特集のため、それ以外の記事を投稿する余裕はありませんが、『廣東鐵橋三』は視聴しだい感想をアップしたいと思います。
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