一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

よくできた和解条項だと思います (フジテレビvsライブドアその15)

2005-04-19 | M&A
フジテレビとライブドアの和解が公表された
両社連名のリリースによると、骨子は以下のとおり

(1) ライブドア・パートナーズの全株式のフジテレビへの譲渡
(2) フジテレビによるライブドアへの資本参加
(3) フジテレビおよびニッポン放送とライブドアとの業務提携
(4) 産業活力再生特別措置法の認定を前提とするフジテレビによるニッポン放送の株式交換の実施

(1)ライブドアグループが保有する株式16,400,180株のうちライブドア・パートナーズ(LP)が保有する10,627,410 株をLP株式の取得と言う形で670億円で取得(670億円÷10,627,410 株=@6,304.45円)
残り5,772,770株は(4)により現金交付の株式交換@6,300⇒36,368,451,000円

ライブドアの取得簿価は不明だが損得はチャラらしい。


(2)フジテレビへのライブドア株式の第三者割り当て 440億円@329円
これについては「フジテレビは、平成19 年9 月末日までは、ライブドアの自己株式取得による場合、ライブドアの事前の書面による同意がある場合を除き、第三者に譲渡せず、貸株その他の処分を行わないことに合意しております。」とあり、2年半は440億を「人質」にとったといえる(これは(3)で効いてくる)。


(3)これについては「フジテレビおよびライブドアは、放送・通信融合領域での個別の業務提携に向けて友好的な協議を開始します。この協議には、ニッポン放送の参加を求め、ニッポン放送とライブドア間のかかる業務提携の可能性も協議する予定です」「放送・通信融合領域での個別の業務提携の方向性を探るため、「業務提携推進委員会」を設置し、プロジェクトチーム毎に定期的な協議を行ってまいります。」
とある。

これを、ライブドアの「ネットとメディアの融合」の足がかりとみるか、喧嘩別れに終ったとしてもフジに契約上の義務はないので、空文化できる、とみるか評価がわかれるところだろう、そうであればこそ(2)の440億の「人質」が効いてくると思う。


(4)産活法による支援措置として、金銭交付による簡易株式交換等を内容とする計画を、フジテレビおよびニッポン放送は認定申請する予定であり、また、本株式交換に際してニッポン放送株主に対して交付される金銭の額は、ニッポン放送の少数株主の利益に配慮し、1株当たり6,300 円となる予定。

これは
① ライブドアの資本参加が死んでもいやだったんだなぁ
② なので、通常の株式交換でフジの株を割り当てるのはいやだった
③ 一方で、ストレートにライブドア株を買うのはTOB規制にかかる
※LP株式を取得するのは法的にはTOB規制にかからないのですが、立法論的にはどうか、というもがします。
④ おまけに、ライブドアに対する買戻し価格をその他の株主にも適用することで村上ファンドなどの批判を黙らせたかった(のかなぁ。もっともこれは副産物でしかないでしょう)
※TOBに応じた株主に不公平、という議論もあるが、個人的にはTOBに応じなかった株主は(フジテレビへの第三者割り当て増資が実現したら)上場廃止になるリスクも負っていたわけで、そこのリスクを回避して「今日の100円」を取りに行った株主にまで「有為転変の末の120円」を与えるまでの必要はないと思います(最初から意図してのものなら別ですがそこまで結果の均霑をする必要はないのでは)。


こう考えると、今回の和解条項は、ここ1週間くらいのマスコミ報道(リーク)で言われていた
①ライブドアはニッポン放送の株式を売却する(か少なくとも経営に関与しない)
②ライブドアは経済的に損をしない
③お互いのイメージアップのために何らかの業務提携(に向けての努力)をアピールする
というお互いの面子と実利を保つという基本線に沿って、スキームを十分に練ったうえでのよくできたものと言えるのではないかと思います。

意外性はないですけど、双方が合意するものって、結局穏当な線で落ち着くんですよね。


では、それぞれの今後の課題、というところで、行数制限にひっかかりそうなので、フジテレビだけ

まずは
ライブドアとの提携をどこまで本気で考えるのか、というのが第一でしょう。
ホリエモンはひょっとするといろいろ期待しているのかもしれませんが、フジテレビにはその気はなさそうです。(多分440億を2年半寝かして紙くずにしても、サボるんだろうな。)

せいぜいまた悪者にならないように頑張って欲しいものです。


あと、青臭い議論を最後にさせていただくと、今回ぜひけじめをつけてほしいのは、
①ライブドアの時間外取引に文句を言った割に、間接取得によりTOB規制を回避したとか、
②今回の問題がきっかけで立法化が先送りになった現金での株式交換を産活法を使ってやったとか
③噂ではこの辺のスキームをゴールドマン・サックスにアドバイスを求めた、
とか、この和解案を見ると、結局あのフジテレビ(や経済界)のヒステリックなライブドア批判はなんだったんだ、ということ。

これは、マスコミも含めて総括して欲しいと思う。

これでは結局救われたのは敵のロジックのおかげだったという。『ヴェニスの商人の資本論』の寓意そのままではないか(こちらの記事参照

では、明日はライブドアの今後について書きます。

続きはこちら
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「勝利宣言」にしては余裕が... | トップ | 「○○に××」、ホリエモンに1,5... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

M&A」カテゴリの最新記事