医療マーケティングの片隅から

医療ライター・医療系定性調査インタビューアーとして活動しています。独立30年を機に改題しました。

抗がん剤を拒絶する前に

2010年06月09日 | 「がん」について

「もし自分や自分の身内の方ががんになったら、どういう治療を受けたいか」という話になると、だいたいは「抗がん剤を受けるか、受けないか」で分かれる。
私は診療ガイドラインにのっとった標準治療を受けるのが最良の選択だと思っており、周囲の人たちにもそれを勧めているので、世間ではどうも「クスリ好き」、とりわけ「抗がん剤シンパ」だと思われているらしい(笑)。
シンパもへったくれも、確率的にそれが一番確実だからであって、はなから負ける賭けはしたくないというだけなのだが。

辟易するのは「抗がん剤は是か非か」といったニ元論的な議論。
抗がん剤を拒絶する人は「抗がん剤は毒だから、体に悪い」というのだが、そんなもん「神農本草経」の昔から、強いクスリは強い毒薬と相場がきまっている。クスリとリスクは裏返し、というくらいで。

しかし、抗がん剤の進化は日進月歩で、分子標的薬(「なんとかニブ」という名の薬剤です)など、ターゲットになる遺伝子だけを狙い撃ちすることができるようになった。もちろん、それでも副作用はあるが、たとえば吐き気止めなど副作用を緩和する薬もいっしょに進歩している。

乳がん  83%
子宮がん  71%
大腸がん  68%
胃がん  58%

何の数字かおわかりだろうか。
正解は「日本人のがん患者の5年生存率」。これは93~96年診断例でのデータなので、現在はもっと伸びているかもしれない。
日本人に比較的多いがんで、半数以上が命をつなぎとめている。
これだけがんが“治る”病気になってきているのは、3大治療(手術、化学療法(=抗がん剤)、放射線)が進化し、診療ガイドラインがつくられて普及してきたからに他ならない。
「抗がん剤はいや」と決めつける前に、まず、その事実は考えてみるほうが得なのではないかと。

幸いにしてまだ自分では抗がん剤を体験したことはないが、もしがんにかかり、積極的治療が有効な段階であれば、私は多分躊躇なく切り、抗がん剤をやると思う。
この話はもう少し続くのだが、長くなるので今回はこのへんで。


例によって話題と関係ないけど、ルーブル美術館の「モナリザ」の部屋。
人種国籍を問わず、やることは皆同じ。わかります?ほとんど全員、写メかデジカメ(笑)

ご高覧多謝。

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4 コメント

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Unknown (うみかじ)
2010-06-10 15:53:44
私は抗がん剤を投与されたことがないので、その苦しさを体験したことがありません。
でも姉を卵巣がんで1990年、父を胃がんで1996年に亡くしたので、傍目では見ていました。
姉は病気がわかった時、余命半年と言われ、父は手術時手遅れとわかったそうです(ともに本人には知らせず)。

姉の時、私たち家族は初めて「がん」というものに接し、知識も何もなく、ただ担当医にすがるしかなかったことが、一生の悔いとなっています(特に母)。
姉は転移がひどく手術もできず抗癌剤治療をしました(ターミナルケアをすべきだったのに)。今から20年前の医療です。あらゆる面でむごかった。
父の時、母が担当の先生に「千分の1でも助かる可能性があるなら、抗がん剤治療して下さい」と言ったそうです。父には抗癌剤治療はありませんでした。

私たち母娘の間では(手遅れなら苦しむ治療はやらない)と決めています。
しかし、可能性があるならば、今の医療で一番有効な方法をお願いすると思います。それが抗がん剤であるのか、放射線であるのか、等はその場合によって違うと思うので、最初から限定はできません。

昔の医療しか受けられなかった方々には、本当に申し訳なく辛い思いです。
「抗がん剤」と一口で言っても、今と昔とでは雲泥の差なのでしょうから。
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>うみかじさん (nakaho)
2010-06-12 10:58:36
>昔の医療しか受けられなかった方々には、本当に申し訳なく辛い思いです。

全く同感です。先輩たちの受けられた治療は過酷なものでした。それを傍らで見ておられたご家族の想いは察するにあまりあります。よい吐き気止めができ、初期からの緩和ケア(苦しまずに治療するということ)や精神腫瘍学など、患者さんの治療の苦痛を和らげる分野が発達してきたのもここ数年です。

「手遅れなら苦しむ治療はやらない」にも全く同感です。ブログ文末に書いた「話が長くなるので…」はそのことを書こうと思っていたのでした。次回書きますね。

今年はコンクールに挑戦されるのですか?応援に行けず残念ですが、頑張ってください!
返信する
お久しぶりです☆ (fufumi)
2010-06-13 21:32:19
こんばんは♪

ご無沙汰している間に、子宮頸がんの手術を受け、
今はすっかり「本当にがんだったの?」というくらい、
以前と変わりなく元気にしております。

幸いにも「0期」だったので、円錐切除術を受けただけで、抗がん剤のお世話になることもなく、
本当のがんの怖さを知らずに済んでいる感じです。

本当に、2人に1人はがんになる時代。
どこか自分は関係ないと思っていましたが、
無関心過ぎたことを少々恥じております。
これを機に、今後のいざという時のためにも、
もうちょっと知識をつけておかなければと感じております。
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>fufumiさん (nakaho)
2010-06-16 12:44:15
お久しぶりです。
手術をなさったんですね。早期発見で何よりでした。
ブログを拝見しても楽しそうで、すっかりお元気なご様子。良かったですね!

ところで自身の全身麻酔5時間の体験からいえば、私も森昌子さんの「術中の夢」の話はちょっと信じがたいです。
術後は夢など何一つ覚えてなく、頭がからっぽで「あ~よく寝た!」と超さわやかでした。
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