日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





「二」の続き)


 前回はつい余談に流れてしまい申し訳ありませんでした。今回は「腕相撲」の現状に真っ向から取り組みます(自信はありませんけど)。

 さてその「腕相撲」。くどくなりますが、今回は軍主流派が「擁胡同盟」を支えていますから、軍部については妙な鉄砲玉が事態を引っ掻き回さない限り問題はありません(※注1)。

 ですから経済運営ということになるのですが、これは「中央vs地方」という図式で語られる性質のものですね。中央政府の胡錦涛政権、その「皇帝」たる胡錦涛が各地方勢力=「諸侯」と呼ばれる地元のボスたちをねじり伏せ、そのわがままを抑えられるかがポイントです。

 「わがまま」とは強烈な開発欲求のことです。建前はどうあれどの地区も思いっきり繁栄したいのは当たり前。本音では上海のような摩天楼の群立する大都市になりたいという思いがあります。というか実際に全国100都市以上がそういう意思表示をしています。

 ●都市化の進展阻む盲目的成長志向、百余都市が「国際的大都市」目指す(新華網 2005/10/08)
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2005-10/08/content_3591687.htm

 繁栄、成長、いいですね。地元のボスはじめ個別の党幹部にとってはその過程で利権を手にして懐が潤うことにもなります。だからいよいよ高度成長路線を継続していきたい。

 ……要するに「諸侯」たちは突っ走りたいのです。つまり従来型改革、効率二の次でGDP成長率を追求するイケイケドンドン路線(前回参照)の信者といっていいでしょう。天津市のように中央からテコ入れを約束されているところは「皇帝」に従順でしょうが、これは例外的なケース。

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 そしてこの面における胡錦涛の働きぶりや統制力はどうかといえば、甚だ心許ないというほかありません。今年第一四半期のGDP成長率は前年同期比10.2%増。昨年第一四半期(9.9%増)よりハイペースです。固定資産投資は同27.7%増で昨年第一四半期より4.9ポイント速く、特に都市部の固定資産投資は同29.8%増。

 銀行も融資年間枠の6割以上を4月末時点で消費してしまう気前の良さで、4月だけをみると前年同期比の増加額(1750億元)は国内新記録。要するにイケイケドンドンの従来型路線が逆にパワーアップされている現状が浮き彫りにされました。

 「諸侯」が走りに走っている訳です。これは過熱だ経済過熱だと慌てふためく「皇帝」胡錦涛やその周囲を尻目に、各「諸侯」は目下鋭意加速中なのです。効率重視でGDP信仰放棄の「科学的発展観」で「口喧嘩」に圧勝した筈なのに、それが経済面に反映されていません。

 「諸侯」お得意の面従腹背ということもあるでしょうし、「科学的発展観」が現実の指標として定着していないこともあるでしょう。また地方の党幹部の一斉異動が行われるのに胡錦涛型の新査定が機能していないとなれば、「とりあえずGDP成長率を稼いでおくことだ」という発想が生まれても不思議ではありません。

 が、走れば地域間格差が拡大することになります。例えば沿海部と内陸部の格差が当然拡大することになります。アドバンテージがある沿海地区とハンディを背負った内陸地区がヨーイドンで走り出せば差がつくことは自明の理。基数が違いますから走れば走るほど差が開く理屈になりますが、現実の統計もそれを証明しています。

 国家発展改革委員会の発表によると、中国を「東部」「西部」「中部」「東北部」に四分割してみると、今年第一四半期の成長率は前年同期比で東部(14%)、西部(12.7%)、中部(12.2%)、東北部(11.6%)。東部と残り3地区との間の格差は昨年の西部(0.6pts)、中部(0.8pts)、東北部(1.8pts)から今年は西部(1.3pts)、中部(1.8pts)、東北部(2.4pts)へとそれぞれ拡大しているそうです。

 http://hk.news.yahoo.com/060517/74/1nwnu.html

 こうなると地域間格差に根ざした「諸侯」同士の対立も色々あるのでしょうが、ともあれ突っ走りたい点では共通しているので中央の減速・緊縮路線には共闘すなわち揃って反対、というのが「諸侯」たちの基本的なスタンス。ただ加速も度を越せば正に過熱で、「諸侯」間での重複投資や資源争奪戦が始まります。当然ながら争奪戦の過程では分配役の党幹部が汚職に染まるでしょう。

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 そこまで熱くなるかどうかはともかく、日本でいえば日銀総裁に当たる中国人民銀行の周小川・行長は第二四半期のGDP成長率も10%台に乗るだろうとの見方を示しています。第一四半期の暴走ぶりに驚愕した中央は貸出金利引き上げをはじめとする対策を講じましたが、それが効いてくるのは第三四半期あたりからだろうという目算です。

 http://hk.news.yahoo.com/060624/12/1p5iy.html

 ところがこの周小川さん、その2日後には前言を翻して「今年の経済成長は通年で10%増ペースになりそう」と言い出しました。つい先月末のことです。中央によるマクロコントロールに自信が持てなくなったのか、一転して弱腰になったのはどうしたことでしょう。

 http://hk.news.yahoo.com/060626/74/1p6b1.html

 何はともあれ驚愕した中央からは全国に調査チームを派遣して実情把握に努める始末。

「コストプッシュ型のインフレが懸念される」
「いや光熱費の上昇で堅実志向が強まっているため国民の消費意欲が減退している。デフレになる恐れが」

 ……などと、私には難しい話はわかりませんが専門家の間でも様々な見方があるようです。が、どう転ぶにせよ「このままでは危ない」という共通認識はあるようです。

 http://news.xinhuanet.com/fortune/2006-04/25/content_4469792.htm
 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0604250012&cat=002CH

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 ……というのが現時点での「腕相撲」の戦況で、胡錦涛の旗色は決して良くはありません。あの洪水のような礼讃報道とは裏腹に、といったところです。「皇帝」たるには小粒なために「諸侯」どもから面従腹背の仕打ちに遭った格好です。

 とはいえ「反胡連合」の側にも「口喧嘩」で胡錦涛の指導理論を粉砕せしめるだけのものがありませんから、面従腹背でスネつつ突っ走るのが精一杯。権力闘争から倒閣へ、と事態が進むことはないでしょう。こちらも小粒なのです。互いに小粒ですから相手をKOさせるまでには至りません。そういう決定力不足の「つねり合い」とでもいうべき局面がもう2年近くも続いています。

 ともあれ、両派が小手先技の応酬でネチネチしているのも来年の党大会での人事権掌握のため。現状から考えれば経済が多少混乱しても「口喧嘩」で圧勝した「擁胡同盟」が六分ないし七分の優勢、といったところですが、もつれるとすれば懸念されている内憂外患がそのまんま現出してしまうことによるでしょう。もっとも国家統計局などは
「10%成長程度ならまだ受容できるレベル」という見方をしています。

 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-07/07/content_4804337.htm

 ……あ、最新の御託宣(7月8日)によると今年上半期は10%成長ペース、通年で9%を超える水準になるとのことです。これだと通年で9.8%成長ぐらいの速報値を出しておいて、旧正月前後に10%ちょっとに修正することになるかと。年間GDP成長率の速報値を後で上方修正、というのは実は毎年のように行われていることなのです。

 http://finance.people.com.cn/GB/1037/4571613.html

 この記事からも「まあそう心配することはないけどさ」と言いつつ、オーバーペース気味の経済の現状に対する驚きと危機感がよく滲み出ています。

 そりゃ驚くでしょうとも。昨年の9.9%成長(修正後)を受けて、3月の全人代(全国人民代表大会=立法機関)では温家宝・首相が今年のGDP成長率目標を
「8%前後」とし、減速基調でソフトランディング……というシナリオが描かれていました。それが第一四半期からいきなり「10.2%」を叩き出したんですから(笑)。

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 まあ内憂外患の話をしましょう。まず「外患」といえばその筆頭は「八・一五靖国参拝」(笑)、これを受けてしまうと胡錦涛には相当なダメージになりそうです。9月の自民党総裁選の行方や秋になるといわれている台湾の李登輝・前総統訪日もまた然り。貿易摩擦や外資企業の動向(優遇措置撤廃の気配があるため)、そして降って湧いた?が如き北朝鮮の問題もあります。東シナ海ガス田紛争や尖閣諸島をめぐる突発的事態も可能性がない訳ではありません。……以上は胡錦涛及び「擁胡同盟」にとっての不安要因です。

 「内憂」であればこれは「擁胡同盟」「反胡連合」ではなく中共自体の試練となるでしょう。経済が走ってしまっているので上述したように地域間格差の拡大があり、同じ理屈で業種間格差の拡大もあるでしょう。再分配される富がごく一部に偏在しているという「中国の特色ある」歪んだ経済構造ゆえに、経済成長をすればするほど貧富の格差が深刻になっていくのです。

 収入があれば、職があればまだマシです。今年は中共自身も認める「空前の就業難」が秋にやってくるそうです。大学生は新卒者の約3割が卒業即失業、というのは昨年実績で、今年はその線を死守するのも無理だといわれています。新卒者を田舎の村役人にするというパワープレイを使っても無理。

 各大学には上級部門から就業率のノルマが課せられているようですが、達成できる見込みがないため、安徽省には学生に対し、卒業証書発行の条件として偽の就職証明調達を大学側が要求するというスーパーパワープレイも登場しています。ロスタイム突入でもはやGKも攻撃参加、といったところでしょうか。

 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-06/26/content_4748736.htm
 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-06/26/content_4748786.htm

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 ちょっとゾクゾクしてきませんか(笑)。……それはともかく、ようやく尖閣事件に入る土台が組み上がりました。毎度長々と申し訳ありません(※注2)。


【※注1】はいこれテストに出るからーじゃなくて次回への伏線。
【※注2】m(__)m


「四」に続く)



コメント ( 1 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
Unknown (JM)
2006-07-10 02:01:10
はじめまして。某掲示板で読んだチラシの裏、「汚職追及の組織をつくって(?)広東閥、香港関連の老人たちを粛清するのか・・」というのは、この口喧嘩、腕相撲の一環なのでしょうか。(下らぬ話と思われましたら削除してください)
 
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