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素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)
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珍獣使い2――野放しから檻に入れるまで。
シリーズ中国観察
/
2005-03-19 22:46:33
【シリーズ:反日騒動2005(06)】
←反日運動(05)へ
「珍獣使い」とは、蛇使いや猛獣使いなどといった言葉と同じニュアンスです。本来厄介である筈のものを上手く飼いならし、自分の掌の上で命じた通り踊るようにさせてしまう。その使い手とは言うまでもなく、現在の中国共産党においてトップの座(総書記+党中央軍事委員会主席)を占める胡錦涛のことです。
昨年9月の第16期四中全会で江沢民が党中央軍事委主席の座も明け渡して引退し、名実共にした胡錦涛政権が発足して半年。私のみるところ、胡錦涛の姿勢には終始一貫した鋼のような意志を感じることが多いのですが、珍獣・糞青に対する向き合い方は、この半年でかなり変化しているように思います。
その「変化」を見直してみることで、「変化」を呼んだ背景についても改めて考えてみようと思うのです。
――――
胡錦涛の前任者である江沢民時代、これは江沢民が中共で最も重視される軍権(党中央軍事委主席)を手放す昨年9月中旬(実質的には8月末)まで、としておきます。この江沢民時代における「珍獣・糞青」の扱い方は、大雑把にいえば「野放し状態」だったと私は考えています。要するに珍獣や糞青の好きにやらせていた訳です。
江沢民は「愛国主義教育」「反日キャンペーン」を十数年にわたり行ってきたのですが、そのヒステリックともいえる「反日路線」と珍獣・糞青は基本的に同じ方向を向いていました。……というより、「愛国主義教育」「反日キャンペーン」が珍獣や糞青を生み出し、育み、台頭させたというところでしょう。いずれにせよ、江沢民は珍獣を野放しにして騒がせ、それを反日基調の対日外交にも利用していたように思います。
●毒ガス騒動
●新幹線導入反対の署名運動
●珠海集団売春事件
●西安の寸劇事件(正確には寸劇に関する虚報を飛ばして煽動・展開された反日騒動)
●尖閣諸島問題(言論だけでなく、漁船をチャーターして上陸を試みたりもする)
●昨年のアジアカップでの反日騒動
他にも靖国参拝や歴史教科書にまつわる騒ぎもありました。これはみんな江沢民時代の最後の2年間に生起した出来事です。
――――
この2年間、胡錦涛はすでに総書記であり、その対日外交路線は「歴史問題を過度に騒ぎ立てず現実的にいこう」という姿勢で一貫していました。ただし軍権を握っていた江沢民がそれとは逆の反日路線をなお堅持していたため、胡錦涛は表立ってそれに異を唱えず、ごく消極的な人事異動、そしてときには大義名分を掲げて閣僚の更迭を断行する(※1)ことなどによって、江沢民引退後をにらんだ「胡錦涛派」ともいうべき勢力扶植、また相棒の温家宝首相とともに、経済政策をめぐる駆け引き(※2)に専念していた観があります。
珍獣や糞青に対する姿勢でいうと、この間、胡錦涛は連中の動きを苦々しく思っていたことは間違いないでしょう。その形跡については当ブログで過去に何度か紹介していますが、
●2003年末、楊振亜・前駐日大使(当時)の「いきすぎた民族主義はいけない」「マスコミがそれを煽るのもよくない」と、理性的な対応を求めた談話発表(『中国青年報』に初出、直後に各大手メディアへと転載)。
●2004年夏、当時開催されていたアジアカップにおける反日騒動につき、「こんな愛国主義には誰も喝采しない」など中国人サポーターの振る舞いを批判する署名論評2篇の発表(『中国青年報』のみ掲載)。
……などは、「苦々しさ」を活字にして発信した(つまり行動で示した)典型例です。が、いずれも糞青の猛反発にあって袋叩きにされ、慌ててメッセージを引っ込めたりしています。隠忍自重、しかし水面下で打つべき手は打ってきた2年間といえるでしょう。
ちなみに御存知の方も多いでしょうが、珍獣・糞青へのメッセージを発信してタコ殴りにされた『中国青年報』は共青団(共産主義青年団。共産党ユースみたいなもの)中央の機関紙で、かつて共青団で見い出され、党務関連ポストを中心に異数の昇進を重ねていった胡錦涛にとっては、意のままになる活字媒体です。つまり胡錦涛の意思が反映される「広報紙」なのですが、胡錦涛勢力の伸長に伴って次第に存在感を増していき、後には胡錦涛による「珍獣使い」の重要アイテム(サーカスでライオンに芸をさせるときに使うムチのようなもの)となります。
――――
9月開催予定の党中央の重要会議・第16期四中全会を前に、江沢民の引退(胡錦涛への軍権禅譲)に向けた駆け引きは、アジアカップが閉幕する前後から活発になっていました(それについてもいくつか形跡を挙げることができますが、主題から離れてしまうので別の機会に譲ります)。
胡錦涛勝利で形勢が固まったのは8月下旬でしょう。江沢民は8月30日付で党中央軍事委主席の辞職願を党中央に提出します。江沢民引退に関していえば、半月後(9月中旬)に開催された「四中全会」は議論を戦わせる場ではなく、単なる引退セレモニー。実際の決着はそれより前についていたと思われます。
胡錦涛政権のスタートです。そしてそれまでごく消極的に行われていた珍獣・糞青へのアプローチも江沢民時代とは一変して、鮮明な胡錦涛色が打ち出されることになります。
――――
珍獣や糞青の拠点であった民間系反日サイトに対する「弾圧」はその最も顕著な例でしょう。8月末、当時「反日」サイトの総本山だった「愛国者同盟網」が在来線高速化プロジェクトに日本企業が関わることに反対する署名運動を実施しましたが、すぐに当局から圧力がかかり運動はストップ。さらに「愛国者同盟網」自体もサイト閉鎖に追い込まれます。これと軌を一にして、「反日」で有名な一部サイトの論壇(掲示板)もしばらく閉鎖状態に。珍獣・童増が会長を務める「中国民間保釣聯合会」のサイトも一定期間、論壇が使用不能になりました。
こうした一連の措置で、それまで意気軒高だった糞青には大きな衝撃が走りました。これまで野放しにされて自由にやれていたので事態の変化に戸惑ったというのもあるでしょうし、当局による弾圧というのを初めて体験し、それが身に沁みたというのもあるでしょう。なにせ糞青の多くは一人っ子世代。可愛がられ甘やかされて育った「小皇帝」ばかりですから、自分たちが自由を大きく制限された社会で呼吸していることに初めて気付き、愕然としたのではないかと思われます。
実際、これは胡錦涛による「今までとは違うから覚悟しておけ」という一種の絶縁状だったでしょう。これを契機に大手ポータルなど商業系サイトを含めた掲示板での言論規制が厳しくなり、あれほど元気だった珍獣・糞青が萎んだようになってしまいます。このあたりについては以前書いておりますので、興味のある方はバックナンバー(※3)を御参照下さい。
――――
江沢民から胡錦涛へと首班が移ったことで、対日政策も大きく変化します。日本側にアクション(例えば靖国参拝)がない限り、中国側から歴史問題を言い立てることが控えられるようになりました。要するに反日度のレベルダウンです。反日度が江沢民時代より低下したというだけで、反日を捨てたり親日に転じたという訳ではありません。
●歴史問題を過度に際立たせてはいけない。
●行き過ぎた民族主義には制限を加える。
●冷静に現実的に日本との関係を考える。
●メディアが反日を煽り立てるようなことを制限する。
●でも靖国参拝には断固反対。
●それから尖閣諸島は中国のもの。
……といったところでしょう。
――――
珍獣・糞青に対する上記の厳しい対応もこれを反映してのものでしょうが、この段階の胡錦涛はまだ「珍獣使い」ではなく、その意思もあまりなかったと思われます。とりあえず、中央の思惑を超えてしばしば先走りし、その結果中央に面倒をもたらすことになる珍獣・糞青をひっ捕まえて、言論統制という檻の中に放り込んだというところかと思います。
当ブログで再三強調してきたように、私は胡錦涛政権が「強権政治・準戦時頽勢」を志向しているとみています。中央の統制力を大幅に強化する一方、経済成長に浮かれる党内部や国民にある種の危機感と緊張感を持たせる。それによって改革・開放で危険なまでに深刻化した諸問題を力づくで改善し、中共の延命を図る……というものです。
中央の統制力を強化したいのですから、先走る一方でネット世論を先導、ひいては煽動すら行う珍獣・糞青の存在は当然邪魔になります。知識人への言論統制が行われ、掲示板のNGワードが増え、テレビ番組や広告、またマスコミの報道内容に対し以前に増して枠がはめられたのもそのためです。だからといって投獄したりする訳ではなく、わが掌の上で大人しく踊っている分には構わない、というスタンス。
……これも、胡錦涛が檻の中の珍獣・糞青を眺めているという図であって、まだ自分から珍獣・糞青を使って何事かをしようという、つまり「珍獣使い」の段階までは進んでいません。
それはたぶん、中共政権の内外を取り巻く当時の諸状況を見渡した上で、そうする必要を胡錦涛が感じていなかったからだと思います。
――――
長い長い前置きがようやく終わりました。次回は本題に入れそうです。
(「珍獣使い3」に続く)
――――
【※1】例えば一昨年、中国肺炎(SARS)を隠蔽したことを理由に、当時の張文康・衛生部長が罷免されています。張文康は江沢民のお気に入りで、その更迭は江沢民派の手足を削いでいくという権力闘争の側面もあったといわれています。これによって胡錦涛・温家宝政権は「庶民派」「果断」という好ましいイメージを内外に定着させることにも成功しました。また、江沢民の政敵で汚職の罪で投獄された陳希同・元北京市長が昨年、病気治療の名目で事実上釈放されたのも、胡錦涛vs江沢民といった背景があったとみるべきでしょう。
【※2】一言でいうと「中央vs地方」ということになります。胡錦涛・温家宝は「経済を過熱させずにソフトランディングする」という錦の御旗を掲げて、マクロコントロール(中央による管理)強化や経済の適度な減速を実現しようとし、江沢民ら上海閥はじめ一部地方勢力がこれに密かに抵抗しました(錦の御旗には表立って異を唱えられないため)。マクロコントロール強化は地方からの権限回収、あるいは地方に対する中央の介入を容易にするため、この点でも胡錦涛の好みに合っていたかと思われます。
【※3】
靖国問題が日中間の最大のトゲ?(2004/10/13)
「日本叩き」に当局が圧力、メディアに加え反日サイトにも(上)(2004/10/16)
「日本叩き」に当局が圧力、メディアに加え反日サイトにも(下)(2004/10/16)
漂う糞青に変化?盗んだバイクで走り出せ!(2004/10/17)
踏ん張る胡錦涛、「反日」抑制は続行中?(2004/10/22)
副作用(2004/10/24)
――――
【衝撃】
前回の文末でふれた「貨物列車脱線事故」の続報です。今日の香港紙『蘋果日報』(19日付)によると、土砂崩れによるこの事故、現場の山肌には防止工事が施されてあったのですが、実はこの工事、請負業者を通じて雇われた出稼ぎ農民の技術がひどく未熟だったことなど「甚だしい手抜き工事」であることが判明。これが今回の事故の一因とみられ、すでに工事に携わった業者など一部関係者が拘束されている模様です。なおこの事故により死者8名が出ています。(2005/03/19/23:01)
→反日騒動2005(07)へ
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