「障害と死因が明確に関連するとは言えない」「プライバシーの保護のため」。難病「骨形成不全症」を抱え障害者枠で採用された県教育委員会の女性(当時42歳)が長時間労働の末職場で倒れ1月に死亡した問題で、死因などを調べてきた第三者委員会の委員たちは24日、報告書公表後の記者会見で、障害の事実を非公表とした理由をそう説明した。障害者雇用促進法に基づく障害者への配慮があったのかについても「そういう観点で調べていない」と一蹴。障害に対する調査の消極性が浮き彫りとなった。
障害者雇用促進法は雇用主に対し、「障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければならない」と規定している。第三者委から調査報告書を受け取った池田幸博教育長は、県が女性に対し合理的な配慮をしていたか問われると、「障害者という質問に関しては控えさせていただく」とプライバシーを理由に返答を拒否。「一般的に、個々の(障害の)状況を見ながら通勤・超過勤務への配慮などが必要だと思う」と述べ、「障害の有無にかかわらず、(年)1000時間を超える長時間労働をしてしまったことは(県教委として)反省しなければいけない」とうなだれた。
県教委では2002年にも、最大月約128時間の残業を強いられた男性職員が自ら命を絶ち、公務災害と認定されていた。遺族らからは「再発防止を求めてきたのに生かされていない」と怒りの声が上がっている。
池田教育長は「改善してきたつもりだったが、結果的に今回の事件が起こってしまった」と弁解。「また改めて改善案を練り直したい」と述べた。
平哲也会長(元県弁護士会長)も記者会見で、障害への配慮不足が死を招いた可能性について問われると「(障害者にとって)負荷にならなかったということではない。なんとも答えづらい」と言葉をにごした。第三者委は、報告書はあくまで女性の勤務実態とその背景を明らかにしたもので、「死との因果関係については調査中」だとのスタンスを取っている。
第三者委は、女性が所属していた高校教育課全体の「業務の絶対量」が多かったとも指摘。労働時間の管理が不十分だったとも指摘した。
「第三者調査委員会」の調査結果(骨子)
・女性の時間外労働は17年11月に142時間、12月に154時間
・休日出勤率は17年11月で80%、12月で81.8%
・くも膜下出血に関連することが明らかな障害、既往症、現在の病気、症状は見当たらなかった
・係の職員はそれぞれ担当業務をこなすことで手いっぱいの状態
・女性より時間外労働の多い職員がいたため女性が目立つ存在でなかった
・パワハラの事実は認められなかったが職場環境からくる重圧を感じていた可能性
・仕事ぶりは堅実、丁寧、きちょうめん。消極的評価は上司からも同僚からも皆無
・女性は県の健康相談で業務量が多いと指摘、異動希望も出し続けていた
おことわり
県は亡くなった職員が障害者であることを公表していませんが、毎日新聞は、今回のケースを考える上で欠かせない事実であると判断し、個別に遺族の了解を得た上で報道しています。
毎日新聞 2018年4月25日