monologue
夜明けに向けて
 



 
 長い冬が終わり武蔵村山にも春が来てわたしの退院が決まると作業療法の女性先生がわたしの作った革細工を残していってほしいという。革細工とは手作業リハビリの一環で革財布を作るのだがわたしは財布をひとつ作ると次は作品と呼べるものを作ろうとした。それがこの「彷徨(さすら)うヴィーナス」だった。一見絵のように見えるけれど実はこれは革細工なのである。
 
 普通、患者の作った物はその患者が退院する時に渡すのが当たり前なのだが不思議なことに先生はこれを見本として部屋に飾っておきたいようだった。わたしは役に立つなら記念にあげてしまおうかと思ったけれどなぜかこの作品にこだわって断った。気持ちよくあげてしまえば良いものを自分でも断ったことがおかしい。

 けれどこの作品は現在わたしのホームページの「炎で書いた物語シリーズ」 に使用している。当時は気付かなかったがこの構図に含まれているイメージ、月、北斗七星、薔薇、アラベスク、ヴィーナス、水瓶はあまりにも内容に即しすぎているようだ。退院が決まった時点ですでに「炎で書いた物語シリーズ」 を書くことも仕組まれていたのだろうか。
fumio


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