視覚障害者の外出を支援する「同行援護」を担うガイドヘルパーが不足している。買い物や通院など普段の生活に欠かせない制度だけにガイドの確保は急務で、当事者や支援者からは「外出したくてもできない視覚障害者がいることを知って、助けてほしい」と悲痛な声が上がる。
右手に白杖を持ち、左手でガイドヘルパーの腕をつかんだ松永信也さん(59)=西京区=が、ゆっくりと階段を降りる。「次は踊り場です」。ほんの少し前を歩くガイドの平井敬子さん(42)が言葉や足踏みで情報を的確に伝える。この日はバスに乗って商業施設に行き、買い物をした。
ガイドヘルパーは行政の指定を受けた事業者が派遣でき、外出時に移動を手助けする他に書類の代読や代筆など情報支援を行う。
39歳で失明した松永さんは、リハビリによりある程度は単独で外出できるが、それでも慣れない場所は不安だ。「長時間の利用が難しいなど問題はあるが、ガイドのおかげで生活ができている」と話す。
同行援護は2011年に当時の障害者自立支援法に基づいて始まった。市町村が実施主体の同様の制度はそれまでもあったが、新しいサービスとして内容を充実させた。京都市内には3月末現在で5677人の視覚障害者がいる。そのうち千人ほどが同行援護の利用を市に申し込み、認められている。
事業者として多くの同行援護を担う京都府視覚障害者協会(北区)によると、京都市を含む府南部で協会の利用契約者数は10年度の821人から15年度は940人と増加傾向にある。
一方、協会に登録するガイドは同じ期間に500人から427人と減っている。知名度不足なうえに、個人として事業者に登録して活動する場合は時間が不安定で、仕事として成立ができないことなどが理由とみられる。
協会のガイドヘルプステーション所長を務める平井さんは「自由に外出できる環境を整えたいとの思いはあるが、かなえられていない」と危機感を募らせる。利用者の希望日時に合わせられないケースが多発し、新規の利用者は断らざるを得ない状況だという。
それでも、外出をしたいという視覚障害者の切実な思いがある。松永さんは「この制度が視覚障害者の生活と社会参加を支えている」と強く訴える。
ガイドヘルパーの平井さん(右)に段差などの情報を教えてもらいながらバスを降りる松永さん
平成28年11月30日 京都新聞