功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『燃えよデブゴン7』

2007-10-03 23:17:47 | 洪金寶(サモ・ハン・キンポー)
「燃えよデブゴン7」
林世榮/仁者無敵
The Magnificent Butcher
1978

▼実在した伝説の武道家・黄飛鴻の弟子、林世榮のお話である。
林世榮は黄飛鴻映画でもよく登場し、鄭則士や呉民才といったおデブ俳優が演じている事が多いが、実際はデブじゃなかったらしい(肉屋だったことも怪しいとか)。ちなみに林世榮の弟子の息子、すなわち孫弟子はあの劉家良だったりする。
無論、香港映画界で最も功夫に秀でて、最も脂肪が秀でている(笑)サモハンにその役が回ってきてもおかしくない…ということで彼が主演している本作。しかし袁和平率いる袁家班と洪家班のコラボという夢の組み合わせ!これだけでも本作は見る価値があります。というか、これ"だけ"しか見る価値が無いというか…(後述

■林世榮ことサモハンは、ある日誤解から李海生(リー・ハイサン)道場の門下生をボコッたことで關徳興演ずる黄飛鴻から大目玉を喰らい、キツイ罰を味わうことに。
その李海生は凄まじい鉄拳の使い手で、彼の道場には他に扇子捌きが芸術的な林正英やネコのようにすばしっこい鐘發、ワッキーそっくりな棒術使いの元武がいたが、他に修行もろくにしないで遊びほうける放蕩息子の馮克安がいた。
彼は無類の女好きで、兄を尋ねてやってきた蒋金の彼女を奪おうとする始末。そこに居合わせたサモハンは、反撃して馮克安をボコボコにしていた蒋金を悪者と勘違いしてぶっとばしてしまう。
蒋金は彼女がどこを探してもいないので途方に暮れ、首を吊ろうとしていた。その矢先、彼を助けたのは樊梅生だった。彼がまんま『酔拳』の袁小田スタイルなのは、当初この役が袁小田で予定されていたから。実際に撮影もされたらしいが、袁小田が亡くなったために全部カットしたという。そんな代役・樊梅生は蒋金の話を聞いて馮克安を叩きのめした。腹の虫の収まらない馮克安はサモハンと樊梅生を騙して二人を戦わせようと画策する。
果たして計画は成功するが、樊梅生はカンフーの達人でサモハンは手も足も出なかった。しかし二人は和解して蒋金の家に戻り、協力して馮克安を懲らしめた。その時、蒋金の彼女とついでに李海生の養女を助け出した。
その夜、蒋金の探していた兄こそがサモハンであったことも判明して意気揚々の一同。だがサモハンと一緒に彼の家に来たハネッかえりの養女を馮克安が見つけ、乱暴を働こうとしたところ勢い余って彼女を殺害してしまう。
馮克安はこの罪をサモハンに擦り付け、父の李海生と門下の林正英らを引き連れ、何も知らないで戻ったサモハンはたちまち殺人犯扱いに!怒りに燃える李海生は寳芝林に乗り込んだが、兄弟弟子の元彪が林正英を、韋白が元武を撃破する。しかし李海生の拳は手強く、駆けつけたサモハンはまともに喰らって重傷を負ってしまう。
樊梅生の元に預けられたサモハンは一命を取り留め、李海生に対抗すべく樊梅生から拳法を伝授される。奇襲を仕掛けてきた鐘發を返り討ちにするが、その一方で今度は馮克安により蒋金が殺された。復讐に燃えるサモハンは位牌を片手に馮克安を撲殺。そしてあんな放蕩息子でもやはり可愛かったのか、こちらも怒りを燃やす李海生の姿が…。最早、止める事の出来ない闘いが始まろうとしていた。

▲スゴい。そりゃもう洪家班と袁家班の夢のタッグだから、殺陣が既に芸術の域にまで達している。冒頭の關徳興Vs李海生の習字対決から始まり、次々と隠し武器を駆使する林正英Vs足技の元彪、棒術で迫る元武Vs武器で対抗の韋白、おそろしくすばしっこい猫拳の鐘發Vsサモハン、そしてラストのサモハンVs李海生の行き詰る死闘!110分のちょっとロングな映画の尺がそんなに長く感じない、素晴らしいバトルが目白押しなのだ。
しかし、元はといえば馮克安が馬鹿な事を起こさなければ、李海生が真実を見極めていればこんな事態にはならなかったはずだ。李海生側は有能な弟子のほとんどと当事者の息子らが死んで死屍累々。サモハンも弟が殺されてかなり殺伐としている。よくよく考えれば馮克安に殺された李海生の養女も嫌な女だったし、やはり悪いのは教育できていなかった李海生…なのか?
そうして誤解に誤解が重なった末のオチも個人的には面白くない。弟子が死にかけて民間人にも犠牲者が出たというのに、用事があったとはいえ天下の黄飛鴻が最後にのうのうと登場(關徳興はゲスト出演とは解っているけど)し、李海生が重傷を負っている事などに触れずに看板が逆だったことに怒って劇終…黄飛鴻は威厳のある人物っぽく描写されているが、これでは分からず屋の頑固ジジイだ。
關徳興自身もこの作品は好きじゃなかったようですし、物語の陰惨さで言えば『ペディキャブ・ドライバー』とタメを張るヒドさ。アクションは文句なしの傑作だっただけに、このストーリーは色々と辛かったです。

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4 コメント

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そうなんですよねぇ (なるこう)
2007-10-04 13:00:59
この作品のご感想には「ペディキャブドライバー」も合わせて同感でした。
とにかく功夫シーンはもう素晴らしい肉体アートなんですけどね、如何せん物語が・・・
仮に袁小田が出ていたとしても結果は同じだったろうなぁ・・・
何故代役を樊梅生としたのか? (龍争こ門)
2007-10-04 22:54:42
なるこうさんこんばんは!
こちらではお初ですね、以後もよろしくお願いします!

>とにかく功夫シーンはもう素晴らしい肉体アートなんですけどね、如何せん物語が・・・
これはサモハン映画のみの問題ではないですが、とにかく功夫映画にはシャレにならない展開というのが多よくありますね。
本作以外では『ドラ息子カンフー』『八百羅漢』『検事Mr.ハー』『十福星』『ファイナル・ファイター鉄拳英雄』が、あとオチで台無しになってしまった『レディ・ハード』などもありました。
どれもこれも功夫アクションは良好ですが、いかんせんストーリーが暗かったり釈然としなかったりイライラするものだったり…。

>仮に袁小田が出ていたとしても結果は同じだったろうなぁ・・・
あの当時『蛇拳』『酔拳』以外の袁小田が出演した作品で、独自性のある物がほとんど見受けられなかったのはツラかったです。
梁家仁&黄一龍との交流が微笑ましかった『秘法・睡拳』ぐらいでしかユニークなのは見られず、あとはみんな似たような役ばかりで、それは『燃えよデブゴン7』で樊梅生が代行した役も同じでしたね。

あとレビュー内では指摘してませんでしたが、本作は香港映画を代表するデブゴンたちが一堂に会した映画でもありましたね。サモハン・樊梅生・蒋金のトリプルデブゴンが同一画面内に現れた時の暑苦しさといったらもう…(苦笑
これで呉明才と荊國忠と鄭富雄が共演したら大変な事に!…ってこんなデブ専映画なんて誰も見たくないですが(爆
こんばんは。 (ひろき)
2016-01-26 18:35:58
龍争こ門さん、こんばんは。
いつもお世話になります。
よろしくお願い致します。

洪家班と袁家班の夢のタッグ、ストーリーは、暗目でしたが、アクションは、文句なしに最高でしたね!!!!!
「デブゴン」シリーズとしては、カサノバ・ウォンとサモ・ハン・キンポーが共演した、「燃えよデブゴン10 友情拳」に匹敵する位に、アクションのレベルの高い作品でしたね。アクロバット色の強さでは、シリーズナンバー1と言っても過言ではないでしょうね。
とにかく、立ち回りがずば抜けて、素晴らしいですね。
特に、ユン・ピョウVS林正英は、実に、ハイレベルで、巧みな技や動作の応酬に魅了されてしまいました。
相変わらず、ユン・ピョウの芸術品とも呼べる、アクロバットの数々も冴えわたっていましたね。
ラストバトルも、様々な動きや技が入り混じった立ち回りで、面白かったなあ~。
個人的には、本格的なカンフーバトルよりも、アクロバットや様々な技や動作満載の京劇的な洗練された華麗な立ち回りの方が、断然、好きなんですよね。
サモ・ハンと李海生リズミカルなテクニックの応酬は本当に動きが綺麗ですね。デブゴンのバク宙、跳ね起き、540ダブルと巨体に似合わず、アクロバットを軽々と決めて魅せてくれたり、ユーモアを交えた動きで笑わせてくれたり、漫画チックな描写で楽しませてくれたり、ジャッキー・チェンよろしくとばかりの色んなアイテムを利用した戦いでワクワクさせてくれたりと、もう、ボリーム満点の面白さでしたね。
谷垣健治監督がよく仰っている、タイミングが完璧にあった立ち回りと敢えてタイミングを合わせない立ち回り。本作は、前者のタイミングが完璧にあった立ち回りで、息もピッタリな名人芸で、「~拳」的な「型」がリズミカルにパン!パン!パン!(効果音)と、ビシバシと、カッコ良く決まって、どの対決も、正に芸術の域に達していて、肉体アート全開でしたね!!!!!
それから、確かに、猿拳使いの人、ワッキーに似ていましたね。あと、若い頃の馮克安が歌手の森山直太郎さんに少し似ていると思いました。
袁小田とサモ・ハンやユン・ピョウって、共演したことってありますか?
もしなければ、個人的には、ユエン爺さんのサモ・ハンやユン・ピョウとのやり取りも、見てみたかった気もしますね。
ユエン爺さんに、「~酔拳」のジャッキー・チェンみたいに、サモ・ハンが修行で、しごかれるシーン、楽しそうなので、見てみたかったですね。
それでは、失礼致します。
返信。 (龍争こ門)
2016-02-03 20:44:05
ひろきさんこんばんは、お返事お待たせしました。

>とにかく、立ち回りがずば抜けて、素晴らしいですね。
 実力派の武術指導グループがタッグを組み、互いの持ち味を十二分に生かし切った本作は、もっと評価されるべき作品だと思っています。
アクションシーンはどれを取っても素晴らしく、仰るように元彪VS林正英と洪金寶VS李海生の2戦は、本作の白眉だったといっても過言はありません。

>袁小田とサモ・ハンやユン・ピョウって、共演したことってありますか?
 洪金寶は『艷窟神探』という作品で共演していますが、未見なので詳細は不明。それ以外では、ガッツリと絡む機会は無かったようです。
元彪については、77年ごろまで袁家班との仕事が確認できますが、残念ながら共演の機会は一切なし。78年以降は洪金寶の元で活躍するようになります。
もし洪金寶との合流があと1年遅かったら、『蛇拳』や『酔拳』で袁小田と元彪の絡みが実現していた…かもしれませんね。

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