奈良

不比等

古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その918)

2019-02-28 08:15:00 | 奈良・不比等
北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
「波のしくみ~ことを見る物理学(佐藤文隆&松下泰雄共著・BLUEBACKS 2007刊)」を読んだ。佐藤文隆(さとうふみたか1938生れ)氏は、京大(理学部)卒で、現在は京大名誉教授である。松下泰雄(まつしたやすお1949生れ)氏は、横浜国大(工学部)卒で、現在は滋賀県立大学名誉教授である。-----
BLUEBACKSは素人には敷居の高い本が多いのだが、「波のしくみ」もその例にもれず、とても難しいと思うが、お二人の先生は、素人に分かるようにやさしく著述することに務めたと書いているのだ。然しながら、高校物理・数学の域を超えるものは、章末のコラムに載せておいたから、分からないと思う方はその箇所は飛ばしてお読みなさいと書いている。-----
確かに高校物理の教科書のように、“弦の波”、“空気の波”、“水の波”、“電磁波の波”、と続くのであるが、急激に難しくなって、巻末は医用のCTスキャナなどの利用例を付してお茶を濁してしまっている。-----
佐藤文隆氏の目論見では、物理のスーパーストリングスセオリー(超弦理論)まで紹介したかったそうであるが、共著者・松下泰雄氏の実力不足で、尻すぼみになったと自己弁護している。そのためか、中途半端な本となっているが、大概の本がそのようなものなので、この本だけが悪いのではなくて、波のイメージから現代物理は構成されていると言いたかったのだなと思えばそれで良いと思った。副題の“ことを見る物理”とは“波”そのものであるのであると言うのだから。
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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その917)

2019-02-27 08:15:00 | 奈良・不比等
北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
「日本の中国人社会(中島恵著・日経プレミアシリーズ2018刊)」を読んだ。中島恵(なかじまけい1967生まれ)女史は、北京大学、香港中文大学に留学し、新聞記者を経て、現在はフリージャーナリストとして活動している。------
「日本の中国人社会」は、「中国人エリートは日本人をこう見る(2012刊)」に続く著書であり、日中関係が尖閣問題で冷え込んでいた2013年と較べると、中国からの観光客の増加も影響しているのか、僅か5年の経過だが、中国人から見た日本の印象は大幅に好転していると述べている。そうした中で、2017年時点で在日外国人(256万人)の内の中国人は73万人に達しているそうである。-----
日中国交正常化以降、当初は留学生だけであったが、今やミニ中華街が東京の隣県である埼玉県川口市や横浜市南区に出現して来ている様を、地道に調べて書いている。具体的にどのような人達が中国のどの地域から日本に移住して来ているのか、全くまとまりのない現地調査内容であるが、女性の目線で事細かく調べ上げて矢鱈と数多く書きまくっているのである。-----
1億2千7百万人の日本の人口からすれば大した人数ではないが、73万人の内訳としては、エリートはそれほど多くなくて、日本に滞在する中国人向けの中華飯店を営む人達も増えてきていると言う。従来の長崎/神戸/横浜の中華街のように日本社会に溶け込んでいるのではなくて、寧ろ次々と来日する中国人向けの諸サービスを請け負うお仕事に係わる人達が一定数増えてきているとその実態を調べて書いているのだ。-----
考えてみれば、日本の対中国貿易額が巨大であれば、そのお仕事を支える人材は日本人と同数の中国人も両国に必要となるのであって、大して不思議でもなんでもなくて、調べれば調べる程に当たり前のグローバル化している世間が見えるばかりであるようだ。
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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その916)

2019-02-26 08:15:00 | 奈良・不比等
北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
「作家の口福(恩田陸ほか著・朝日文庫2011刊/朝日新聞連載コラム“2009.4.4~2010.12.25”の文庫化)」を読んだ。恩田陸(おんだりく1964生れ)女史は、山本周五郎賞(2007)を受賞している。そして直木賞(2017)も受賞している。恩田陸以外にも有名な女流作家がずらりと並んでいて、どのエッセイも気軽に読めて面白い。人の食事内容を覗き見する楽しみを“どうどうと許してくれる”本なので、自分の食生活と較べて、様々な他人の事例が豊富に語られる処がミソである。後半には男性作家も登場するが、絶対に女性作家の方が面白いと感じた。男性はどうしても自身の食を飾って仕舞うようであり、素直さに欠けるし、どこか噓くさく感じてしまう。その点、女性作家は、100%事実の羅列であるに違いなく、そうだそうだと納得できる。-----
綺羅星のごとく登場する作家名を挙げると、“絲山秋子”、“古川日出男”、“村山由佳”、“井上荒野”、“山本文緒”、“藤野千夜”、“川上未映子”、“森絵都”、“津村記久子”、“三浦しをん”、“江國香織”、“朱川湊人”、“磯﨑憲一郎”、“角田光代”、“道尾秀介”、“池井戸潤”、“中村文則”、“内田春菊”、“中島京子”となっている。-----
このような食に関する文庫本は、出版年が古くても面白いので、安い古書店で買っておけば、出張や旅行の際に、カバンの中に忍ばせておいても週刊誌代わりとなって悪くないだろうと思った。
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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その915)

2019-02-25 08:15:00 | 奈良・不比等
北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
「ことわざの論理(外山滋比古著・ちくま学芸文庫2007刊/1979版の文庫化)」を読んだ。外山滋比古(とやましげひこ1923生まれ)氏は、東京文理科大学(英文科)卒で、お茶の水女子大学名誉教授である。-----
「ことわざの論理」は、良く知られた日本の“ことわざ”を材料にして、軽妙な随筆に仕上げている。英文学者であるから日本の諺と同様の意味を持つ、主として英国の“ことわざ”を対比させて説明してくれるので、内容が立体的に浮き彫りとなって単調なばかりの“ことわざ”の本が、とても面白い本に仕上がっている。随分と昔の出版物であるが、変わらぬ価値を持つ本として、文庫化されて重版も既になされているある意味で稀有な本の一つである。-----
“転石、苔を生ぜず”は“A rolling stone gathers no moss”の訳であると書いている。英国での意味は“商売替えばかりしていては金がたまらない”であり、米国では“優秀な人間なら引く手あまた席を温める暇もなく、苔の付着することも無く輝き続けられる”と正反対の意味になっていると言う。-----
“急がば回れ”は“Festina lente(ゆっくり急げ)”で、ローマのオクタヴィアヌス帝の言葉だそうである。これは撞着語法をつかっているのであり、ことわざとは少し外れるが“公然の秘密”、“負けるが勝ち”、“有難迷惑”など一面の真理を突く言葉となっているとのこと。勤め人の通勤時の読書には各節が短くて丁度良い書き物なのだろうと思った。

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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その914)

2019-02-24 08:15:00 | 奈良・不比等
北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
「興福寺/仏教文化講座(第419回/2019.2.9)」は第1講が“楽書からみた興福寺常楽会~宝冠散手(南明寺/米田弘雅)”、第2講が“貞慶の信仰と唱導の多面的把握~律の系譜と浄土信仰との関わり(名大准教授/近本謙介)”であった。-----
近本謙介氏の、浄土教と浄土宗は異なるとの解説は、とても良く分かった。南都仏教の複雑な中身が庶民には馬の耳に念仏のようなものであってはいけないとも、貞慶は考えていたようだ。“一神教のレベルにまで噛み砕いた法然”ほどには単純化していないのだが。それは仕方が無いとも云えるのは、貴族出身で貴族仏教を説く必要もあり、最下層の衆生は別途応じねばならなかったので、遁世を選んだとも云えようか。----
近本謙介氏の冒頭の、バルト3国訪問の話も面白かった。英語は日本史と日本文学の研究者にはとても不得意の壁になっているのだが、日本学のレベルの低い国では英語が下手でも困らないし、日本学のレベルの高い国ならば、彼の地の研究者が日本語を喋れるので、日本からの研究者は日本語で発表できるのだとか。ともかく、近本謙介氏の話は眠る間もなく、90分が過ぎるのである。------
南都焼討ちや叡山焼打ちが無かったら、日本古代史の研究は、今よりももっと興味深い文献が存在して面白かったのだろうなと思った。近本謙介氏の読む古文献は、鎌倉時代以降のものばかりであり、本当に焼打ちの文化破壊の威力を思い知らされるとともに、百姓クラスで頭のお弱い武人の治める国に日本は成り下がったのだなと思わざるを得ない。古の賢い人の書きしたためた古文献のあらかたは焼損したのだから。平家による興福寺の焼討ちは本当に残念な事件だったと、文化講座を聴くたびに思う次第である。
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