功夫電影専科

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『出錯綽頭發錯財』

2015-05-04 23:51:32 | カンフー映画:佳作
出錯綽頭發錯財
英題:The Kung Fu Warrior
製作:1980年

▼(※画像は本作を収録したDVDセットの物です)
 70年代の香港映画界は、李小龍(ブルース・リー)作品に代表されるシリアスな功夫片が主流でした。しかし、許冠文(マイケル・ホイ)と『Mr.Boo!』シリーズの登場によって、流れは一気にコメディ映画へ傾くことになります。
続いて劉家良(ラウ・カーリョン)が『神打』でコメディ功夫片の基礎を築き、『酔拳』がそれを確固たるものにしました。やがて80年代に『悪漢探偵』が大ヒットし、業界全体が現代アクションへの転換を決意しますが、香港コメディの勢いは止まりません。
 『悪漢探偵』が公開された1982年には、早くも洪金寶(サモ・ハン・キンポー)によって『ピック・ポケット!(燃えよデブゴン4)』が撮られ、これがあの『福星』シリーズへ繋がっていく事になります。
しかしその2年前、まだジャッキーもサモハンも現代アクション+コメディに本腰を入れていなかった時期に、いち早く注目を示したプロダクションが存在しました。そのプロダクションの名は……。

張雷は功夫をこよなく愛するクラブのボーイ。しかし腕前はイマイチ止まりで、店に現れたチンピラたちに叩きのめされてしまう。その翌日、彼は先程のチンピラたちを圧倒する謎の老紳士・關海山(クワン・ホイサン)と出会った。
「お師匠、オレに功夫を教えてください!」「わしに会いたかったら香港へ来るのじゃ」 …というわけで、張雷は住んでいたマカオから香港へと渡航。大道芸人との悶着を経て、とある企業の社長だった關海山と再会する。
 かくして張雷は彼の自宅に住み込み、厳しくも楽しい修行をマンツーマンで受けていった。ところが、得意のスケボーで恋人(実は關海山の娘)ができた矢先に、關海山の会社で重役による横領?疑惑が発覚する。
相手は金をジャケットに加工し、読んで字のごとく着服しているという(笑)。そこで張雷と關海山は、ニセの爆弾騒ぎを引き起こしてジャケットを取り返すが、結局は全面対決に発展していく。
果たして張雷は修行で磨いた功夫を生かせるのだろうか? そして立ちはだかる刺客たちとの戦いの行方は…?

▲本作は独立プロである協利電影の作品です。協利電影といえば、独創性の高い傑作功夫片をいくつも手掛けており、今も多くのファンから支持を受けています。
同プロダクションは早くから現代アクションに着目し、70年代後半から『ブルース・リィの刑事物語』『怒りのドラゴン』などを製作。そして本作では、現代アクションとナンセンス・コメディの融合を試みたのです。
 正直言ってストーリーに解りづらいところがあり(私が所有しているのは英語版)、重役が何を企んで最後にどうなったのか不明瞭なところもありますが、そこそこ笑えるシーンがあるので悪くありません。
主役の張雷と關海山についても、堅苦しさを廃したライトで現代的な師弟関係を構築しているので、なかなかに好感が持てます。コメディとしては爆笑必至ではないものの、作品の持つ雰囲気は良好だったと言えますね。
 さて功夫アクションについてですが、こちらはメインの張雷と關海山が本格的な功夫俳優ではないため、いかに協利作品といえどクオリティが気になるところです。
しかし彼らは果敢にも激しいアクションに挑み、吹き替えスタントを使いつつも健闘していました。特に張雷の頑張りが目覚ましく、話が進むにつれて動作がどんどん伸びやかになっていきます(武術指導は監督・脚本も兼任している徐二牛)。
 終盤の連戦では李春華・趙志凌・元武、そして李海生(リー・ハイサン)らと真正面から激突! 關海山も負けておらず、最後の張雷との腕試しではスタントの使用を極力控え、意外な好勝負に仕上がっているのです。
バリバリの功夫アクションを期待するとズッコケてしまいますが、先見の明を感じさせる興味深い作品…といったところでしょうか。なお協利にはもう1つ『醉猫師傅』という現代アクション+コメディがあり、こちらもいつか見てみたいと思ってます。

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