奈良

不比等

古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その1071)

2019-07-31 08:15:00 | 奈良・不比等

北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない

「私の漂流記(曾野綾子著・河出書房新社2017刊/2015.1~2016.12ボンボヤージ連載記事の単行本化)」を読んだ。曾野綾子(そのあやこ1931生れ)女史は、聖心女子大学(英文科)卒で、有名人気作家である。1995~2005には日本財団会長を務めている。日本財団は旧・日本船舶振興会である。------

「私の漂流記」は、曽野綾子女史の作家人生の可也の比率を占めてきた船舶への関心を纏めて書き出したような本である。とても男っぽい職業領域に一度関心を持つと詳しく学習更にはその分野の専門家に教えを請うて、自らの小説執筆の分野を拡げ掘り下げて来られたその活動の有り様を具体的に知ることの出来る、言い換えれば曽野綾子女史の小説の舞台裏を覗ける有力な本なのである。晩年になると人間は自らの作品の種明かしをしたくなるものであるかのようで、とても面白いのである。-----

貨物船に乗って大洋を航海したり、タンカーにも乗船されており、豪華客船に乗った回数の方が遥かに少なくてたったの3回であると書いている。読者の歓心を逸らさないためにそのうちの2回(クイーンエリザベス2世号、クリスタルセレニティ号)についての話も掲載してくれているので、そこは商売っ気を外してはいない。出版社の編集者もだから曽野綾子女史の本は出せば損はしないのだろう。このような作家は本当に少ないが、内容の質を落とさずにそこそこの本になっている処は流石だと思った。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その1070)

2019-07-30 08:15:00 | 奈良・不比等

北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない

「朝鮮に渡った日本人妻~フォトドキュメンタリー60年の記憶(林典子著・岩波新書2019刊)」を読んだ。林典子(はやしのりこ1983生れ)女史は、国際フォトジャーナリズム大賞などの受賞多数。海外取材し、海外誌への寄稿をメインとして活動している。-----

「朝鮮に渡った日本人妻」は、1959年から1984年に亘り行われた北朝鮮帰還事業にて、朝鮮籍の夫と共に北朝鮮に渡った日本国籍の日本人妻のその後について、何回も北朝鮮に渡航して繰り返しインタビューをして書き上げられた本である。登場する人数は少ないのだが、時間をかけた綿密なインタビューであり、対象人物の経歴などが良く分かるのである。この数人の日本人妻の体験が全ての日本人妻の北朝鮮生活を代表しているのかどうかについては定かでないが、取り敢えず、90歳代の高齢になるまで北朝鮮に生きてこられたのであり、図らずも早くにこの世を去られた過酷な生活を強いられた日本人妻のことはこの本では知ることが出来ないので、比較的幸せな人生を送って来られた日本人妻であるのかも知れないと、中頃で、林典子女史は断りを入れている。それでもこのような事例本が書かれたのは矢張り意味のあることであり、これからも林典子女史はこのようなインタビューを続けるとの決意を述べている。-----

北朝鮮でこのように日本人妻のその後を追跡する活動は北朝鮮政府の許可が必要であり、現在幸せに暮らしている人を紹介してくれているのだろうとは分かるのである。拉致問題を解決しようとしない日本政府の非情さが浮き彫りになる中で、「朝鮮に渡った日本人妻」は、北朝鮮の今を教えてくれる数少ない貴重な本として写真は少ないが良い本に仕上がっていると思った。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その1069)

2019-07-29 08:15:00 | 奈良・不比等

北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない

「大学4年間の哲学が10時間でざっと学べる(貫成人著・角川文庫2019刊)」を読んだ。貫成人(ぬきしげと1956生れ)氏は、東大(哲学科)卒、同大学院(人文科学研究科)博士課程を単位取得退学し、埼玉大学助教授を経て、現在は専修大学(哲学科)教授である。日本哲学会編集委員などを務めると共に、一般向け哲学啓蒙書の著書多数。------

「大学4年間の哲学が10時間でざっと学べる」は、小難しい哲学の論考を超簡単に書き下している。有名哲学者1人に対して1ページで片付けており、ギリシャから現代哲学、東洋もインドも日本も全て一絡(ひとから)げに、縛り上げて有無を言わせずにそのエッセンスをピン刺しにして私たちの眼前に示してくれている。これまで日本の哲学者は西洋など外国の哲学の論旨をとても難しく誰も理解出来ない様な酷さで紹介されることが多かったようだが、貫成人氏はそれを幼稚園児に説明するかのように、とても卑近な事例を上げて説明してくれていて、哲学ってこんなに簡単なのかと思わせてくれる本となっているのだ。デカンショ(デカルト/カント/ショーペンハウエル)でも、現代哲学のサルトルやフッサールでも兎に角地べたに落とし込んで、読者の目線にまで下げまくって教えてくれているので、本当にそれで良いのかと心配にもなるくらいであるが、読めばわかった気になれる本である。これは流石に東大出のインテリの書いた本であるからこそ信頼できるのであると、文系学問の世界の構造を分からせてくれるのである。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その1068)

2019-07-28 08:15:00 | 奈良・不比等

北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない

「夫の悪夢(藤原美子著・文藝春秋2010刊/2007~2009雑誌ミセス連載記事の単行本化)」を読んだ。藤原美子(ふじわらよしこ1955生れ)女史は、お茶の水大学大学院(発達心理学専攻)修士課程を修了し、直ぐに数学者/藤原正彦氏と結婚し、3人の男子を育ててきた。------

インテリ女性であっても専業主婦として家庭に入った人の多かった時代でもあるのだが、「夫の悪夢」には子育ての悪戦苦闘を赤裸々に隠し立てせずに書き出してくれている。後半には、藤原正彦氏との馴れ初めとか、藤原正彦氏の信州の故郷であるとか、鎌倉の藤原美子女史の里の様子が、小まめにエッセイ文にして書かれている。どれも本当に興味深く読める内容であり、藤原美子女史が悩まれているシーンでは読者も一緒になって悩んでしまうような気分にさせられるほどに、筆力もおありなので、この本も“我が家の流儀~藤原家の闘う子育て”の続編として読んだのだが、読んでその後の続きが確かめられて良かったと思った。結婚30年には藤原正彦/美子夫妻は新婚旅行で行ったイタリア/スイスを再訪されるのであるが、おしどり夫婦の鑑を見ているようで、羨ましくもあり、微笑ましくも感じたのである。-----

3人の男子のお子様がどのような職業についているかなども知りたかったが、そこまでの情報公開は幾ら大作家/新田次郎の孫であるとはいえ、現在進行形である以上、覗いてはいけないのだろう。でも結構微妙な夫/藤原正彦氏もビックリの話題を連発しておられるので、何れにしても面白い本なのである。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その1067)

2019-07-27 08:15:00 | 奈良・不比等

北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない

「我が家の流儀~藤原家の闘う子育て(藤原美子著・集英社文庫2007刊/1997版の文庫化/初出1994.1~98.12雑誌連載)」を読んだ。藤原美子(ふじわらよしこ1955生れ)女史はお茶の水女子大学大学院(発達心理学専攻)修士課程を修了し、数学者/藤原正彦氏と結婚し以来3人の男子を育てられた。-----

「我が家の流儀」は、幼稚園、小学校、中学校辺りまでの子育てに絡むエピソードを毎月連載記事として藤原美子女史が、苦心惨憺筆をなめなめ書き下された名文であり、1っ編1っ編とても含蓄に溢れたお話がエッセイとして楽しめるのである。-----

3人の男子を得られた直後には、藤原正彦に伴って、イギリスのケンブリッジに1年間(7/5/3歳になる1988年夏まで)暮らしておられて、その外国暮らしとそこで知り合ったお友達ともその後も交流を続けておられてその心温まる話もふんだんに登場するので、読者としては興味津々で気が付けばあっと言う間に読了してしまっているのだ。------

夫/藤原正彦氏の父親/新田次郎氏は長男/寛太郎の生まれる前に他界されているが、そこかしこに新田次郎氏の話も書かれており、ファンなら早世の作家/新田次郎氏の在りし日をその次男の藤原正彦の家庭での様子を通して窺う事もできる仕掛けとなっているのだから、あらゆる面で単なるエッセイではない本となっている。誰しも有名人の家庭の覗き見は時間つぶしには最適であるのだから手に取れば読まずにいられない本だと思った。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする