monologue
夜明けに向けて
 



 12月のクリスマス・シーズンに入ってわたしたちの病棟でもクリスマスパーティが企画された。カラオケ自慢の理学療法リハビリの若い方の先生がカラオケセットを借りだしてきてパーティが始まった。アルコール以外のドリンクで乾杯し日頃の辛さ苦しさを吹き飛ばすように語り笑いあった。みんないつもは見せない和やかな表情で楽しんでいた。自慢するだけあってリハビリの先生の歌は思いの外うまかった。ひとしきりみんなが歌い終わってわたしはここの仲間、特に若い人が悲運にめげずこれからの人生を力強く生き抜いてゆくことを願って乾杯」 を渾身の気持を込めて歌った。歌い終わると同席していた人たちが感動するんだよなあ、と言い、リハビリの先生は眼鏡を取って涙を拭いていた。

 わたしが武蔵村山病院に転院したあと都内から遠くなったので他の劇団員はほとんど見舞いに来なくなったがMIYUKIというヒロイン役の女優はよく見舞いに来てくれた。かの女は各種イベントや歌謡ショーなどの司会を生業(なりわい)にしていた。わたしのカセット「カリフォルニア・サンシャイン」を聴いて「わたしにも歌を作ってほしい」と言いだした。人前で歌う機会は多くても持ち歌がないので困っていたらしい。それでわたしは退院したら作ることを約束した。
fumio



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