来秋の国体後に開かれる全国障害者スポーツ大会(いきいき茨城ゆめ大会)で、聴覚に障害のある人らに情報を伝える手話や要約筆記の「情報支援ボランティア」の養成研修会が二十九日、始まった。茨城町総合福祉センターの会場には約七十人が参加。ボランティアの心構えをはじめ、大会用語などの表現を習った。
水戸市の公務員平川惇さん(28)は、職場で手話で話し掛けられ何もできなかったもどかしさから手話を習い始めた。「勉強している手話で、少しでも大会に貢献したいと思って」と応募したという。水戸市の会社員熊井弘子さん(59)は「地元の大きな催しに参加できるチャンス。専門用語は難しいけれど、ワクワクしながら勉強しています」と話す。研修会は来年一月まで県内五会場で開かれる。
ゆめ大会では、十月十~十五日に障害者ら約五千五百人が来県する予定。開閉会式や競技会場、交通拠点などに、県は情報支援ボランティアは約六百人が必要とみている。応募したボランティアは約五百三十人で、現在も募集している。県の担当者は「使って楽しい。通じればうれしい。いい機会だと思うのでぜひ参加を」と呼び掛ける。
問い合わせは、県障害者スポーツ大会課=電029(301)5409=へ。
大会用語などの手話表現を習う参加者ら
2018年7月30日 47NEWS
長崎名物のカステラを、ものをうまく飲み込めない高齢者や障害者らでも食べやすいように長崎の歯科医師らが開発した「なめらかすてら」の販売が始まった。口にした患者の家族からは「カロリーや栄養価も高く、こういう商品を待っていた」と評価する声が上がっている。【浅野翔太郎】
三串准教授らは27日、嚥下障害がある福岡県大牟田市の福間芳美さん(98)を訪ね、なめらかすてらを試してもらった。福間さんは今年5月に誤嚥(ごえん)性肺炎で入院し、同月末に退院したが、現在も固形物を口にすることが難しい。介護する娘の啓子さん(71)らによると、食事は市販のゼリー状のソフト食(数十キロカロリー~100キロカロリー程度)が中心。味が淡泊で食が進まないことも多く、体重が入院前から4キロ減ったという。
啓子さんは野菜や白米をミキサーで細かくし、ゼリー状の食品と混ぜるなど工夫を重ねるが、「負担が大きい」と口にする。三串准教授も「高齢で運動量が少ないとはいえ、市販のソフト食だけでは1日の摂取カロリーに満たない場合もある」と指摘する。なめらかすてらは、従来のカステラより食べやすいようにカットして販売し、1個約300キロカロリーある。カステラが好きだったという芳美さんはおいしそうに完食。「みなさんにもあげて」と言葉を発した。
三串准教授によると、長崎県内では約1万5000人の嚥下障害患者がいると推計されるといい、「食べる喜びは生きる力にもなるし、まだおいしいソフト食品が少ない。この商品をきっかけに、困っている側に立って嚥下障害の問題を考える人が増えてくれれば」と話す。なめらかすてらは1個300円。製造元のみかど本舗(雲仙市、0120・010・119)で予約を受け付けている。
毎日新聞 2018年7月30日
視覚障がい者が駅のホームから落下する事故を防ぐナビシステムの実証実験が有楽町線辰巳駅構内で8月6日から行なわれます。本プロジェクト「shikAI」は、2016年に行なわれたTokyo Metro ACCELERATORにおいて東京メトロ アクセラレーター賞を受賞したプログレス・テクノロジーズ提案によるもので、実現に向けた第一歩として実施されます。
現段階のshikAIのしくみは、駅構内の点字ブロックに貼られたQRコードをスマートフォンで読み取ると、目的地までの安全なルートを音声案内するというもの。各QRに位置情報が含まれており、利用者をホームから改札、駅の出口まで正確に導きます。
shikAIは駅構内のカメラによる画像をAIで解析するシステムとセットで開発されており、今後実証実験を重ねながら確実性を高めていくとのこと。点字ブロックにQRを見かけたら、傘などで汚さないよう気をつけましょう。
2018年7月30日 Engadget 日本版
車いすの人や体の弱いお年寄り、ベビーカーの家族連れらが皆、暮らしやすい社会を作っていく。その「共生」への行政の意識と姿勢が問われている。
戦時の空襲で焼失し、戦後にコンクリート製で再建された名古屋城の天守について、名古屋市が建て替え計画を進めている。市は、徳川家康の命で築かれ国宝にも指定されていた旧天守を木造で忠実に再現するとして、天守に上がるためのエレベーターをなくすことにした。
これに障害者団体が抗議している。高齢者や障害者の円滑な移動を目指すバリアフリー法や、行政に障害者への合理的配慮を義務づける障害者差別解消法などに反すると訴える。
木造での復元を唱える河村たかし市長は、豊富に残る資料をもとに「寸分たがわぬ復元ができる」として「本物」を目指すと強調する。「都市として自慢できるものが欲しい」とも話し、訪日外国人らを狙った観光戦略の一環でもあるようだ。
しかし、施設や商品作りでは、誰もが使いやすい「ユニバーサルデザイン」が意識されるようになっている。そんな今の時代に新たにつくる建築物であり、計画では500億円を超す公費も投じる。一部の人が利用できないとわかっているのに、見切り発車するべきではない。
河村氏は、障害者らが天守に上がれるよう、エレベーターに代わる「新技術」の導入案を例示した。各種のロボットやドローン、はしご車の活用などだが、実現は見通せておらず、障害者団体は「もの扱いされている」などと反発している。
障害者らは、訴えに耳を貸そうとしない市長に対して「差別されている」と感じている。住みよい街を目指してともに手を携えていく姿勢を欠くことに、問題の根本がある。
そもそも、「史実に忠実な復元」にはおのずと限界がある。輸入材も電気も使うし、法律に基づいて火災報知機をつける必要もある。建築を担当する大手ゼネコンの当初の提案には、小型ながらエレベーターが組み込まれていた。
昔の資料にないからと、障害者らに我慢を強いてまで「エレベーターなし」にこだわることに説得力は乏しい。愛知県も「基本的人権にかかわる、極めて重大な事案」と懸念を示し、再考を促している。やはりエレベーターが必要だ。
「尾張名古屋は城でもつ」と言われるように、名古屋城は地域のシンボルだ。今の計画を強行すれば、新しい城が「排除」のシンボルになりかねない。
2018年7月30日 朝日新聞