monologue
夜明けに向けて
 



10月20日火曜に石垣恵美子という名札を付けた掃除担当の女性がわたしのベッドの左前にある換気扇を掃除しながら、昨日が自分の71歳の誕生日と言うので「ハッピーバースデイ」を歌って祝福した。それから石垣さんの顔をみるたびに「石垣恵美子さん、こんにちは」と声をかけた。すると石垣さんはそばにいる人に「この人、わたしの名前覚えているんだよ」と自慢した。わたし以外の患者に名前を呼ばれたことがないようだった。掃除のおばさんにはだれも注意を払わず名前を呼ぼうとしなかったのかも。わたしが「71才になったんですよね」というと人差し指を口の前に立てて年を言うな、という合図をした。70才を超えても女性は年齢に思い入れが深いらしいと感心した。病院のどこででも石垣さんが働いているのを見るとわたしは「石垣恵美子さん、いつもありがとう」と声をかけた。石垣さんはそのたびにうれしそうに返事した。たまに「石橋さん」と間違うと「石垣よ」と訂正した。退院後一度外来で訪れた時、玄関ロビーで石垣さんが掃除していたので「石垣恵美子さん、こんにちは、お元気ですか」と久しぶりに声をかけると、わたしが退院したあとわたしのベッドのところへ行ったけれどわたしがいないのでがっかりしたという。ちょっとさびしそうだった。
fumio

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