一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

そんなことを言っているうちは「外資」に勝てない (フジテレビvsライブドア 番外編)

2005-03-01 | M&A
どうも「リーマン・ブラザーズ」とか「外資」にひっかかる人が多いようだ


① 外資が買収資金を提供することは、実質公共性のある放送局を買収することになるけしからん
② リーマン・ブラザーズは損をする取引をするわけがないのだから、ライブドアは、株を売り浴びせられて食い物にされるだけ(=おろかな選択だった)
③ そんなこと言ったら、新生銀行は外資に売られたし、三井住友銀行だってゴールドマン・サックスが優先株を持っているじゃないか(=結局日本企業は全部外資に買われている)
というような尊皇攘夷的な議論が見られる。

一方で
④ グローバル・マーケットの中では今回のような「仁義なき戦い」に巻き込まれるのは避けられない(=これには前向きとあきらめ2パターンがある)
という意見もある。


でも、何でそんなにヒステリックな反応をするんだろうか?
「外資」が圧倒的に優秀だ、とか、世界陰謀に加担しているので絶対損はしないだとかそういう議論はナンセンスだと思う。

外資(日本以外)の銀行・証券会社だって資産運用や経営に失敗する例は山ほどある。
シティバンクはかつて倒産しかけて、アラブの王室の資金援助を仰いだ。
ベアリング・ブラザーズは1トレーダーの暴走であっけなくつぶれてしまった。
「ヘッジファンドの勇」LTCMは破綻した。
レバレッジド・バイ・アウトの元祖ドレクセル・バーナム・ランベールとマイケル・ミルケンはインサイダー取引で捕まった。
etc.etc.


①の放送法の外資規制は昨日コメントしたのでよしとすると、あとは結局、個別の取引で誰が有利なポジションにいるか、というだけの問題だと思う。


外国為替規制があって、資金の出入りをコントロールしていた時代ならさておき、株式を公開する、ということは「買って欲しい」ということであるし、借り入れが必要な人は条件がよければ誰からでも借りることができるわけだ。
結局「自由競争」というのは、他人より知恵があったり、工夫をしたり、予測が当たったり、はたまた運が良かったりしたひとが儲かり、そうでない人が損をする、というだけ。
その意味ではニッポン放送は買われるのがいやなら上場しなければいい、という意見は十分理由がある。(しかも1/3が外国人株主になったら免許停止、というリスクを負ってまでいるわけだから)


で次にくるのが、自由競争だったらアメリカの勝ち=「グローバル・スタンダードはアメリカン・スタンダード」という議論。


でも、アメリカ資本が必ずしも優秀なわけではないのは上で言ったとおり。

そもそもリーマン・ブラザーズは今回の取引で「絶対損をしない」ということについては僕はまだ完全には理解できていない。
それにリーマン・ブラザーズがどんなに儲けようと、ライブドアとして、コントロールできる範囲のコスト・リスクであれば、うまく使ったほうが一枚上手なわけだ(そうとも思えないところが問題だと思うんだけど・・・)。


それ以前に、そもそも最初からあきらめているようであれば、勝ち目はない。


外資が優秀だと思うのなら、それにどのようにして勝つか、ということを考えるべきではないか。
世界的陰謀があると本気で思うのであれば対抗策を取るべきではないか。



攘夷論やひかれものの小唄のようなことを言っているうちは、日本は外資には勝てないと思う。



* 過去の記事はこちら
その1
その2
その3
その4


*************************************

ここのところ文章のテンションが上がり気味で、本来目指している飄々とした記事にならない、という反省も含めて、お口直しのお勧め図書を。

<その1>
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1 コメント

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リーマンだって (匿名)
2005-03-05 10:17:45
リーマン自体も、かつて経営に失敗してカードのアメックスに買収された歴史があります。外資を脅威と騒ぎたてる人たちは、よっぽど自信が無いか、じぶんの利害を考えて言っているのでしょう。

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