人間が自然環境や社会集団を形成するなかで、環境に適応するための機能として心理的な部分も進化させてきた、すなわち性格や心理的特性、認知能力などについても遺伝の影響があるという進化心理学の研究成果をまとめた本。
錯視や注意力の特性、記憶や感情、思考方法について、それが人類の進化の過程からどのように形成されてきたかを進化心理学の視点から説明します。
この環境への適応も霊長類に共通する行動様式と、300万年~1万年前の狩猟採集生活に伴う必要な集団的協力作業により人類独自の進化に分かれるとします。
特に、人間の心理は狩猟採集時代の人間集団の数である最大150人程度を基準にしている(そのため噂の中身は記憶されるが出所は記憶されにくい、共通メンバーの間では信念が共有化されやすいという現象が起きる)、という切り口は興味深いです。
ただ、著者も言っているように、進化心理学という分野は1990年代から注目され始めた歴史の浅い分野で、評価もまだ十分に定まっていないので、これを短絡的に振り回すのは注意が必要。
このへんの問題については、スティーブン・ピンカーの『人間の本性を考える』が、人間の心は固有の構造を持たない白紙状態で社会やその人自身が思いのままに書き込めるという考えが現代において優勢な地位を占め、遺伝的子の影響を一部でも認める立場(=人間の本性というものが存在すると認めること)は人種差別や性差別、戦争や大量虐殺、政治的反動を是認することだと考えられてしまってきたことの背景の分析と、「人間の本性」という概念が社会生活や道徳にまつわる論争にどのような洞察をもたらすか、についてNHK Booksで3巻にわたる大著で詳しく論じていますので興味のある方にはオススメです。
錯視や注意力の特性、記憶や感情、思考方法について、それが人類の進化の過程からどのように形成されてきたかを進化心理学の視点から説明します。
この環境への適応も霊長類に共通する行動様式と、300万年~1万年前の狩猟採集生活に伴う必要な集団的協力作業により人類独自の進化に分かれるとします。
特に、人間の心理は狩猟採集時代の人間集団の数である最大150人程度を基準にしている(そのため噂の中身は記憶されるが出所は記憶されにくい、共通メンバーの間では信念が共有化されやすいという現象が起きる)、という切り口は興味深いです。
ただ、著者も言っているように、進化心理学という分野は1990年代から注目され始めた歴史の浅い分野で、評価もまだ十分に定まっていないので、これを短絡的に振り回すのは注意が必要。
このへんの問題については、スティーブン・ピンカーの『人間の本性を考える』が、人間の心は固有の構造を持たない白紙状態で社会やその人自身が思いのままに書き込めるという考えが現代において優勢な地位を占め、遺伝的子の影響を一部でも認める立場(=人間の本性というものが存在すると認めること)は人種差別や性差別、戦争や大量虐殺、政治的反動を是認することだと考えられてしまってきたことの背景の分析と、「人間の本性」という概念が社会生活や道徳にまつわる論争にどのような洞察をもたらすか、についてNHK Booksで3巻にわたる大著で詳しく論じていますので興味のある方にはオススメです。