「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「死刑裁判の現場」 (5)

2010年06月21日 20時44分39秒 | 死刑制度と癒し
 
(前の記事からの続き)

 土本氏は、 ある死刑執行現場に 立ち合う決意をします。

 それまでは 死刑執行を抽象概念としてしか 認識していませんでしたが、

 実際に現場で 体験したかったのです。

 看守に連れられて、 刑場に 白髪の小柄な男が 入ってきました。

 死刑囚です。

 顔面蒼白で、  きょろきょろして 落ち着きません。

 教誨師 (僧侶) に促されて 焼香する手が、 小刻みに振るえています。

 土本氏も 並んで焼香しますが、 自分の肘が 死刑囚の肘に接触します。

 いま横にいる 生きている人のために、 そして数分後に 死んでいく人のために

 焼香しているという、 不思議な感覚に捕らわれます。

 土本氏は 正視することが難しかったといいます。

 悪い奴だから 一番重い刑に 処してやるんだという気には、 全くなりませんでした。

 やがて死刑囚は 看守に目隠しをされ、

 ぶ厚いカーテンの向こうの 刑壇 (絞首台) に入っていきます。

 読経の声が 一段と大きくなります。

 最高度に張りつめた 空気を破るように、

 「バタンッ!!」 という 凄まじい音が鳴り響きます。

 刑壇の下に 吊り下げられた死刑囚の 姿が見えました。

 医務官が 宙吊り人の胸に 聴診器を当て、 目隠しを外して その目を覗き込みます。

 脈拍, 心音, 瞳孔の、 死の三徴候を調べているのです。

 医務官が、 「絶息しました」 と告げました。

〔 NHK・ ETV特集より 〕
 

 死刑執行現場の より詳細な記述は、

 一昨年5月の 文化放送 「死刑執行」 の記事があります。

 下記のURLから 6回にわたって連載しています。

http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/54095758.html

(次の記事に続く)
 


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