信州の冬は寒い。
今年は雪が少ないとはいえ、外に出ると寒さが身に染みる。
それでも、一日一日と春に近づき、梅の花も咲き始めたこの頃、
実家に立ち寄ると人の気配がない・・・
ちょっと心配になって家の周りを探してみた。
父が一人、次第に厚みを帯びてきた日差しの中で彫刻をしていた。
最近、孫に二人目の子供が産まれ、
かわいいひ孫がお兄ちゃんになった。
そんな・・・遠くに住む孫とひ孫を思い描きながら、
彫刻に向かっていたのだろう。
母が赤ちゃんを抱き、母の足元から赤ちゃんを覗き込んでいるお兄ちゃんを、
母の眼差しが優しく包みこんでいる。
それは、父の孫とひ孫の姿かと思えば、
そうでもあり、
60年前の自分の妻と子供の姿かと思えば、
そうでもあり、
90年前の自分の母と妹の姿かと思えば、
そうでもあるように見える。
父の姿はいつしか私の祖父にも見え、
囲炉裏の周りで縄を編んでいた祖父の姿と重なる。
人の生きる道の中には、どれほど時代が変わろうが、
100年の歳月を越えようが、
変わらないものと、変わってはいけないものと、
変わらない心と、変わってはいけない心がある。
まだ春遠い、冬の日差しの中で見たものは
形になったそんな心。