奈良

不比等

古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その249)

2017-04-30 07:49:00 | 奈良・不比等
「海の向こうから見た倭国(高田貫太著・講談社現代新書2017刊)」を読んだ。日本の弥生末期から古墳時代に至る歴史を朝鮮半島の考古遺跡からの出土品と我が国のそれに比較して興味深い論考を進めている。旧百済地域から半島南西端・栄山江流域さらには大加耶・金官加耶、新羅に至る半島の南海岸から見付かる考古出土品や古墳の墓制の研究が進むにつれて、倭系土器の発見や13基の前方後円墳の存在により当時の倭国との関係が色濃く想像される。------
日本では宮内庁書陵部の管理している皇室関係の御陵は発掘出来ないが、陵墓参考地などに指定されていない地方豪族と目される古墳の学術調査は戦前戦後を含めて可也(かなり)な数で為(な)されてきており、大和朝廷成立後の巨大古墳はアンタッチャブルで未公開であるハンディを背負いながらも古墳時代の学術研究はそれなりに進んでいる。-------
高田貫太(たかたかんた)氏は岡山大学(文学部)卒で韓国の大学(慶北大学)で博士課程を修められており、日韓両国の比較物質文化論を自前のものとするに相応(ふさわ)しい人物であり、現在、「総合研究大学院大学(国立歴史民俗博物館・日本歴史研究専攻)准教授」である。奈文研(2006~2010)にも居た事があるそうです。------
韓国においては共和国である故か経済発展をしたお陰なのか次々と古代遺跡の発掘調査が進められて来た。漸く、日韓の考古学の共同研究が実を結び掛けて来た処と云えるのだろう。文献史学も重要であるが、考古学的な実証研究は科学的な究明法を駆使して歴史的事実を物質の面から徐々に解明してくれており、特に日本国内だけの研究範囲では行き詰っていた前方後円墳の歴史的意義なども日韓の比較により、推論の可能性を高めて呉れる。
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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その248)

2017-04-29 08:27:56 | 奈良・不比等
世界遺産・古都奈良のリストから洩(も)れており、将来その可能性も無いと思(おぼ)しき奈良県内の寺院がスクラムを組んで「大和十三仏霊場」を結成し、「大和十三仏ご朱印めぐり」を企画宣伝している。------
順不同にて大和十三仏霊場を構成する寺院名と其の諸尊像名を列記する。「1.宝山寺(不動明王)」「2.矢田寺(地蔵菩薩)」「3.西大寺(釈迦如来)」「4.安倍文殊院(文殊菩薩)」「5.長岳寺(普賢菩薩)」「6.当麻寺中之坊(弥勒菩薩)」「7.新薬師寺(薬師如来)」「8.おふさ観音(観世音菩薩)」「9.信貴山玉蔵院(阿閦如来)」「10.長弓寺(勢至菩薩)」「11.霊山寺(阿弥陀如来)」「12.円成寺(大日如来)」「13.大安寺(虚空蔵菩薩)」------
大和十三仏霊場の寺院は奈良県の北中部に散在しており、「大和十三仏ご朱印めぐり」を開始すれば奈良盆地の東西南北を巡ることになる。------
「大和十三仏霊場」と似たコンセプトの寺社コンビネーションの「大和七福神八宝霊場」がある。何れも世界遺産とは無縁の寺社である。これも寺社名と神名を列記する。「1.大神神社(三輪明神)」「2.長谷寺(大黒天)」「3.朝護孫子寺(毘沙門天)」「4.当麻寺中之坊(布袋尊)」「5.談山神社(福禄寿)」「6.安倍文殊院(弁財天)」「7.おふさ観音(恵比須天)」「8.久米寺(寿老神)」-----
十把一絡(じっぱひとから)げにしている理由は、「西国三十三所巡り」などと同様に、国内観光客向けに江戸を遡る昔からこのような趣向は功を奏してきたのだろう。-----
日本の歴史に然程(さほど)の興味が無く、信心に厚い訳ではない衆生のためには丁度頃合いの巡礼先が用意されていると云えるのだろう。
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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その247)

2017-04-28 09:08:05 | 奈良・不比等
日本列島の桜前線は青森から北海道に漸く上陸した頃だと思われるが、古都奈良・佐保川堤の染井吉野(ソメイヨシノ)の桜の季節は既に終わって、本数は少ないが元興寺(がんごうじ)や興福寺に植栽されている牡丹桜(ボタンザクラ)が艶(あで)やかに咲いている。--------
近鉄奈良線の沿線住宅地ではアメリカ花水木(アメリカハナミズキ)をお庭に植えて居るお宅が多く、ピンクや白・赤の花が咲き誇っている。和風のお庭でも桜はあまり好まれないが、梅だけでは寂しいのかアメリカ花水木なら丁度背景に溶け込んで呉れるので一時期流行ったかのようである。-------
古都奈良・三条通りの南都銀行本店辺りから猿沢池に掛けて街路樹にアメリカ花水木が植えられており、興福寺境内から盛んに咲いていた桜の後の無聊(ぶりょう)を慰めて呉れる。-----
アメリカ花水木はあっさりとした花であり、地味の関係で赤い花が後年には白い花に代わって仕舞うこともあるが、今の処、三条通りのアメリカ花水木は赤やピンクの花が多いようだ。-----
5月のゴールデンウイークに掛けて牡丹(ぼたん)の花も咲き始めている。芝桜も一斉に咲くので戸建て住宅のエントランスや生垣の裾に植えてあると彩り豊かで通り掛かる人の目も楽しませてくれる。これからは、皐月(さつき)や躑躅(つづじ)の花の競演も控えている。例年の事だが季節の移り変わりは次々と咲く花の開花に驚かせられるばかりで、気が付けば過ぎ去るばかりで立ち止まっては呉れない。-------

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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その246)

2017-04-27 09:22:05 | 奈良・不比等
「京女の嘘(きょうおんなのうそ・井上章一著・PHP2017刊)」を読んだ。「国際日本文化研究センター教授(建築史・意匠論の他、日本文化、美人論、関西文化論に論究されている。)」である井上章一(京大卒・1955京都生れ)氏は「京都ぎらい」の著書などもあり、その論説には説得力が高く、単なる評論家ではなくて学術的なアプローチを欠かさない真摯な態度が見て取れる。勿論、「国際日本文化研究センター」の教授をなさっているのだから当然とも思えるが、その中に籠(こも)るだけでなく、「京女の嘘」のような一般向け書籍を著すことも忘れて居ない稀有(けう)な学究である。-------
話は京都から古都奈良に飛ぶが、古都奈良でも観光振興のためのイベントには美人の需要が確かにあるように思われる。
世界遺産・古都奈良の平城宮跡では今年も「平城京・天平祭2017(5月3日~5日)」が「奈良県庁・平城宮跡事業推進室他」の主催で行われる。メインの「平城京・天平行列(5月3日)」では、天平衣装に身を飾った元明女帝(第28代ミス奈良・仲谷遥さん)を始めとした美しい女性陣が大極殿前に集結します。-----
平城宮跡では年間を通じて様々な催しが奈良県民の税金を投入して行われている。世界遺産・古都奈良にリストアップされている他の寺社ではそれぞれ民間活力で催しの運営が行われているのが現状であるが、平城宮跡はそのような伝統文化を担(にな)ってきた歴史が一切ないのでそれを創造すべくこれまで奈良県が主体的にイベント開催を将来に向けて根付いて行くように実施してきている。-----
平城京天平祭でも采女祭りなどと同様に美しい女性を登場させる仮装行列を仕組んでいるのは、県・平城宮跡事業推進室の本気度が強いことを物語っているようだ。
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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その245)

2017-04-26 06:41:31 | 奈良・不比等
世界遺産・古都奈良の「東大寺・大仏殿(毘盧遮那仏びるしゃなぶつ)」の拝観料を500円から600円に100円値上げするとのテレビ報道(平成29年4月24日)を観た。昨年来(平成28年)、財務省方面より観光立国を進めるに当たり、観光振興に向けての潤沢な予算を組むことは国家財政的には無理であると考えているようであり、世界遺産クラスの寺社の拝観料はもう少し値上げをして、案内板の新設や防犯カメラの増設など構内整備を自(みずか)らですると宜しいのではとの一見親切に見える助言が為されていた。文化庁にしても文化財の保護は求めてくるが、国からの財政的な援助は略(ほぼ)無いに等しい。文化財を所有する寺社においては拝観料の収入を文化財の修理・保全に充てなければならない。東大寺では南大門の近未来の修理が控えており、七重塔の発掘現場の保存や将来的な再建のためにも拝観料の値上げは避けられないのだろう。-------
古都奈良の阿修羅像を有する興福寺・国宝館の拝観料は600円であるので、東大寺・大仏殿の500円は安過ぎたのかも知れません。-------
薬師寺(800円)や唐招提寺(600円)の拝観料なども既に500円ではなくなっており、東大寺の拝観料は良くこれまで500円にて持ち堪(こた)えてきたものだと感心するばかりである。------
ヨーロッパの教会の聖堂への入場や、大英博物館などは入館料が無料であると聞くと、日本の寺社の拝観料は宗教施設だから無料でもおかしくないのに寧ろ高いのではないかと思う向きもあるでしょうけれど、寄付文化の途絶えている日本社会で、国家財政も厳しい折から、日本の世界遺産のシンボル的存在の東大寺などの拝観料の値上げは国内・修学旅行生にとっては残念ではあるが、仕方がないのでしょう。
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