蛾遊庵徒然草

おこがましくもかの兼好法師にならい、暇にまかせて日頃感じたよしなし事を何方様かのお目に止まればと書きしるしました。

薪ストーブ談義

2005-10-10 18:43:29 | 田舎暮らし賛歌
 十月に入って、山里の朝晩は急に冷え込んできた。それに今年の秋は、日照時間日本一のこの地に珍しく、毎日、雲厚く小雨模様の日が続いている。

 こうなると火の気が恋しくなる。薪ストーブさまの出番である。幸い九月末の天気の良い日に屋根に上り、煙突掃除をしておいたからスタンバイOKである。

 今朝、火を入れてみた。半年振りのくぬぎ材の薪からでる煙の匂いが心地よい。先日収穫しておいたサツマイモを銀紙に包んでストーブ内の隅にそっと置く。小一時間もすれば美味しい焼き芋の出来上がりである。

 しかし、この薪ストーブ結構お守りが大変なのである。田舎暮らし向けの住宅雑誌のグラビアページにはよく出てくる定番である。

 かく言う私もそんなグラビアに惹かれて、ここに作業場(アトリエ?)を建てた際、まっ先に、プレファブ造りには少し不似合いかなと自問しながら設置した。

 なるほど火力、雰囲気は申し分ない。しかし、肝心の薪の調達が大変なのである。市販の薪は約30センチ束で5,6百円もする。こんな量では2~3時間で燃え尽きてしまう。とても定年退職者の財布で賄えるものではない。

 そこで薪調達の苦心が始まる。近くの山道を歩いていると、落ちている枯れ木、枯れ枝が宝物に見えてくる。

 しかし、人里近くでは地主さんの目が気になりなかなか気安く拾って持ってこれるものではない。

 そこで機会あるごとにどこかで処分に困っている人はないかと声をかけてみる。
 建築廃材ももらってみたがこれは駄目である。くぎ抜きがたいへんである。塗料が燃える臭いがいやである。

 次に虫喰いで処分された赤松、これは太くて重く、小割りにするのに多大の労力が要る。5キロもあるマサカリを振り上げているとこんなこといつまでできるだろうかと弱気になる。

 最高は、このへんで盛んなしいたけ栽培用のくぬぎ、こなら等の切れ端を譲ってもらうことである。軽トラ一台分で3000円ほどである。しかしこれもストーブにくべられる大きさに切りそろえるには結構な手間がかかる。

 かくして冬の間中は日々薪のことが頭の隅からはなれないことになる。時々通りかかる大きな別荘などでトタン屋根を架けた下に切り口を揃えた豊かな薪束をみると垂涎の思いがする。そしてこの家の主は何と金持ちなのだろうかと想像するのである。

 しかし、こんな思いをしつつも冬の夜、耐熱ガラスの小さな窓越しにチロチロ燃える焔を見ながらオンザロックなどチビチビやっていると、陶然としてなんとも豊かな気分に浸れるのである。いよいよそんな楽しみの季節となった。