日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





【シリーズ:反日騒動2005(05)】
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 私は横着者な上にモノグサなので重複を恐れません(笑)。という訳で、前々回「速報:珍獣が来日中止(自称)を宣言。」(2005/03/17)の結語を引用することから今回は始めたいと思います。

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 ところで、ここ一連の動きをみていて思うのですが、江沢民時代と違って、最近はどうやら「珍獣使い」が背後にいるようですね。

 しかもその腕は悪くありません。外角低め、ストライクゾーンギリギリのところでボール1個分の出し入れ、とでも言いましょうか(笑)。なかなか見事なコントロールです。

 現時点までは、ですけど。

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 ……この「珍獣使い」を本当は主題としたいのですが、前置きがどうにも長くならざるを得ません。そこでここは正攻法、外堀から埋めていくことにします。

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 御存知の方も多いでしょうが、中国には「ネット世論」と呼ばれる実体の怪しげな勢力が存在しています。

 世論なんてものは一党独裁の中共政権には余り縁のあるものではない筈なのですが、「網民」(ネットユーザー)たちが掲示板等で天下国家の問題について意見を述べ、それがときに特定の問題について一大ムーブメントとなることがあります。

 そうなると指導部もまるっきり無視という訳にはいきません。あるいは無視していい存在かも知れませんが、こいつは利用するに限る、ということで外交面で使われたりします。

「国民感情がそれを許さない」

 と中国が言い訳したりするときの「国民感情」は、往々にしてこの「ネット世論」です。

 「実体の怪しげな勢力」と書きましたが、これは「世論」といっても所詮はネットユーザーに限られるので、現在の中国ではごく少数派、人民の総意を示している訳ではないからです。煙のようなもの、と言ってもいいでしょう。

 中国互聯網信息中心(CNNIC=中国インターネット情報センター)が発表した「第15次中国インターネット発展状況統計レポート」(※1)によると、中国における「網民」の総数は9400万人。前年同期比8%増とはいえ、人口13億の国における1億足らずですから1割にも満たないのです。これを「国民感情」と言い換えるには無理がありすぎます。

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 ところでこの調査によると、中国の典型的なネットユーザーというのは、

 ●男性
 ●未婚
 ●25歳以下
 ●学歴は大専以下
 ●月収2000元以下

 ……とのことです。他の特徴をみると、全体の8割が36歳以下で占められ、そのうち25歳以下の比率が半数以上にのぼるとのこと。職種でみると学生や専門職・技術職が「網民」の主体(全体の約4割)となっており、その中でも学生の比重が高まる傾向にあるようです。

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 インターネットで天下国家を語れば往々にして対外強硬論に傾きます。それは日本も同じでしょうが、中国はそれに加え平均年齢が低めで、書生論に傾きがちなメンバー構成という訳です。

 もうひとつ見逃せない点がありますね。

 ●全体の8割が36歳以下。
 ●そのうち25歳以下の比率が半数以上。

 という点からわかるように、「ネット世論」を形成する層というのは江沢民の毒、つまり「愛国主義教育」「反日キャンペーン」をたっぷり浴びて育った世代なのです。当ブログで言うところの「亡国の世代」です。

 こういう連中が毒ガスやら集団売春やら西安の寸劇事件、また靖国参拝やら尖閣問題などで騒ぎます。新幹線反対署名運動もそうですね。あと昨年のアジアカップでの反日騒動もネット上での煽動が深く関係しています。「試合会場で騒げ」という檄文を飛ばしたりしていましたから(笑)。

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 もっとも、中国の「ネット世論」は、別に基地外の集団という訳ではありません。

 しかし世の中、声の大きい者が往々にして勝利者となります(笑)。また大衆運動でもそうですが、対外強硬論であるほど広範な支持を集めやすい。当ブログで登場する「糞青」、私は「自称愛国者の反日教信者」と位置付けていますが、ネット上で大声でまくしたてたり、対外強硬論を唱える阿呆を代表する存在、それがこの糞青なのです。

 一方、「珍獣」は糞青の進化型であり、糞青にとってのオピニオンリーダーということになるでしょう。糞青が「オタク」なら珍獣は「プロ」です。実際に職業的活動家だったり(童増とか)、大学教授の肩書きで毒を吐いていたり(司馬南とか)、あるいはマスコミの中にいたりします(『人民日報』の林治波・評論部副主任とか)。この珍獣が糞青を煽り、煽られた糞青がネット上で騒ぎ立て、対外強硬論に傾くネット世論を形成している、と言えるかと思います。

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 さてこのネット世論、政府にとってはなかなか厄介な存在です。例えば対日外交で「国民感情がそれを許さない」と便利使いできる状況なら実に重宝するのですが、対外強硬論に傾斜しすぎると中共政権の弱腰を批判し始めるかも知れません。そのあたりの手綱さばきが難しく、

「外角低め、ストライクゾーンギリギリのところでボール1個分の出し入れ」

 という微妙なコントロールが要求されるのです。この点、胡錦涛は現時点まではうまくやっていると私は思うのですが、最近ちょっと怪しい雲行きになってきたような印象もあります。胡錦涛の思惑を超えて珍獣が騒ぎ、ネット世論が走り出している気配がするのです。

 それは単純な対外強硬論のエスカレートかも知れませんし、糞青を使って対外強硬論を突出させ、胡錦涛を揺さぶろうと政治勢力が暗躍している……つまり密やかな権力闘争、なのかも知れません。それを見定めないといけないのですが、現時点の私にはそれがまだ出来ていません。

(2に続く)


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 【※1】http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-01/20/content_2486333.htm


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 【衝撃】
珍獣使いともネット世論とも全く関係ないので恐縮ですが、日課の記事漁りをしていたら「広西チワン族自治区・百色で貨物列車が脱線」という地味なニュース。一応のぞいてみるかとリンク先に飛んだら……写真にびっくりです。脱線なんて言葉でサラリと流して済むものではないと思うのですが。

 http://news.xinhuanet.com/photo/2005-03/18/content_2712176.htm
 http://news.xinhuanet.com/photo/2005-03/18/content_2712176_1.htm

 記事には「山肌の土砂崩れにより脱線」とちゃんと書いてあるのですが、それにしても機関車の上に大破したタンク車や無蓋貨車が乗り上げてしまうとは……一体どういう崩れ方をしたのか興味津々です。(2005/03/19/06:59)



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【シリーズ:反日騒動2005(04)】
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 反日サイトの掲示板をよく見に行くという奇特な方にはお馴染みの話です。

 中国で「sina」といえば大手ポータルの「新浪網」(www.sina.com)のことなんですが、このドメイン名が祟って、「新浪網」は現在に至るまでしばしば中国国内のネット世論、特に糞青(自称愛国者の反日信者)どもの槍玉に挙げられ、繰り返し苛められています。

 そりゃそうですよねえ、何たって「支那ドットコム」ですから(笑)。大手ポータルが堂々と売国奴的な名乗りを使っていれば、集中砲火を浴びるのも無理はないでしょう。

 でもどうしてこのネタで「新浪網」が繰り返し叩かれるのかは謎です。

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 「このネタ」についてやや具体的に言いますと、まず最初に、

「驚愕の事実!あの『新浪網』が実は……」

 といったスレが反日サイトの掲示板に立ちます。

 ●「sina」は日本語のローマ字表記だと「支那」になる。
 ●「新浪網」の大株主は日本企業らしい。だから「支那」という名前を使っている。
 ●日本企業が大株主だから、日本にとって都合の悪いニュースは記事にしない。
 ●実にけしからん!
 ●だからみんな、これからは「新浪網」には行くな!
 ●俺たちで「新浪網」排斥運動を起こそう!

 ……と、毎回こういう内容なのですが、これは半年周期のほうき星みたいなもので、ほとぼりが冷めたころ再登場してくるのです。もうただその繰り返し。

 返ってくる反応も判に押したように同じでして、

「支持!」
「支持!」
「頂!」(age)
「狂頂!」(激しくage)

 というレスが延々と続き、その合間合間に「『新浪網』は売国奴」だの、「小日本をぶっ殺せ」だのといった書き込みがなされます。もはや型として完成された観すらあります(笑)。

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「またその話かよ。いい加減デマ流すのやめろよ」

 という冷静なレスもつくのですが、圧倒的な様式美の前には埋没していくしかありません。みんなシャレで楽しんでいるのかといえばそうでもなく、血涙を絞るがごとき愛国的レス(と、当人たちは思っている)で盛り上がっていきます。

 そのうちに
「右翼的日本企業一覧」みたいなテンプレートが貼られ、さらに「中華民族を辱めたトヨタの広告」「中華民族の象徴である龍を貶めた日本ペイントの広告」など画像も追加されます。そして、

「よし日貨排斥だ!」
「支持!」
「支持!」
「頂!」
「狂頂!」

 とさらにエスカレートしていくのです(笑)。そのうちに糞青でもさすがに騒ぎ疲れるのか、次第にレスが少なくなっていきます。最後にはスレが流れてしまうのですが、上述したように半年ばかりするとまた登場して、また同じように盛り上がるのです。

 反日サイトは天下国家を語る板も含め多々ありますが、その多くの掲示板でこの現象が繰り返し起きています。

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 糞青が単に馬鹿なだけか、それとも誰かが意図的に流しているのかはわかりません。結構考察に値するテーマかも知れませんね。ちなみにこういう彗星めいたスレは「sina=支那」だけでなく、

「上海人女子大生の独白:日本人男性最高!絶対日本人と結婚する。中国の男はクソ」
「中国人女子留学生がレイプされたのを発端に東京で大暴動発生!――BBCが報道」
「日本右翼がラジオ番組を乗っ取って反中国宣伝!」(羅剛事件)

 ……など、他にもいくつかあります。

 まあそれはともかく、です。とりあえず、あらぬ噂を繰り返し流されて「新浪網」が困っているようです(笑)。

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 ●「新浪は日本企業」のデマ再び 同社首脳は怒髪天(新華網)
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2005-03/17/content_2708668.htm

 『北京晨報』からの転載記事です。前述したような「sina=支那」論が繰り返し蒸し返されることにほとほと手を焼いた新浪の陳トン・副総裁が、やむを得ず、あらゆる機会を捉えて「新浪は日系企業じゃない」「sinaの語源は支那じゃない」と説いて回り、噂の揉み消しに躍起になっているそうです。

 実は最近、新浪は中国におけるオンラインゲーム最大手企業・盛大網絡(SHANDA)に買収を仕掛けられており、陳副総裁が先月あたりから事あるごとに「sina=支那」論を否定し、

「ウチは日本企業じゃない」

 と強調してみせても、どうせ買収の一件からメディアの注意を逸らすためだろうとみられていたようです。どうやらそうではなさそうだ、と気付いたこの記事の記者がこの噂について調べていきます。

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 それによると、この噂は主に過去3つの時期にわたり集中的に流された、と記者は指摘しています。

 (1)2000年9月初め、「sina=支那」と音が一致するという指摘がネット上で出され、ネット世論の反感を買う。
 (2)2003年11月-2004年初め、珠海での日本人による集団売春事件のニュースが「新浪網」に出ていないという情報がネットに流れる。
 (3)2004年7月、「七七事変」(蘆溝橋事件)に関する記事が「新浪網」には出なかったという情報がネットに流れる。

 この時期に限らず、あちこちの反日サイトで半年周期の「sina=支那」彗星が乱れ飛んでいた訳ですが、ともかくこうした経緯によって「日本企業が大株主だから日本に不利なニュースを流させないんだ」という説が補強されました。特に「sina=シナ」は日本語の初学者にもわかり易い理屈ですから、単細胞の糞青には説得力を持って受け止められたことでしょう。

 「新浪網」のために言っておきますと、「記事が出なかった」というのは全くのデマです。

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 で、陳副総裁は記者の取材に対し、

「わかるでしょう?世界中で公開されているウチの株主名簿、ここに日本資本は全く入っていない。新浪が日本企業という噂は全くの事実無根だ。噂の中には悪意が込められているようなものもあり、新浪が企業(イメージ)として受けた損害ははかり知れないものがある」

 と怒髪天であります。「sina」の語源については、中国の英訳語である「china」とサンスクリット語で中国を意味する「sino」を合体させたものだ、と力説。

「日本語の『支那』とは全く関係ないんだ」

 と強調しておりますが……陳さん、やっぱり誤解されるような名前をつけたあなた方が悪い(笑)。だって発音したらそのまんま「支那」なんですから。

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「新浪が日系企業だとする説をどうこうすることより、こういうやり方で民族間や国家間の摩擦を激化させようとする連中がいることを私は懸念する。中国人あるいは日本人を敵視するよう仕向けた噂を故意にネット上に流して、非理性的かつ不健康な民族主義的空気を煽ろうとする、そういう連中がいることを懸念する」

 ……と陳副総裁は建前を述べ、たまたま新浪がその恰好の標的にされてしまったのだ、としています。そういう「反日」を煽ろうとする一派の政治的謀略というのはありそうな話です。新浪が叩かれると得をする向きが流した、という可能性もあるでしょう。

 一方で、糞青に成りたての小坊主がどこかの反日サイトで「噂」に出会ってしまい、使い古された話であることを知らずに衝撃を受け、驚愕するままに自分の常駐する掲示板に転載してしまった、というケースもありそうです。

 謎ですねえ。

 まあ最も謎なのは、毎回この「噂」で盛り上がってしまう糞青ども、ということになるのでしょうけど。



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