monologue
夜明けに向けて
 



 晩生(おくて)というか、わたしが蓄音機の進化形であるレコードプレーヤーなるものを初めて見たのは高校に入ってからのことだった。同じクラスの洋楽好きが集まって盛り上がっているとレコードを聴かせてやるからみんなで家に来いというのだ。わたしは小遣いでレコードを買ってまで音楽を所有したいと思ったことはなく好きな歌を聴く方法はテープレコーダーに録ったものを再生するだけだった。それで別に不満はなかった。その友達の家に集まるとかれはレコードプレーヤーで最近買ったというパット・ブーン(Pat Boone)の スピーディー・ゴンザレス をかけてくれた。終わるとその裏の「愛のロケット」をかけてA面B面を何度もくりかえし聴かせてくれた、だがそれはなにかあっけないような気がした。初めて 見るレコードプレーヤーというものは、重厚で高価な手の届かない不思議な箱という小学校時代のわたしの印象の中の蓄音機とは大きくかけ離れて軽薄で安価な印象になっていた。

 わたしは持参したテープレコーダーで録音しておいたカウントダウン番組「9500万人のポピュラーリクエスト」のテープを聴いたりみんなのバカ話を録音再生して楽しんだ。小学校時代の夏休みの体操につながる蓄音機に対する憧れはこの日消え去ってしまったようだ。
fumio

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