日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 いや、確かにそう言ったんです。「重慶、四川、河南」と。活字になっているから間違いありません。 

 報道が解禁になったとはちょっと考えにくいですね。いまさら、という観もありますし。偶然検閲の目をすり抜けたのでしょうか。まあ地味な記事ですから大した影響はないでしょうけど……。

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 昨年は秋口から各所で暴動やデモ、プチ暴動が発生しました。

 隠しようのない都市暴動のため報道されたケース(重慶市萬州区)もあれば、軍隊が出動して鎮圧・進駐して戒厳令状態になったところもあります(四川省・漢源農民暴動)。報道されなかったケースとしてはこの漢源農民暴動以外にも、退職後の待遇改善を求めた安徽省のお爺さんお婆さんデモや内蒙古自治区のデモがあります。

 農民デモでは広東省でも橋の料金所焼き打ちや、出稼ぎ農民と村民の対立に端を発した官民衝突もありました。これは中国国内でも報じられたケースです。

 それに漢族と回族の衝突が河南省でもありました。これは海外メディアに対してのみ新華社が記事を出しました。河南といえば跨線橋を小破せしめたプチ爆弾テロもありましたね。

 他にも土地収用をめぐるトラブルや労働争議にまつわるデモ・スト・ハンストなど、都市と農村を問わず、この種の事件は枚挙に暇がありません。振り返ってみると本当に色々起きています。そして、いまもどこかで何かが起きているかも知れません。

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 こうした数々の事件が中共指導部に衝撃を与えたであろうことは想像に難くありません。実際、現在開催中である全人代(全国人民代表大会=立法機関)の初日に発表された温家宝首相の「政府活動報告」、ここにも控え目ながらそれに言及している部分があります。

 第5章(社会事業の発展と調和のとれた社会の建設を積極的に行おう)の(3)です。

 社会安定工作を高度に重視する。人民内部の矛盾を正確に処理し、タイムリーかつ合理的に民衆の訴える問題を解決すること。民衆の利益を損ねる行為には断固たる態度で臨み、法に基づいてこれを改めさせること。(中略)社会的矛盾の対立を調停する健全なメカニズムを確立させ、社会安定についての予防・警戒頽勢と応急処理メカニズムを改善し、集団的事件を積極的に予防し、(事件発生に際しては)適切な処置を講じること。

 「人民内部の矛盾」「民衆の訴える問題」「民衆の利益を損ねる行為」「社会的矛盾の対立」「集団的事件」といった言葉が示唆するものが、上に並べたデモ・スト・暴動・プチ暴動でしょう。はっきりと言及できないのが苦しいところですが、情報統制は愚民政策を行う上で必要不可欠な措置ですから仕方ないのでしょう。

 ところが、その壁をうっかり突き破った発言が全人代(たぶん分科会)で飛び出し、これまたうっかりとそのまま記事になってしまいました。まあ「突き破った」とは大袈裟ですが、具体的な地名が出て来るのはやはりタブー破りに属するのではないかと思うのです。

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 ●末端官僚は理性的に「民衆の騒動」に対処し始めた
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-03/09/content_2673215.htm

 河南省の人民代表による分科会だと思うのですが、「温家宝報告」の上の部分につき、同省の人民代表が色々と発言しています。主題はむしろ陳情活動(上訪)に対し当局側はどう善処すべきか、というところにあるのですが、その中で同省洛陽市白馬集団有限責任公司の工員であるトウ芝芳人民代表が、

「過去に、一部の地方政府が民衆に関する問題への処理が不適切だったため、民衆と政府の間に一定レベルの不信感が生じ、本来の『小さな騒ぎ』が『大きな騒ぎ』へと発展することがあった」

 と発言します。それをフォローするように、

「2004年後半、重慶、四川、河南などの地で比較的大規模な集団的事件が発生し、社会でもこれについて熱く論じられた。ある専門家は、これらの事件は社会における格差のレベル、それに官僚と人民の間の矛盾が、調和のとれた社会を建設する上で大きな阻害要因となっていることを示すものだと指摘している。」

 という一節が続くのです。

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 これが記者の解説なのか人民代表の発言かはわかりませんが、中国国内でも報道された「重慶」(萬州市民暴動)は別として、

「四川」(漢源農民暴動)
「河南」(漢族と回族の武力衝突)

 までが出て来るというのは、読んでいて思わずニヤリとしてしまうのですが、一方でどうして出てきたのか理解に苦しみます。「河南」は海外メディアにのみ公開された事件、「四川」は海外・国内を問わず一切公式報道がなく、「なかったこと」にされている暴動です。

 そういう際どい地名を並べ、そこで比較的大規模な騒乱が発生したということに言及したあと、「社会でもこれについて熱く論じられた」と続くのは興味深いです。人民代表レベルには公開されている情報ということなのか、それとも建前をすっ飛ばして、

「どうせみんな知ってる訳だしさぁ」

 というノリなのか。いや建前をすっ飛ばす報道は中国国内では御法度でしょうから、「どうせみんな知ってる訳だしさぁ」というのはあり得ないと思うんですけどねえ。

 やっぱり検閲の目を偶然くぐり抜けた、ということなのでしょうか。結論が出ないまま書き留めておきます。


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