「芸術の秋 一緒に楽しもう!」。視覚、聴覚障がい者も健常者と共に楽しめる字幕や音声ガイド付きのバリアフリー映画が注目を集めており、都内で開催された日本最大規模の「東京国際映画祭」(22日~30日)や、「東京ごはん映画祭」(8日~23日)では上映会が開かれました。その模様を紹介するとともに、バリアフリー映画の普及に向けた公明党の取り組みをまとめました。
白色の杖を携え、座席に腰掛けていた視覚障がい者の女性は、無数の黄色いハンカチがたなびく映像がスクリーンに映し出された瞬間、感動の涙を流していました。これは、東京国際映画祭では初の「バリアフリー上映会」として28日、山田洋次監督の「幸福の黄色いハンカチ」が上映された際の光景です。
同上映会では、スクリーンにセリフが字幕で表示されると同時に、映像を解説する活弁士の声が場内に流され、多くの視聴覚障がい者が健常者と共に鑑賞しました。上映後、障がい者だけでなく、健常者からも「字幕があるとセリフが不明瞭だった部分もよく分かった」(20歳代男性)などとバリアフリー映画を評価する声が寄せられました。
また、上映会と並行して、視聴覚障がい者のための映画のあり方を考えるシンポジウムが行われ、公明党の高木美智代・障がい者福祉委員長(衆院議員)があいさつしました。高木さんは、映画のバリアフリー化に向けての公明党の取り組みを紹介し「障がい者が安心して暮らせる共生社会をめざし、バリアフリー映画の普及へこれからも頑張ります」と決意を語りました。
続くパネルディスカッションでは、NPO法人「メディア・アクセス・サポートセンター(MASC)」の川野浩二・事務局長が、今回の上映会やシンポジウムについて「映画(の製作・配給などに携わる)関連6団体が企画したもので、非常に画期的なスタートラインです」と強調しました。全盲者である大河内直之・東京大学先端科学技術研究センター特任研究員は「(障がい者が見る作品の)選択肢があることは大事です」とバリアフリー映画普及の重要性を訴えました。
なお、今回の上映会やシンポジウムでは、通常の映画も字幕付きで楽しめるようになる「新たな字幕表示システム」が初公開されました。
同システムは、MASCと大手精密機器メーカーが共同開発したもので、超小型画面を装着したメガネ(スマートフォンなどと接続)を掛けて映画を見ると、インターネット経由で配信された字幕情報が、スクリーンの前の空間に浮かんで見える仕組みです。MASCの担当者は「これを使えば字幕をフィルムに焼き付ける必要がなく、コストが抑えられます」と語っています。
東京ごはん映画祭でも
FMラジオを活用 音声で画面の映像を再現
「画面は鮮やかな緑で包まれた森を映している」「茶わんに盛った茶色い米を一口ほおばる」―。これは、東京ごはん映画祭で、“人”と“食”の関係を描いたドキュメンタリー映画「eatrip(イートリップ)」の上映中に流れた音声ガイドです。スクリーンに映った映像を“耳で観る”ために、音声による解説を加えるもので、健常者である妻と共に鑑賞した視覚障がい者の男性は、「解説が分かりやすいから、直接、映像が目に見えなくても情景を楽しめました。映画好きにとっては、とてもうれしい」と笑顔で語っていました。
同映画祭での音声ガイドは、FM電波を用いて会場内に放送され、鑑賞者はそれを小型ラジオで受信し、イヤホンで聞き取っていました。
23日の上映には、高木さんに加え、東京都議会公明党の中島義雄幹事長、吉倉正美、高倉良生の両都議が訪れ、日本盲人会連合の時任基清・常務理事と共に参加しました。
時任常務理事は「映画など文化、芸術を楽しみたいと願う視覚障がい者は多いので、この取り組みは非常にありがたい。ぜひ普及させてほしい」と語っていました。
この上映会は、都議会公明党が今年2月の本会議や予算特別委員会で、音声ガイド付き映画の普及促進を提案したことを受けて、実現したものです。都では今後も同映画の上映を進める方針で、12月2日に都庁で開催される「平成23年度障害者週間記念の集い 第31回ふれあいフェスティバル」でも、同映画が上映される予定です。
一貫して普及を促進公明
法改正など 国会・地方議員の連携で
バリアフリー映画が注目を集める背景には、関係者の努力に加え、それらを後押しする形で同映画の普及を一貫して促進してきた公明党の取り組みがあります。
その発端は2007年6月、日本映画に聴覚障がい者向けの字幕を付けるよう訴える“一人の声”が公明党の東京・世田谷区議に寄せられたことでした。これを契機に、公明党は地方議員、そして国会議員が連携して、国や地方自治体などに取り組みを訴えました。
こうした国会・地方議員による粘り強い連携プレーによって、09年6月、改正著作権法が成立し、障がい者向けの字幕や音声ガイドが著作権者の許可なしで映画に付けられるようになりました。
その結果、映画製作大手4社による作品の6割超(09年)に字幕付き作品が用意されるなど、バリアフリー映画の認知度が高まり、今回の東京国際映画祭での上映にもつながりました。
ただ、上映する映画館は少なく都市部に偏在していることに加え、中小の製作会社では取り組みが遅れているのが現状です。また、音声ガイドについては、ごくわずかな作品にしか付いていません。いずれも、米国や英国などの諸外国に遅れをとっているというのが現状です。
公明新聞:2011年10月30日付
白色の杖を携え、座席に腰掛けていた視覚障がい者の女性は、無数の黄色いハンカチがたなびく映像がスクリーンに映し出された瞬間、感動の涙を流していました。これは、東京国際映画祭では初の「バリアフリー上映会」として28日、山田洋次監督の「幸福の黄色いハンカチ」が上映された際の光景です。
同上映会では、スクリーンにセリフが字幕で表示されると同時に、映像を解説する活弁士の声が場内に流され、多くの視聴覚障がい者が健常者と共に鑑賞しました。上映後、障がい者だけでなく、健常者からも「字幕があるとセリフが不明瞭だった部分もよく分かった」(20歳代男性)などとバリアフリー映画を評価する声が寄せられました。
また、上映会と並行して、視聴覚障がい者のための映画のあり方を考えるシンポジウムが行われ、公明党の高木美智代・障がい者福祉委員長(衆院議員)があいさつしました。高木さんは、映画のバリアフリー化に向けての公明党の取り組みを紹介し「障がい者が安心して暮らせる共生社会をめざし、バリアフリー映画の普及へこれからも頑張ります」と決意を語りました。
続くパネルディスカッションでは、NPO法人「メディア・アクセス・サポートセンター(MASC)」の川野浩二・事務局長が、今回の上映会やシンポジウムについて「映画(の製作・配給などに携わる)関連6団体が企画したもので、非常に画期的なスタートラインです」と強調しました。全盲者である大河内直之・東京大学先端科学技術研究センター特任研究員は「(障がい者が見る作品の)選択肢があることは大事です」とバリアフリー映画普及の重要性を訴えました。
なお、今回の上映会やシンポジウムでは、通常の映画も字幕付きで楽しめるようになる「新たな字幕表示システム」が初公開されました。
同システムは、MASCと大手精密機器メーカーが共同開発したもので、超小型画面を装着したメガネ(スマートフォンなどと接続)を掛けて映画を見ると、インターネット経由で配信された字幕情報が、スクリーンの前の空間に浮かんで見える仕組みです。MASCの担当者は「これを使えば字幕をフィルムに焼き付ける必要がなく、コストが抑えられます」と語っています。
東京ごはん映画祭でも
FMラジオを活用 音声で画面の映像を再現
「画面は鮮やかな緑で包まれた森を映している」「茶わんに盛った茶色い米を一口ほおばる」―。これは、東京ごはん映画祭で、“人”と“食”の関係を描いたドキュメンタリー映画「eatrip(イートリップ)」の上映中に流れた音声ガイドです。スクリーンに映った映像を“耳で観る”ために、音声による解説を加えるもので、健常者である妻と共に鑑賞した視覚障がい者の男性は、「解説が分かりやすいから、直接、映像が目に見えなくても情景を楽しめました。映画好きにとっては、とてもうれしい」と笑顔で語っていました。
同映画祭での音声ガイドは、FM電波を用いて会場内に放送され、鑑賞者はそれを小型ラジオで受信し、イヤホンで聞き取っていました。
23日の上映には、高木さんに加え、東京都議会公明党の中島義雄幹事長、吉倉正美、高倉良生の両都議が訪れ、日本盲人会連合の時任基清・常務理事と共に参加しました。
時任常務理事は「映画など文化、芸術を楽しみたいと願う視覚障がい者は多いので、この取り組みは非常にありがたい。ぜひ普及させてほしい」と語っていました。
この上映会は、都議会公明党が今年2月の本会議や予算特別委員会で、音声ガイド付き映画の普及促進を提案したことを受けて、実現したものです。都では今後も同映画の上映を進める方針で、12月2日に都庁で開催される「平成23年度障害者週間記念の集い 第31回ふれあいフェスティバル」でも、同映画が上映される予定です。
一貫して普及を促進公明
法改正など 国会・地方議員の連携で
バリアフリー映画が注目を集める背景には、関係者の努力に加え、それらを後押しする形で同映画の普及を一貫して促進してきた公明党の取り組みがあります。
その発端は2007年6月、日本映画に聴覚障がい者向けの字幕を付けるよう訴える“一人の声”が公明党の東京・世田谷区議に寄せられたことでした。これを契機に、公明党は地方議員、そして国会議員が連携して、国や地方自治体などに取り組みを訴えました。
こうした国会・地方議員による粘り強い連携プレーによって、09年6月、改正著作権法が成立し、障がい者向けの字幕や音声ガイドが著作権者の許可なしで映画に付けられるようになりました。
その結果、映画製作大手4社による作品の6割超(09年)に字幕付き作品が用意されるなど、バリアフリー映画の認知度が高まり、今回の東京国際映画祭での上映にもつながりました。
ただ、上映する映画館は少なく都市部に偏在していることに加え、中小の製作会社では取り組みが遅れているのが現状です。また、音声ガイドについては、ごくわずかな作品にしか付いていません。いずれも、米国や英国などの諸外国に遅れをとっているというのが現状です。
公明新聞:2011年10月30日付