日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 さてさて、妙なニュースが飛び込んできましたね。これは困りました。

 ●中国外務次官:靖国問題解決すれば、他の日中間問題は解決(毎日新聞)

 何が困るかといえば、日本語のニュースだということです。武大偉外務次官(前駐日大使)が実際に中国語でどう言ったのか、それがわからなければ手の出しようがありません。「手垢にまみれたニュース」とは、ひとつには記者の主観なり解説なりが入ってしまっているもの(もっとひどいのは記者の主観というフィルターを通して伝えられるもの)、もうひとつはこうして日本語にされてしまうために、頭の中で「再現シーン」が組み立てられないことです。

「A級戦犯が合祀されている靖国神社に、小泉純一郎首相が参拝を続けている問題が解決すれば、他の日中間の問題は全面的に解決される」

「歴史問題を利用して残りの問題について何か要求するつもりはない」

 など、言及している内容がなかなか重要なだけに、どうしても原文が知りたいところです。だいたい「歴史問題を利用して」なんて本音がポロリって感じですが、外務次官が本当にそんな重大発言をしたのでしょうか?それだけに中国語でどう言ったか知りたい訳です。

「靖国神社参拝問題が日中間の最大のトゲとの認識を示した」

 というのは、武外務次官がそう言った訳ではなくて、記者の勝手な解釈でしょう。見え透いている訳です。TBSらしい思惑が、見てとれるというものではありませんか。

 で、原文の件、もちろん新華網をはじめいろいろあたってみましたが、見つかる筈もありません。何たって先日の胡錦涛・河野洋平会談で胡錦涛が靖国問題に言及したことを国内向け媒体が報じるのを禁じたくらいですから。この武発言が国内に流れれば、糞青どもが自分たちの政府の弱腰に憤ることは必至でしょう。……この辺がポイントのひとつかな、と私は考えます。

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 対日関係については、外交部が12日の定例記者会見で少しだけ言及しています。

「もし小泉首相が靖国参拝を続けるならば、日中関係が改善される可能性はないということか?」

 という記者の質問に対して、外交部のスポークスマンは、中国が以前からずっと日中関係を重視してきたことを強調した上で、

「日本側が『歴史を教訓にして、未来へ向かって前向きに』の精神に基づいて両国の間に存在する問題に向き合い、具体的な努力を示すことを云々」

 と返しているんです。真っ向から靖国問題を持ち出した記者に対して、正面からの回答は避けているんですね。「具体的な努力」が靖国問題だろうとは思いますが、コメントには靖国神社なんて一言も出てきません。

 ここからみる限り、中国側は少なくとも建前上は、靖国問題を関係改善の大前提にはしていないようにみえます。で、その一方で武外務次官が、「いやホント困ってるんだからさ、靖国参拝だけはやめてくれないかな」とはっきり言うことなく、パントマイムで日本側に囁いている訳です。

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 以前、胡錦涛路線の本質は強権政治だと私は書きました。強権政治なんだけど、アメとムチの使い方が上手だから、今度のトップは開明的だとか庶民派だとかいうイメージで見られている。「党内民主を強化」とか言うものだから、あの懐かしき田紀雲が胡耀邦の再評価を求める論文を発表したりもする。

 一方で、「上訪」という法に則って北京に陳情に来た何千何万の「上訪人士」を、違法行為をしていないのに容赦なく拘束している。汚職に厳しい姿勢を打ち出しながら、民間で設立された汚職摘発サイトは即閉鎖させる(もちろん、いずれも国内では報道されていません)。

 また、経済発展に浮かれる国民に水をぶっかけるように、「2010年までに重大な危機が中国を襲う可能性が高い」なんていう縁起の悪い予測を公開して、党内と国民に準戦時態勢のような緊張感と危機感を持たせる。

 緊張感と危機感を持たせて意思統一を果たした上で何をするかといえば、トウ小平と江沢民の尻拭いです。二十余年来の改革・開放がもたらした影の部分、つまり様々な格差や不均衡、不公平(例えば農村と都市、内陸部と沿海部、官と民というような)といった矛盾を改善していくということです。まあ誰がやっても無理だと思いますけど、ここでは「難題」としておきますか。胡錦涛政権は、そういう難題に挑まなければならない。

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 日中関係から話が逸れているようですが、私は今回の武発言が本当だとすれば、これは内政上の必要から仕掛けた外交だと考えます。要するに、「靖国参拝を続けられると、こっちの政権が安定しないんだよ。準戦時態勢にシフトできないんだよ」ということではないでしょうか。

 強権政治と言ったって、胡錦涛にトウ小平や毛沢東のような求心力がなどある訳がありません。だからバラ色でない未来を描いたレポートや汚職撲滅、党内民主化といった手品を次々にやってみせることで、党内と国民の「何かやってくれそう」という期待感をつなぎとめている。

 ここで靖国参拝をやられると、そういった苦心惨憺の手品の数々が全部吹っ飛んで、再び反日気運一色になってしまう可能性がある訳です。沸騰する反日世論を抑制する過程では、強権政治の本質を見せなければならなくなるでしょう。そうなればそれまでの党内や国民の期待感も失せ、下手をすると反感に変わる恐れすらある。靖国参拝のたびに糞青どもが怒り嘆くのは、自分たちの政府の弱腰です。なぜいつも「遺憾だ」とか「抗議する」しか言えないのか、と。

 参拝するとすれば来年のことですから、そのころには経済の行方もはっきりして、荒れる条件もそれなりに整っているでしょう。そこへ来て胡錦涛でも靖国参拝を止められなかった、となれば、ひと波乱あってもおかしくはありません。

 最悪のケースとしては、中国への渡航自粛勧告が出たりして、日本資本の大半が一斉に引き揚げるような状況。そういう可能性もなくはないのです(1989年の天安門事件のときがそうでしたね)。もしそうなれば、外資に頼って何とか成長を維持してきた中国は、失血死するしかないでしょう。そこまでに至らなくても、何年かの時間を無駄にすることになる。それは中国の発展にとって致命的なことです。

 ……皮肉なことに、江沢民がさんざん利用してきた靖国カードが、その尻拭いをする胡錦涛政権にとってはアキレス腱になってしまっているのです。

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 改めて言いますが、これは中国が内政上の必要から仕掛けてきた外交だと思います。日本側は、

「へーえ、そうなんですかあ」

 と、真面目に相手をしなければいい。だいたい武外務次官が言ったといわれる「他の日中間の問題は全面的に解決される」とは、あくまでも中国側の立場からみての「解決」ですから、もちろん日本側の意に沿う内容ではありません。むしろ「盗人猛々しい理屈」と日本人が感じるような形での「解決」でしょう。

 そもそも、靖国問題は日本国内のことであり、それに賛成しても反対してもいいのですが、その権利は日本国民にのみ限られるものです。根拠のない内政干渉には毅然として臨み、小泉首相には参拝を続けてもらう。「靖国神社参拝問題が日中間の最大のトゲ」なのではなく、「靖国神社参拝問題に口出しをする中国の姿勢こそが日中間の最大のトゲ」なのですから。





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