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「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

過去の人物の影響が 断ち切れない

2009年10月28日 22時47分35秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 投影性同一視によって、

 過去の人物との関係を、 目の前の 人物との関係と 混同してしまいます。

 例えば、 亡き父親に 憧れを抱いていた女性では、

 年上でタイプの男性に、 理想の父親像を 投影しやすくなります。

 逆に、 父親に反発や葛藤を 抱えている人では、

 年上の男性に対して 試したり挑戦的になったりします。

 その人の過去の 対人関係の歴史によって、

 現在の対人関係の パターンが左右されます。

 これは、  「パラタクシス的 (並列的) な影武者」 と呼ばれます。

 ボーダーの人は 目の前の人を 相手にしながら、

 並行して 過去の人物を 相手にしているのです。

 治療では、 過去の親子・ 対人関係に逆上り、

 整理することによって、 過去の亡霊の支配から 解放することが必要です。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕


 心子は、 父親に異性としての愛情を 抱いていたといいます。

 幼い心子にとって 父親は、

 完全無欠な 男性の理想像だったのではないでしょうか。

 父親は心子に 完璧を求めました。

 心子はそれに応えるべく、 懸命に いい子になったのです。

 そして父親は 心子が10才の時に 他界。

 父親と一緒に死ぬと 約束していた心子は、

 魂の脱け殻のように なったといいます。

 以来、 心子は 好きな男性に対して パーフェクトを求め、

 それが得られなくては 怒りや絶望に 苛まれるようになったのでしょう。

 まして、 命を共にすると 誓っていた間柄。

 恋愛だけでなく、 「死の影武者」 でもある 父親の像は、

 実に錯綜した因縁に 心子を巻き込むことになったのです。
 
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思い通りにならないと 攻撃されていると思う

2009年10月27日 21時45分05秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 乳幼児にとって、 よくお乳が出るオッパイは  「よいオッパイ」、

 出ないオッパイは  「悪いオッパイ」 でしかありません。

 どちらも 同じ母親のオッパイであることが 分かりません。

 その瞬間の 満足・不満足だけによる 対象との関係を、

 「部分対象関係」 といいます。

 自分の思い通りにならないとき、 非を 「悪い」 相手のせいにして、

 怒りをぶつける 心の状態を、  「妄想・分裂ポジション」 と呼びます。

 けれども成長してくると、  「よい母親」 も 「悪い母親」 も

 一人の同じ母親であると、 受け止められるようになります。

 よい部分も 悪い部分も含めた 対象との関わり方を、

 「全体対象関係」 といいます。

 子供は 母親に叱られたり、 母親が悲しそうにしたとき、

 自分の非を感じて しょんぼりします。

 このように 沈んだ心の状態を、  「抑うつポジション」 と呼びます。

 しかし 自分の非を認めることは 苦痛が伴います。

 それを 強がりによってはねのけようとする 反応も起こります。

 抑うつポジションを避けるために、

 強気な態度で 自分を守ろうとするメカニズムが、 「躁的防衛」 です。

 境界性パーソナリティ障害の人には、 しばしば この躁的防衛が見られます。

 一方で この防衛が破れると、 急に弱気になり、

 全てがダメだと 落ち込んでしまうのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕


 全てが良いか、 全てが悪いか どちらかでしかない。

 悪い相手は 徹底的に攻撃する。

 ボーダーの人の ひとつの典型的な状態で、

 僕も心子に 最も困らされたことです。

 攻撃が最大の防御 とばかりに、

 自分が倒れないよう 懸命に怒りを爆発させます。

 ところが それが過ぎると、 こちらを責めたことを 死ぬほど後悔して、

 詫び入ったり 自己否定に陥ってしまうのですね。
 
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心から安心することができない

2009年10月26日 23時07分50秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 人との境界が 曖昧ということは、

 自己のアイデンティティを 絶えず外界から 脅かされやすいということです。

 基本的な安心感に乏しく、 居場所のなさを 覚えやすいのです。

 これは 自己と他者を切り離す 最初の段階

 -- 母子分離の段階での つまずきが影響しています。

 安心して母親の元から 離れて行けず、

 自分が独立することに 不安と恐れを感じます。

 このタイプの人は いつも安全や主体性を 脅かされ、

 人を心から信じることが できにくいのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕


 心子の手紙からです。

「 マー君は穏やかで 静かな空気を感じます。

 こんな優しく 平和な時間があるのか、 怖いくらいに 平和なときでした。

 けれど、 やはり足りないのです。

 心がどこか 悲しく淋しく、

 埋められない 大きな穴があいて、 私を苦しめます。

 マー君と心子では、 愛し方が違いすぎるのでしょうね……。」

 愛されていると感じながら、

 容易にそれを信じて 安心することができないのでしょう。

 心に大きな穴があって、

 ここが自分の居場所だと 感じられなかったのだと思います。
 
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自己と他者の 境界が曖昧になる

2009年10月25日 20時18分44秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 自分と他者の 境目が曖昧で、 十分に区別できていない という特徴があります。

 自分が好きなものは 相手も気に入ると思い、

 自分と相手の 感じ方は別だと 頭では分かっていても、

 いつの間にか混同してしまいます。

 特に ストレスを受けたり、 枠組みが曖昧な状況では、

 混乱を生じやすいのです。

 また、 甘えが許される 親や恋人に対して、

 自分と相手との 境界が失われやすくなってしまいます。

 しばしば起こりやすいのが  「すり替え」 で、

 目先のトラブルや 相手の過失に 問題を転嫁し、

 肝心の問題から 逃げてしまいます。

 また 自分の基準でしか 相手を見ることができず、

 相手を一面的に 好き嫌いで判断してしまうのです。

 相手の気分に 巻き込まれやすい傾向もあります。

 反対に、 自分の感情を 相手に 「投影」 して、

 自分の気持ちで 相手の気持ちを勘繰ったりもします。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕


 正に 僕との恋人関係で、 心子は 二人の間の境界を 失いがちでした。

 身も心も ひとつに溶け合う 恋愛において、

 それは 最も起こりやすいのでしょう。

 心子は 自分と同じ気持ちを 僕が感じることを要求するため、

 不協和音が 生じることになりました。

 本当の愛情は、 自立した人間同士が 相手との違いを尊重しながら、

 1+1=2で 愛し合うものです。

 すり替えや投影も 心子には当然 激しくありました。

 ただこれらは、 程度の差こそあれ 我々が誰しも持っているものです。

 そのレベルが ボーダーの人は著しいのですが、

 我々も ボーダーの人の 雛型と言えるでしょう。

 ボーダーの人を理解する 端緒となるものです。
 
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枠組みのない状況が 苦手である

2009年10月24日 23時57分27秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 境界性パーソナリティ障害の人は、

 規則や目的が かっちりしている時は 問題はありませんが、

 それらが曖昧な状況では かえって不安定になってしまいます。

 どんどん要求を膨らませ、 行動や感情に ブレーキがかからなくなります。

 カウンセリングで自由に話しだすと、

 とりとめがなくなって 極端な方向に 脱線しやすくなります。

 ロールシャッハテストでも、 統合能力が低いため

 何に見えるか 答えられなかったり、 突飛な答が 多くなったりします。

 ロールシャッハテストは BPDの診断において、 有力な補助検査です。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕


 心子は職場では 優れた能力を発揮していました。

(集団的な苛めに遭って 苦しんでいた時期はありましたが、

 対処を怠った職場に 抗議するため、

 組合に入って 労災認定を得ようと 奮闘していました。)

 僕と過ごす 自由な時間に、

 不安定になったり トラブルが起きたりしたわけですが、

 むしろそれは 恋愛関係だったから起きたことでしょう。

 枠組みのない状況が 苦手ということは、

 心子に関しては 特別に思い当たることが なかったかもしれません。
 
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カウンセリングが うまくいかない理由 -- 境界性パーソナリティ障害の 複雑な心理を読み解く

2009年10月20日 20時21分05秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 境界性パーソナリティ障害の人では、

 従来の精神分析や 受容的なカウンセリングが、

 逆に 症状を悪化させてしまいます。

 通常のカウンセリングでは

 クライアントの話に ひたすら耳を傾ける  「傾聴」 を基本にし、

 やがて本人が 自分を見つめ直して 再統合していくよう、

 共感や解釈で それを助けます。

 でも境界性パーソナリティ障害の人では、 不満や苦しみを 取り止めもなく話し、

 余計に しんどくなってしまうこともあります。

 過去に踏み込むと ますます話は広がり、 ネガティブな感情が 噴出します。

 コントロールが失われて 極めて不安定になってしまいます。

 これを  「パンドラのはこを開けた」 と表現します。

 今まで封じ込めていたものが 一挙に吹き出し、

 本人も周りも 洪水のような感情の渦に 巻き込まれます。

 蓋を取ったはいいが、 あとの始末が つけられないのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕


 心子も主治医に、 カウンセラーを探してほしいと 望んでいました。

 でも先生が なかなか探してくれないので、

 心子は先生に ドクターとして致命傷を与えるような 酷評をしたものです。

 ところが後日 先生の話を聞くと、 心子のような人は

 カウンセリングを受けること自体が 難しいのだと言われました。

 まず、 毎回定期的に カウンセリングを続けることが難しい。

 そして、 心子は 頼れるカウンセラーとして 男性を望むだろうが、

 男性には依存感情を抱いて、 そのあげく破綻し、 遠のいていって、

 そしてまた 逆戻りしてくることを 繰り返すだろう、 ということでした。

 まるで僕に対して やっていたことと同じです。

 いずれにしても、 治療は十年単位になる と言われました。

(次の日記に続く)
 
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一時的に記憶が飛んだり、精神病に似た状態になる

2009年10月17日 22時27分42秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
(前の記事からの続き)

⑨ 一時的に記憶が飛んだり、 精神病に似た状態になる

 強いストレスが かかったとき、 精神の統合機能が 一過性の破綻を起こし、

 解離症状や 一過性精神病状態を 示すことがあります。

 「解離」 とは、 意識や記憶の連続性が 一時的に破れることです。

 人格が別人と入れ替わる  「解離性同一性障害」 などが典型的です。

 意識が変容する スプリットや、 フラッシュバックを起こすこともあります。

 意識ははっきりしているが、 現実感がなくなるのは  「離人」 と言われます。

 また、 被害妄想的な 「妄想様観念」 に囚われ、

 幻聴や幻覚が 起きることもあって、

 統合失調症と誤診される 場合も少なくありません。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕


 心子は当初は 解離はありませんでしたが、

 父親の幻影に脅かされ、 自殺企図を繰り返すようになりました。

 あるとき 初めて解離を起こし、

 死人のように半開きの目で 無意識状態に陥りました。

 「解離」 を 机上の知識としてしか 知らなかった僕は、

 そんな人間の顔を 初めて見て、 不気味な感触に 見舞われたものです。

 その後、 心子はしばしば 意識や記憶をなくしたり、

 子供の人格に 入れ替わってしまったりしました。

 時には あどけない可愛い子供、

 時には 死の呪縛に囚われて 死のうとする危険な子供でした。

 自分の胸を 包丁で刺そうとして 大騒ぎを起こしたかと思えば、

 30分後には 元の人格に戻って、 面白おかしく 笑ったりしていました。

 アップダウンが 極めて激しくなってきた 時期でした。
 
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自分が何者であるか わからない

2009年10月15日 19時35分50秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
(前の記事からの続き)

⑧ 自分が何者であるか わからない

 生きることの違和感や、 居場所のなさを 感じています。

 最も根源的な アイデンティティの障害は、 親や出自によるものです。

 養父母や義父母が いる場合や、 片親の場合、

 自分は どの親の子なのかという 問題を抱えやすくなります。

 青年期には、 進路選択や 性的なアイデンティティ,

 存在論的なアイデンティティの 問題もあります。

 自分は愛される価値がない, 何のために生まれてきたのか 分からないという、

 より本源的で 深刻な苦悩に 脅かされてしまうのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕


 心子は父親に 異性としての愛情を 抱いていたと言います。

 元々 父親は、 いつ発作が起こるかわからない 心臓の病を抱えており、

 心子は 父と一緒に死ぬという 約束をしていました。

( それは 客観的な事実ではなく、 心子の中の 主観的事実でしたが、

 心子にとっては 紛れもない真実でした。)

 心子は 父を支えるため、

 明るくて頑張り屋の もう一人の自分を 無意識に作り出したのです。

 心子は 父と死ぬために生きているようなもので、

 本当の自分が 何だか分からなくなってしまいました。

 父は 心子が10才のとき 急逝しました。

 が、 心子は死ねませんでした。

 父との誓いを破ったという トラウマが、 心子から 生きる意味を奪い、

 自分は 生きていてはいけないという、 死の呪縛となったのだと 思われます。

(次の記事に続く)
 
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心に絶えず 空虚感を抱いている

2009年10月14日 21時53分21秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
(前の記事からの続き)

⑦ 心に絶えず 空虚感を抱いている

 順調であるはずのときも、 漠然とした虚しさに つきまとわれてしまいます。

 幸福であることに 居心地の悪さを 感じることもあります。

 うまくいかないときには 空虚感が強まり、

 それまで積み上げてきたものや、 生きること自体が 無意味になってしまいます。

 この空虚感は、 最も愛情を必要としたときに、

 それを得られなかったことと 関係しています。

 逆に、 過保護な子供時代を 過ごした人にも見られます。

 自分自身の力で 物事を達成する 経験が乏しい人は、

 自尊心や自信が 育まれません。

 子供にとって、 厳しさと優しさは どちらも大切なのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕


 心子は生まれたとき 足に障害があり、

 親は 心子を抱かないようにと 医者から言われたそうです。

 心子は1年間、 たった独りで 寝かされたままだったといいます。

 赤ん坊は 無条件に親に抱かれ、 慈しまれることによって、

 自分が大切にされている, この世に存在していいんだという、

 無意識の自己肯定感を 育てていくことができます。

 この世に生まれた最初に それが与えられなかったことは、

 どんなに底知れない 空虚感を生んでしまうことでしょう。

 足が治ってからは、 母親は 今までのものを取り返すように、

 心子にできるだけのことをし、 過保護気味だったと 言う人もいます。

 一方 父親は、 100点以外は許さないほど 心子を厳しく育てたといいます。

 本当の客観的事実が どうだったのかは分かりませんが、

 愛情が偏ってしまっていたことには 違いないのでしょう。

(次の記事に続く)
 
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自己を損なう行為に 耽溺する

2009年10月13日 20時24分58秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
(前の記事からの続き)

⑥ 自己を損なう行為に耽溺する

 自殺企図や自傷行為など 直接自分を傷つける 行為の他に、

 薬物乱用やアルコール, 場当たり的なセックスなどに 溺れます。

 過食や万引き, 買い物依存は、

 しばしば 愛情飢餓を癒すための 代替行為として行われます。

 女性では 過食や浪費が見られやすく、

 男性では 命の危険を伴う スポーツや無謀運転などに 熱中することもあります。

 無意識の自殺願望が あると言う人もいます。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕


 心子には 過食, ODがありました。

 ただし 僕の目の前で したことはありません。

 不特定相手の性行為, 万引き, 浪費は 全くありませんでした。

 心子は 倫理観が非常に強い面があり、 逆に 使えるお金は全くなかったので。

(ただ 死後になって、 隠れた預金があることが 分かりました。)

 また心子は 人の犠牲になったり、

 正義のためなら 自分の身は どうなっても構わないという 性向がありましたが、

 主治医の先生によると、

 それは 自分を目茶苦茶にしたい 無意識の自分がいるのだ ということでした。

 それも トラウマから生まれてきたものです。

 心子は 自分で自分を抱きしめることが できないのでした。

(次の記事に続く)
 
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自殺企図や自傷行為を繰り返す

2009年10月12日 20時56分09秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
(前の記事からの続き)

⑤ 自殺企図や自傷行為を繰り返す

 BPDの人の7割以上が 自傷行為の経験があるといいます。

 自殺率は9%とされますが、

 重度のケースでは 36%にも上ったという 調査もあります。

 自殺関連行動として、 自殺のそぶりや 脅しがあります。

 苦しさを分かってほしいという サインだったり、 カタルシス効果や、

 自分を罰することで 生きることを許す 取引だったりします。

 リストカットやODもありますが、

 希死念慮が どこまで切迫しているか 見極めることが必要です。

 動揺して過剰反応すると、 自殺企図を エスカレートさせやすい反面、

 安易に受け止めていると、 既遂になってしまいかねません。

 首をくくったり 飛び下りによる自殺企図は、

 切迫度が高く、 完遂される危険が 高まっています。

 とにかく本人の苦しみを 分かってあげる必要があります。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕


 心子は 正に飛び降りでした。

 サインとしての自殺関連行動は、 刃物などで 首や胸を刺すことでした。

 命を賭した演技だったと 思われたこともあります。

 それは 僕の目の前でだけ 行われましたが、

 最後の飛び降りだけは、 誰にも言わずに 黙って逝ったのです。

 僕は、彼女の実際の死は 思ってもいなかったというのと、

 心のどこかに その予想もあったというのと、

 矛盾した気持ちが 正直なところでした。

 でも、 心子は あれだけ苦しんだのだから、

 これでやっと 苦しみから解放されたのだと、

 思わざるを得ないものが 僕にはありました。

(次の記事に続く)
 
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怒りや感情の ブレーキが利かない

2009年10月11日 19時50分00秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
(前の記事からの続き)

④ 怒りや感情の ブレーキが利かない

 とても傷つきやすく、 些細なことで腹を立てて ブレーキが利きません。

 甘えを許してくれる人にだけ 出やすいのが特徴です。

 自分を守ろうとして、 または、

 分かってもらえない苛立ちから 居丈高になったりします。

 他のことは 頭から飛んでしまい、 TPOに関係なく 激しく反応してしまいます。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕


 このことは、 僕が心子に 最も苦い目に 遭わされたことのひとつです。

 心子は自分の痛みを 分かってもらえない悲しさが、

 怒りとなって 爆発してしまいます。

 それは 僕や母親など、 親しい間柄でのみ 起こることでした。

 二人は一心同体でありたいという 欲求がハイレベルなので、

 現実にはそれが満たされずに 爆発してしまうのです。

 怒りは、 傷ついても 自分が倒れずに、

 持ちこたえているための 感情でもあります。

 トラブルが起きるのは大抵 二人だけの時でしたが、

 心子は外でも 人目を憚らず 僕に食ってかかったこともありました。

 一方で、 苦しくて 電車の中で叫びたくなるのを、

 必死で堪えていたこともありました。

 人前では時によって 感情をコントロールできたのかもしれません。

 怒りや攻撃は 周囲が最も困惑することですが、

 一番苦しいのは 本人にほかならないのです。

(次の記事に続く)
 
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めまぐるしく気分が変わる

2009年10月10日 22時37分27秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
(前の記事からの続き)

③ めまぐるしく気分が変わる

 両極端の気分の起伏を  「ムード・スウィング」 といいます。

 変化があまりにも極端で、 同じ自分とは 思えないほどのこともあります。

 ある男性は、 「僕」 と 「私」 という

 二人の自分がいると 表現したそうです。


 BPDには うつ症状がありますが、

 うつ病には 重いタイプと軽いタイプがあります。

 前者は 希死念慮も伴う 「大うつ病」 

 または 「メランコリー型うつ病」 といい、

 従来 「うつ病」 と 言われていたものです。

 しかし近年は、 比較的 軽いうつ状態を繰り返す 「気分変調症」 や、

 攻撃性が見られやすい  「非定型うつ病」 が増えています。

 境界性パーソナリティ障害では 後者の合併が多くあります。

 気分の変動には、 見捨てられ不安を かき立てる状況などの きっかけがあります。

(うつ病は そういうきっかけになる 出来事はありません。)

 境界性パーソナリティ障害と 間違われやすいものに

 「双極性Ⅱ型障害」 があります。

 躁うつ病のひとつで、

 BPDとは 原因も治療も 全く異なるので、 鑑別することが必要です。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕


 心子は、 普段は自分のことを  「あたし」 と言いますが、

 怒りを表すときなどは  「私」 と言いました。

 本人は意識していたかどうか 分かりませんが、

 人格が変わっていたのかもしれません。


 BPDの人は 最初うつ病と診断され、 次に双極性Ⅱ型障害と言われ、

 最後に BPDと診断されるケースが 少なくないようです。

 双極性Ⅰ型障害は 従来の躁うつ病のことで、

 双極性Ⅱ型障害は うつ状態と軽い躁状態が 現れるものです。

(次の記事に続く)
 
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対人関係が両極端で、不安定である

2009年10月07日 20時46分56秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
(前の記事からの続き)

② 対人関係が両極端で、 不安定である

 ある人に対して、 信頼できる人だという気持ちと、

 自分を裏切るに違いないという、

 相反する気持ち (アンビバレンス) が 同居して、

 両極端に見える 行動を取られます。

 BPDの人は 親に見捨てられたと感じ、

 「本当の親」 探しの 旅をしてきました。

 現実に得られなかった 完全無欠の親、

 100%の愛を 与えてくれる人を 見つけ出そうとします。

 回復するためには、

 いつか見捨てられるという 誤った確信を 克服する必要があります。

 親を信頼できる存在として 受け入れるか、

 それに代わる存在に 支えられながら、

 親を求め続ける気持ちを 卒業していくかです。

 ただ 常に別れを繰り返すのではなく、

 一定の信頼が生まれると、 その関係を 大切にすることがあります。

 気まぐれで 相手を取っかえ引っかえするのが、

 BPDの本性のように捉えるのは 誤解に繋がります。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕


 心子は こんな手紙を 送ってきたことがあります。

「 母親を泣いて探す 迷い子のように、 心子はいつも 求めていました。

 この世の中に 唯一絶対の愛があることを。

 相手のためなら 自分が死ぬことさえ 笑って受け入れられるほどの、

 強い愛が 存在することを。 」

 心子は 恋愛対象は少なくなかったようですが、 僕と知り合ってからは、

 トラブルがあって 別れていっても、 忘れたころになると 再び連絡してきました。

 恋人として付き合うようになるまで 約6年越し、 別れと再会を繰り返しました。

 付き合い始めた 初期の頃は、 毎日メールや電話をすることを 求められましたが、

 ある時期から それは落ち着きました。

 主治医の先生によると、 僕を信頼して

 「試す」 必要が なくなったからだと言われました。

(次の記事に続く)
 
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見捨てられることに対する 不安が強い--境界性パーソナリティ障害はこうして診断する

2009年10月07日 20時29分46秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 アメリカ精神医学界の診断基準 「DSM-Ⅳ」 は、

 操作的な診断基準と呼ばれています。

 チェック項目の いくつ以上が該当すれば、

 その診断を下すと 便宜的に決めたものです。

 本来、 疾病の診断は、

 原因とその病理を特定した上で なされるのが理想的ですが、

 DSMでは それは抜きにして、 症状によって 統計学的に診断をします。

 精神医学では 原因や病理が 客観的に分かりにくく、

 症状のみで診断した方が 初心者にも容易だということがあります。

 境界性パーソナリティ障害の診断項目を 以下にピックアップします。


①見捨てられることに対する 不安が強い

 この不安は 親しくなった瞬間から始まり、 親密さが増すほど 強くなります。

 相手の機嫌を 取ろうとしたりして、

 それが逆に 相手を苛立たせることにもなります。

 そうすると 不安定になったり、 逆ギレして攻撃したり、

 衝動的な行動に向かったりします。

 拒否されてもいないのに、 先読みしてそう思い込み、

 過剰な反応をしてしまいます。

 それで 相手が本当に 背を向けてしまうと、

 やっぱり思った通りだと 結論付けるのです。

 さらに 自分の傷を思い知らせようとして、 困らせる行為をしたりします。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕


 心子の場合は、 見捨てられそうに感じると、

 傷つく前に 自分から僕を見捨てるように、

 離れていくことを繰り返していました。

 また、 僕がいつまでも 心子を愛し続けるはずがなく、

 他の誰かと一緒になると 口にすることもありました。

 見捨てられ感は 根本的で強烈な感情で、

 BPDの中核的なものだと 言う人もいますが、 幾つかの所見があるようです。

(次の日記に続く)
 
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