奈良

不比等

古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その706)

2018-07-31 08:15:00 | 奈良・不比等
「君たちはどう生きるかの哲学(上原隆著・幻冬舎新書2018刊)」を読んだ。上原隆(うえはらたかし1949生れ)氏は、立命館大学(哲学科)卒にて、PR映像制作会社、“思想の科学”編集担当等を経て、現在は執筆活動に専念している。エッセイスト・コラムニストでもある。-----
「君たちはどう生きるかの哲学」は吉野源三郎(1899~1981)の不朽の書「君たちはどう生きるか(1937発刊~刊行後80年を過ぎても読み継がれている)」を鶴見俊輔(1922~2015)の哲学を補助線にして深く読み進めている。-----
第二次大戦を挟んで、思想的転向を知識人はどのように行動し自分を納得させたのかについて、豊富な事例を上げて下世話とも云える視点から解説している。------
先の大戦においては大多数の国民が小数の支配層エリートの巧妙な洗脳を受けて、自ら死地に赴いた気配があるが、その事の表裏を隠さずに追求してくれている。そのような無謀な事態に陥らないためには“どう生きれば宜しいのか”と云う哲学的命題が日常茶飯事の中で論究されている。戦前にも確かな誠実なエリートが居たことはいたのだが、その声はともすれば掻き消されて、政治に届かなかった。虚しい気持が先行したであろう人々だが、戦後も弛まず、活動を続けて居られたのだが果たして後進は育ったのだろうか。このような問い掛けを繰り返し本書「君たちはどう生きるかの哲学」の著者・上原隆氏は何時かはこのような問いに答えられる若者が増えることを願っているようであった。
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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その705)

2018-07-30 08:15:00 | 奈良・不比等
「学び続ける力(池上彰著・講談社現代新書2013刊)」を読んだ。池上彰(いけがみあきら1950生れ)氏は、慶應大学(経済学部)卒で、NHKにて記者生活を送る。2005年に退局している。2012年には東工大リベラルアーツセンターの教授となっている。-----
「学び続ける力」では、東工大の講義内容を題材として、理系人にも大切なリベラルアーツ教育について具体的に説明をしてくれている。現代社会で高度な職掌に身を置く際に、滲(にじ)み出す様な教養を持っているかいないかでは、その時々の高度な施策の判断において、より良い道を選択できるのではないかと云っている。まあ、どのように異なってくるかは分からないが、常識を逸脱しない判断を間違いなくこなせる能力と云うのはリベラルアーツ履修により得られるに違いない。-----
偏差値の高い学生たちを教えるのは池上彰氏にとって嬉しかったようだ。特に理科系の最高学府(東工大)で講義するのであるから、胸も高なったことだろう。-----
本の末尾には“教養とは何か、それは学び続ける力である”との言葉で持って結んでいる。----
NHKを退局して6年、漸く世の中への恩返しの仕事が出来るようになったとも感じたそうである。矢張り世の中、若者に世の中の事を教えるのは楽しいことであるようだ。TVでは双方向性が無いので、矢張りリアルな講義は特に感動ものの様である。
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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その704)

2018-07-29 08:15:00 | 奈良・不比等
「シンガポールで見た日本の未来理想図~少子高齢化でも老後不安ゼロ(花輪陽子著・講談社α新書2018刊)」を読んだ。花輪陽子(はなわようこ1978生れ)女史は、青山学院大学(政経学部)卒で、外資系銀行勤務の後、ファイナンシャルプランナーとして独立し、2015年から夫の転勤に伴い生活拠点をシンガポールに移している。-----
シンガポールは人口500万人の小国であるが、リークアンユーの政治家としてのリーダーシップのお陰で建国50年の現在、一人当たりGNPは日本よりずっと多くなっている。その実態を花輪陽子女史は自らの体験をベースとして逐一日本と較べてくれていて、本当に分かり易いシンガポールの現地事情解説本となっている。-----
シンガポールも日本と同様に少子高齢化しているが、特段の将来不安は感じられないと云い、その理由についても解説して呉れている。但し、日本もその施策を真似すればよいのではとのサジェスチョンもあるが、施策ごとに歴史的経緯のあるものなので、簡単に真似られないのは残念ではあるが仕方が無い。その意味で“日本の未来理想図”として夢見ることは出来るが実現には無理があると思った。------
花輪陽子女史の夫は英語のレベルアップを図っているとの話も紹介されているが、ビジネススクールに通っている割には実が上がっていないとぼやいている。でも夫妻の行動の合理性が感じられて中々の鴛鴦(おしどり)ぶりを醸している処がこの本「シンガポールで見た日本の未来理想図」の救いとなっているようにも思った。
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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その703)

2018-07-28 08:15:00 | 奈良・不比等
「声のサイエンス~あの人の声はなぜ人の心を揺さぶるのか(山崎広子著・NHK出版新書2018刊)」を読んだ。山崎広子(やまざきひろこ)女史は、国立音楽大学卒にて、認知心理学をベースに人間の心身への音声の影響を研究し、音楽・音声ジャーナリストを名乗っている。-----
「声のサイエンス」では、聴覚の仕組みから、発声の大切さに至るまで、懇切丁寧に解き明かして呉れている。現在の科学レベルで分かっている事を網羅して呉れている訳である。しかしながら、内容はそれ程、理路整然としているのではないので若干読み難い気がした。と云うのも、この分野はサイエンスと云いながら、心理効果の話となり、母親がわが子に説き聞かせるような意味合いを延々と語って呉れるので、“それはそうだろうけど”と思うしかない箇所も多い。-----
要するにコミュニケーションとして大切な音声の役割は、言葉を伝えること以前に、音声の背景となる情動の有無が最も重要で、音声の伝える言葉の内容を信じて貰おうと思えば、感情のこもった音声を発する事が肝要と説いている。-----
山崎広子女史は国立音楽大学出なので、次の話は大層納得がいった。日本で長く使われてきた音階は五音音階です。ヨナ抜きでハ長調のドレミで云うとファとシという半音の部分が無く、とても歌いやすい音階なのです。日本で西洋の七音音階が使われるようになったのは、明治の初期からなので、わずか150年程しか経っていない。日本人の音感にはまだヨナ抜き音階への馴染みが残っている。7~80年代までの歌謡曲にはヨナ抜き音階(五音音階)が多かったと云う。
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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その702)

2018-07-27 08:15:00 | 奈良・不比等
「知の越境法~質問力を磨く(池上彰著・光文社新書2018刊)」を読んだ。池上彰(いけがみあきら1950生れ)氏は、慶応大学(経済学部)卒で、NHKに入局するも、2005年にフリーとなり、人気キャスターとして活躍している。また多くの本を執筆すると共に、名城大学ほかで教授も務めているとのこと。-----
「知の越境法」は、池上彰の仕事経歴を参考とした現代社会へに対処法を説いているとも云える。大層赤裸々に池上彰氏自身の進路決定の経緯を書いてくれていて微笑ましい位に感じた部分もあった。NHKに採用されたのが不思議な程、ギリギリの線での採用であった云うことを暴露している。-----
又後年、解説委員になれなかったことから、フリーとなったとも書いている。そして池上彰氏の今日あるのは左遷されてもめげなかったことにあるのではないかとまで書いている。-----
理系の職種ならいざ知らず、文系の職業でも専門が分かれていて、ニュース一つを説明するにも、関連する多くの方の意見を聴く必要があり、池上彰氏自身はNHKで何らかの専門分野を持つことなく何でも屋の様に育って来られたので、今の池上彰氏が存在し得たとも云えると述べている。-----
“近経”は数学を駆使するが、“マル経”は数学を使わないので、ガリガリの“マル経”ではないが、“マル経”の一派の講座を大学では選んだそうである。この辺りも大変素直で隠さずに書いてくれているのは、池上彰の人徳とでも云えようか、-----
唯、読んで思ったのは、理系の分野で仕事をする人に役立つことは余りないのかも知れないなと思った。リベラルアーツの大切さも理解は出来るが、メディアでの取材や報道に信頼が生まれるのは分かるが、リベラルアーツを幾ら極めても、理系脳を持っていなければ理系のイノベーションに結び付くかと云うとそうでもないと思った。
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