普通、レコーディングの際、スタジオではマイクを吹く雑音や破裂音、息継ぎの音が入らないようにする。そのためにマイクカバーやマイクの前にパンストを切って貼ったシェイドをおいて息がマイクにまともに当たらないようにしたりするのである。それでも息継ぎの音が入ってしまうとその部分を消して削除する。
しかるに、ザ・ビートルズのジョン・レノンはGirl で呼吸音を音楽の一部として取り入れた。息吸いに気持を込めて音を立てたのだ。あの音がないと名曲「Girl」は成立しない。わたしもGirlを歌うときは息吸いの音を立てて歌ったものだった。
グスターヴ・ホルスト(Gustavus Theodore von Holst) の組曲『惑星』(The Planets)からの一曲でイギリスの第二の国歌と言われる「木星(Jupiter)」 を平原綾香がポップソングに仕立てたJupiter を耳にした時、ずいぶん強い息継ぎの音が入っていて耳障りに感じた。しかしかの女は呼吸音を音楽の一部として使用しているようだった。アーティストは様々な方法で自分を表現するものなのでそれはかの女なりの表現方法だった。
そしてこの間、島健と電話で喋ったとき、今までプロデュースしたうちで一番才能があると感じたのはだれ?、と訊いてみた。すると「Jupiter」はプロデュースしていないけれどアルバムをプロデュースした平原綾香という答えが返ってきた。わたしは日本の音楽には疎いのであまり知らないけれどなるほど、そうなのかと思った。かの女にはなにか光るものがあるらしい。
fumio
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