monologue
夜明けに向けて
 



 今にして思えば父がわたしに音楽を聴くために初めに買い与えた道具がレコードプレーヤーではなくテープレコーダーであったことはわたしのその後の人生を大きく左右した。オープンリールのテープを切ったり貼ったりして好きなように編集することは結局プロのスタジオレコーディング技術者のする仕事と同じだった。録音した番組を何度も聞き返し全米のベスト10をノートに付けたり、その頃流行っていた歌詞のわからないイタリヤ語やフランス語の歌の歌詞をカタカナで書き取って真似て歌った。ギターブームの時初めて買ってもらったギターはガットギターだったがエレキギターが流行るとナイロン弦の代わりにスチール弦を張ってテープレコーダーのマイクをサウンドホールに入れてテープレコーダーをアンプ代わりに使ってそれらしい音を出したものだった。

  わたしは蓄音機(レコードプレーヤー)から出る音を聴く、受け手の立場ではなくテープレコーダーを様々に工夫して使い、音を作り録音して聴いてもらう立場に進んでいったのである。
fumio

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