goo blog サービス終了のお知らせ 

「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

発症時期が早いほど 深刻である -- 境界性パーソナリティ障害はこうして現れる

2009年10月05日 19時14分15秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 症状が出てくる時期には 個人差があります。

 最近では 小学校中学年くらいで、

 境界性パーソナリティ障害の特徴を 示す子もいます。

思春期発症タイプ …… 10代前半で問題が出てくる

青年期発症タイプ …… 10代後半で始まる

成人期発症タイプ …… 20才以降に始まる

 低年齢化が進む一方で、 成人以降に 問題が出てくるケースも 増えています。

 思春期が長くなり、

 自立まで 長い時間を要するようになったことと 関係しているでしょう。

 全体的に見ると、 発症のピークは 高齢化しているかもしれません。

 一般的には、 発症時期が早いほど、

 強い愛情飢餓や 見捨てられ体験を 味わったケースなど、

 養育環境の問題が 深刻だということです。

 それに対して、 見た目には 問題のない家庭で、

 それなりの愛情を 与えられてきたケースでは、

 年齢が上がってから 表面化しやすいものです。

 親の価値観に支配された  「良い子」 や

 「頑張り屋さん」 であることが 共通しています。

 一方、 予後については 一概には言えません。

 発症が早くても、 20代を過ぎる頃には すっかり落ち着く場合もあります。

 20代を過ぎて 始まった場合でも、 2~3年で 落ち着くこともあれば、

 40才になっても 不安定だということもあります。

 対応の仕方や その後の環境、 本人の資質や 努力によって、

 予後は大きく左右されます。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

生まれ持った 性格ではない

2009年10月04日 18時50分17秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 境界性パーソナリティ障害は、 永遠に続く 固定した性格ではありません。

 多くは 思春期から青年期、 成人早期に始まる、

 嵐のような 感情と行動の失調状態です。

 自殺企図, 自傷行為, 過食, 危険な性交渉, 薬物乱用なども、

 何らかの喪失体験が きっかけになっています。

 通常は数年で 嵐は治まっていきます。

 周囲の対応がまずかったり、 本人の抱えているものが 深刻な場合には、

 10年、 20年と かかることもあります。

 多くは 30代半ばから落ち着き始め、 年齢が上がると共に 改善していきます。

 その間に、 思い詰めた行動に 走る危険を 回避することができれば、

 その人らしい人生に 辿り着いていきます。

 魅力的に成熟することもあれば、 偏りや幼さを 一部留めていることもあります。

 克服する前に、 薬物などの 依存症になったりすると、

 それだけ回復を 手間取らせることになりま。

 問題を 乗り越えようとする中で、 鋭敏な感性や 人への献身、

 常識にとらわれない個性を 培っていくことも少なくありません。

 努力と円熟が加わって、

 個性的な才能や 人に奉仕する才能を 開花させていくケースもあります。

 同時に、 傷つきやすさや 安心感の乏しさが、

 折角の成功を 台無しにする行動に 駆り立てることもあります。

 その人が いかに生きて、 自分の抱えている問題に 向かい合い、

 克服していくかが、 後半生に現れるのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

発症のきっかけと 原因は別である

2009年10月02日 18時15分40秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 境界性パーソナリティ障害が  「発症」 するとき、

 通常は きっかけとなる出来事があります。

 それが ひとつのこともあれば、 複数のこともあります。

 注意すべきことは、 きっかけと原因は 別だということです。

 原因は 長い時間をかけて 用意されています。

 一方きっかけは たまたま最後の一押しと なったに過ぎません。

 ただ きっかけとなる出来事は、

 過去の 心の傷や痛みを 甦らせるような性質を持っています。

 それによって 心理的に動揺するだけでなく、

 積み上げてきたものが 全て崩れ去るような 体験として感じられるのです。

 親密な関係になること自体が 見捨てられ不安をかき立てる

 きっかけになることもあるし、 実際の別れが 引き金をひくこともあります。

 また 若い女性の場合、 離別と中絶によって、 喪失感と罪悪感が重なり、

 自身の見捨てられ感と 自分が見捨てた命が オーバーラップして、

 救われがたいことに 感じることもあります。

 一見 愛情深い家庭に育ち、 見捨てられ体験が ないように思えても、

 丁寧にたどっていくと、 必ず その人がかまわれなくて、

 寂しい状況に 置かれていたことが 明らかになってきます。

 過去の体験によって 潜在的なもろさを 抱えているところに、

 何らかの 別離体験や喪失体験が 加わることによって、

 境界性パーソナリティ障害を 呈するというのが 典型的な経過です。

 過去に 見捨てられ体験があっても、

 親密な関係を避けることで 表面化することなく、

 アイデンティティを保っているケースは 少なくありません。

 しかし 恋愛や肉体関係という 深い関係に陥ることで、

 心の鎧が取り去られ、 幼い頃の 傷や寂しさが甦ってくるのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

境界性パーソナリティ障害は  「発症」する

2009年10月01日 22時49分49秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 小さい頃から 頑張り屋さんで、 親を困らせることもなく、

 勉強も良くできる子が、 ある時期から 急に不安定になり、

 生活が乱れてくることがあります。

 高校までは優等生でも、 大学に入ると 優秀な人ばかりで、

 味わったことのない挫折で 自信をなくしたり、 虚しさにとらわれたりします。

 失恋によって 自分がコントロールできなくなり、

 自傷行為を 起こすこともあります。

 両親に 昔の不満を述べ、 幼い頃のことまで持ち出して 親を困らせます。

 親にとっては 寝耳に水ですが、 本人はずっと 我慢していたのだというのです。

 そのようなケースからも 分かるように、

 境界性パーソナリティ障害は 元々ある 「性格」 の 障害ではありません。

 境界性パーソナリティ障害に対する 誤解のひとつは、

 「困った性格」 だと 見なすことです。

 実際には そういう 「性格」 の持ち主というより、

 あるきっかけから、 そういう状態に 「なる」 のです。

 特定の性格の人が なるというより、 様々な性格、

 時には 全く正反対の性格の人も 境界性パーソナリティ障害になります。

 多様なタイプの人が、 あるきっかけから 共通する状態を示します。

 いくつかの契機が 引き金になって、 急に 或いは徐々に、

 「発症」 する 病的状態なのです。

 どんな性格の人でも、 悪い条件が揃うと、

 境界性パーソナリティ障害の 状態になり得ます。

 逆に言えば、 回復していくと 境界性パーソナリティ障害の 症状は消えていき、

 本来の性格に戻っていきます。

 以前と全く同じに 戻るのではなく、

 試練を経験することによって 成長し、 成熟した姿になっていくのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

心惹かれる出会いが、 戸惑いに変わるとき

2009年09月29日 19時52分56秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 境界性パーソナリティ障害の人は、 一目見たときから とても印象的で、

 魅力とオーラを 放っていることもあれば、

 放っておけないような 保護本能をくすぐられることもあります。

 繊細で優しい気遣いを 見せるかと思えば、

 突然 常識を超えた ストレートな言葉で 痛いところを突いてきたりします。

 枠にはまらない 新鮮さを感じ、 魅了されていくことも 少なくないでしょう。

 しかも、 あっと言う間に 距離が縮まって、

 いつの間にか 恋人同士のような口をきき、 甘えてくることも多くあります。

 その出会いに 運命的なものさえ 感じることもあります。

 お互いの信頼関係が 深まったと思ったころ、

 突如 不可解な言動に 戸惑いを覚えることになります。

 突然やってくる メールや電話に、

 ときめきよりも 不安と緊張を感じるでしょう。

 いくら慰め、 安心させても、

 5分と経たないうちに 気持ちが揺らいでしまいます。

 相手は 四六時中しばられていると感じ、

 神経をすり減らし、 次第に負担になっていきます。

 境界性パーソナリティ障害の 根本的な問題は、

 愛情への強い飢餓体験に 根ざしているため、

 最も親密で 相手との距離が縮まる 恋愛関係において、

 激しく問題を 露呈しやすいのです。

 恋愛に限らず、 自分が受容してもらえると感じ、

 依存する心地よさを 覚えたとき、 別人のように コントロールが失われます。

 従って、 親切で 思いやりのある人ほど、

 何とか支えようとして、 巻き込まれてやすいのです。

 自分も同じような 傷を抱えていると、

 一種の 「共振現象」 が起きて、 呑み込まれてしまいます。

 そうすると 支えになるどころか、

 疲れ果てて 情緒不安定になってしまいかねません。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

身近になった 現代人の病 -- 境界性パーソナリティ障害とは何か

2009年09月28日 10時49分00秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 今日から 岡田尊司氏の 「境界性パーソナリティ障害」 (幻冬舎) より

 抜粋・要約を書いていきます。

-------------------------------------

 「境界性 (ボーダーライン)」 という言葉を 最初に使ったのは、

 アメリカの精神分析家 アドルフ・スターンで、 1938年のことでした。

 神経症と精神病の 境界線という意味で、

 すでに今日の 境界性パーソナリティ障害の 特徴を捉えており、

 根底に 自己愛の問題があると 示唆していました。

 このタイプの人に、 神経症の治療だった 精神分析を行なうと、

 一見うまくいきそうだったのに、 逆に状態を 悪化させることが起きました。

 50年代になると、 さらに多くの人が、

 従来の常識が通用しない このタイプの患者と 出会うようになります。

 しかも、 治療者が熱心に 支えようとすればするほど、

 患者は どんどん悪化していき、 攻撃的で衝動的になり、

 自殺企図を 繰り返すようになってしまったのです。

 最初は信頼関係があっても、

 些細なことで 掌を返したように 態度が変わってしまいます。

 親切で熱意あるスタッフほど、 手痛い思いを 味わうことになったのです。

 80年代に入ると 日本でも、 リストカットや自殺企図を 繰り返し、

 周囲の人が振り回される 困難なケースが 目につくようになってきました。

 90年代以降、 ごく普通の家庭でも こうした問題に悩み、

 どうしていいか分からない という人が急増し、 身近な問題になってきました。

 中学や高校には 必ずそういう生徒がおり、 最近は 小学生にも見られます。

 それはもはや、 「患者」 という認識だけでなく、

 「現代病」 として 捉えられる面も大きいのです。

 アメリカのデータでは、 一般人口の2%、 精神科外来患者の11%、

 入院患者の19%が 境界性パーソナリティ障害の 診断に該当するとされます。

 日本でも この水準に近づきつつあります。

 女性は男性の 約4倍ですが、

 男女差の縮小ととも 男性の割合が増えつつあるようです。

 しかし 多くの人にとっては まだ縁遠いもので、 誤解も多くあります。

 正しい理解を 持つことが重要です。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする