monologue
夜明けに向けて
 



 「卑弥呼」は天照大神とされ「大日霎貴(オオヒルメムチ)尊と表記された。
「霎」(ルメ)は靈と女が重なった文字で一字で霊の巫女であることを示している。
彼女は日霊女(ひみこ)日巫女であって真の天照太神ではなかったが霊をルと読むかミと読むかでヒルメとヒミコに分かれる。するとヒルコとは日霊子なのである。
岩波文庫の注ではルは「神魯岐、神魯弥(かむろき、かむろみ)、神留伎、神留弥(かむるき、かむるみ)」のロやルと同じく助詞のノの意味の古語と見られている。すなわち、ヒルコとは『日の子』のことである。女神の天照大神が日霊女(ひみこ)で卑弥呼であり、男性神である真の天照太神が日の子、ヒルコであった。しかし成長して日となるべきヒルコが頚椎や脊椎の椎(つち)の不備のために立てなかった。
 そこで金星の王子サナート・クマラが約650あるいは450万年前に人類初めの人(ヒルコ)の遺伝子治療のために下天して遺伝子の矯正に乗り出した。
『是に、陰陽始めて遘合して夫婦と為る。産む時に至るに及びて、先ず淡路洲を以て胞とす。意に快びざる所なり。』(岩波文庫 日本書紀)
 記紀におけるイザナギイザナミ両神の生殖行為を表すと思われることばはミトノマグワイで書紀では「遘合」あるいは「為夫婦」または「合為夫婦」という文字を使用して(みとのまぐわい)と読んでいる。『遘』はあうの意で邂逅の『逅』と同じである。古事記の原文を調べると『美斗能麻具波比。此七字以音。』となっていてこの七字を漢字の音で書いてある。美斗能麻具波比という音に意味があるようだ。岩波文庫の注では「『みと』は御所で、ここでは性交の場所、『まぐはひ』は『目合ひ』から転じて交接の意に用いられる。」とある。小学館、大辞泉で『みと』をひくと『(「み」は接頭語。「と」は男性・女性の象徴部・陰部の意)陰部を敬っていう語』と出ている。これが一般的な解釈のようである。このことを生物学から透かし見ると細胞内のミトコンドリア(糸状体)などの語を構成するmito(糸)が蠢きだす。そう、ミトとは糸なのである。神糸(みと)と書けば生物を創造するために神が暗号で描いた不思議な設計図、遺伝子の鎖のループ状の糸、染色体を意味すると思われる。マグワイとはその遺伝子鎖の二重螺旋の糸の縒り合わせのことのようである。文中に失敗の例として淡路洲(あはじしま)が出てくるのは縒り合わせがうまくゆかなかったことを「合わじ縞(シマ)」と象徴的に示しているようだ。
 DNAとはデオキシリボ核酸(deoxyribonucleic acid)の略語のことで、生物の細胞の主成分である蛋白質を合成するためのプログラムを記した譜面あるいは設計図である。
DNAを構成するのは糖とリン酸と塩基である。そのうちの塩基が譜面で言えば音符のような符号であり書類なら文字である。DNAの塩基は、A(adenine)アデニン、T(thymine)チミン、G(guanine)グアニン 、C(cytosine)シトシンの四種類である。その四つの塩基からたとえばATGのように三つ選んで並べた塩基配列を遺伝暗号(gene code)と呼んで塩基配列の数は六十四種類ある。それらを様々に組み合わせて設計図は描かれている。塩基配列によって指定されたアミノ酸を順に使用して蛋白質を合成する。DNAに書き込まれた設計図を読みとるとき、まずDNAからRNAribonucleic acid)、リボ核酸に遺伝情報が転写される。DNA上ではチミンの配列場所にRNAではU(uracil)ウラシルが組み込まれ、四つの塩基はAアデニン、Uウラシル、Gグアニン、Cシトシン、となる。DNA上でATGという開始暗号ならRNA上ではAUGと転写される。このAUGという開始の合図になる塩基配列に対応するアミノ酸はメチオニンでこれが蛋白質合成に指定されて使用されることになる。

 さて、書紀の本文ではヒルコを船に乗せて流してしまったあと、次に火神軻遇突智(かぐつち)を生むことになる。この名前に秘密があって。バイオの方面から見るとわかる。
すなわち軻遇突智とはRNAの四塩基CAGU(カグ)ツチなのである。ツチとは生物の体の生成原料を指すことばである。イザナミはあらゆる生物に肉体を与えるために四塩基のツチを遺して黄泉に去った。イザナギは「唯、一児を以て、我が愛しき妹に替へつるかな」といって泣き十握(とつか)の剣で軻遇突智(かぐつち)を三段(みまた)に斬る。イザナミの提供した原料を前にしてバイオ・テクノロジーに腕を揮ったのだ。これは四つの塩基、A(adenine)アデニン、U(uracil)ウラシル、G(guanine)グアニン 、C(cytosine)シトシンを三つずつの単位(トリプレット)にきったということである。こうしてできた遺伝暗号の一つの配列(コドン)を神とみなして斬った刀の血から八神が化成(な)る、と表現し、そして、斬られた軻遇突智の体からもう八神がなった、と八で括って表現する。八かける八と考えると塩基配列の総数、六十四種類のことを示唆している。ありとあらゆる生物はこの暗号の組み合わせによってできあがるのだ。
 イザナミがミトノマグワイにおいて先に声を挙げたのが失敗の原因とされるのは開始信号の間違いを指している。スタートコードはAUGあるいはGUGなどのような数種の配列のコドンでなければならないのだ。設計図のプログラムの読みとりがうまくできず頚椎あたりの神経の蛋白質合成が不調に終わったのだ。サナート・クマラはデバグに追われて大変だったが成功した。「十握(とつか)の剣」とは制限酵素のことで塩基配列を切るときに使用する酵素である。たとえばEcoRIという制限酵素は5'-GAATTC-3'という塩基配列だけを認識して、この剣(EcoRI)で切断されたDNAは、必ず同じ形の末端を持っていて、 DNAリガーゼという別の酵素で、同じ形の末端をもつDNAどうしをくっつけることができるのである。これが現代の遺伝子組み替え食品や遺伝子治療の基本的技術なのだが サナート・クマラすなわちニギハヤヒはこれらの酵素を使用してヒルコの脊椎の遺伝子の不具合を矯正したのであった。人類はかれの援助によって肉体的自立を果たしたのである。
それが大黒天があの万物生成の女握りの拳相や打ち出の小槌をフルことの意味であった。
fumio





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