全身の筋力が低下する難病「筋ジストロフィー」を患う人たちが4月から、東京都府中市の広報紙「広報ふちゅう」の編集業務の一部を担当する。同市の障害者団体「Copain(コパン)」が障害者の就労機会促進を図る市から、社会福祉法人を通じて委託を受けた。パソコンが得意な20~30代のメンバー5人が原稿のチェックや整理作業をする。こうした取り組みは全国でも珍しいという。
コパンの代表を務めるのは、同市に住む中坪勇祐さん(31)。小学3年の時、筋力が低下し、車いすが必要になった。現在は人工呼吸器が欠かせない。帝京大経済学部の卒業時には総代を務め、車いすサッカーの選手としても活躍したが、就職は難しかったため「自分たちで働く場を作ろう」と考え、同じ病気の仲間とともにコパンを設立。パソコンで名刺や文章作成を請け負っている。
中坪さんは小さなマウスを両手の親指で動かし、パソコンやスマートフォンを操作し「ネットを使えば在宅ででき、仲間と(仕事を)シェアして自分のペースでできる」と話す。
コパンは一昨年から不定期で、市の会議の録音を文字に起こす作業をしてきた。実績を見込まれ、毎月3回発行の広報紙の受託につながった。市の各部署からお知らせや募集のコーナーに使うデータをメールでもらい、チェックしたうえで形式を整えて原稿にまとめる仕事だ。市広報課は「成果次第では、さらに次の編集作業もお願いしたい」と期待する。委託料は年間約40万円だ。
中坪さんは「定期的な収入が見込めるので、みんなもやる気が起きる」と笑顔を見せた。メンバーの谷田部泰成さん(22)は「録音の文字起こしも、最初は時間がかかったが慣れてきた。頑張りたい」と話す。
