go to トラベルが始まって少しづつ動き出してきた世の中に便乗して城ケ島に行った。
「城ケ島の雨」っていう歌を、どこか遠いところで聞いた覚えがあるような気がしたけれど、
懐メロか何かだったのだろう。
実際、城ケ島がどこにあるのかも知らなかったけれど、何となく覚えていたこの歌の歌詞に少し興味があった。
「雨はふるふる 城ケ島の磯に 利休鼠の雨が降る
雨は真珠か夜明けの霧か それとも私の忍び泣き」
どう考えても悲しそうな風景だなぁ・・と思って調べてみたら・・・北原白秋の詩に曲を付けたのだと書いてある。
北原白秋の曲って「どんぐりころころ」とか「からたちの花」とか「ゆりかごのうた」とか、
およそ悲しさとか情念とかからかけ離れている気がしていたから少し驚いた。
白秋が死を決意して千葉県木更津に赴き、死に切れず対岸の三浦半島先端の三崎町に渡り住んでいた時に作った曲だとか。
三崎港から狭い瀬戸を挟んで城ケ島が見える。
その風景が自分の心と重なって寂しそうに見えたのだろう。
城ケ島に着いた時は雨で、
岩場や奇岩の多い城ケ島の海岸には誰もいなくて、白秋の歌の通り何だか寂し気な夕暮れ時だった。
この辺り一面の空と海の灰色ーこのような緑色がかった鼠色を利休鼠と言うらしい。
「城ケ島の雨」っていうくらいだから雨でも仕方ないと思ってみたもののあまり面白くはない。
それでも海岸を一人歩いているうちに雨が止んだ。
少し空が明るくなって来たらちょっと嬉しくなって、もう少し歩きたくなってきた。
絶景を見下ろすハイキングコースを行くと先に城ケ島灯台が見えてきた。
灰色の雲がわずかに差し込む太陽の光でオレンジと黄色味を帯び、
その反射は眼下に広がる海を一層美しく染め上げた。
次第に日が落ち辺りは暗くなる。急いで旅館に戻らないと、と思った時
不思議な事に、
利休鼠の雲間にできた一本の太陽の光に照らされて赤く染まった空から浮き出していたのは富士山だった。
城ケ島から富士山が見えることも知らずに歩いていた。
「夕焼けの城ケ島灯台と富士山」
城ヶ島の海は色のある世界に一変した。