奈良

不比等

古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その949)

2019-03-31 08:15:00 | 奈良・不比等

北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない

「私の嫌いな10の人びと(中島義道著・新潮社2006刊)」を読んだ。中島義道(なかじまよしみち1946生れ)氏は、東大(教養学部/法学部)卒で、同大学院修士課程、ウィーン大学(哲学科)修了にて、哲学博士である。電気通信大学教授を2009年まで務めていた。専門はドイツ哲学とのこと。------

「私の嫌いな10の人びと」の章立ては、具体的に嫌いな人の特徴を順に挙げている。“笑顔の絶えない人”、“常に感謝の気持ちを忘れない人”、“みんなの喜ぶ顔が見たい人”、“いつも前向きに生きている人”、“自分の仕事に誇りをもっている人”、“けじめを大切にする人”、“喧嘩が起こるとすぐ止めようとする人”、“物事をはっきりと言わない人”、“おれバカだからと言う人”、“わが人生に悔いはないと思っている人”-----

三島由紀夫は同窓の誼(よしみ)で、リスペクトされているようだが、同じく同窓でも、小谷野敦には先輩風を吹かせておられる。小浜逸郎氏となると殆ど喧嘩腰である。ご自身でも“どうにもならない無益な哲学者”であると仰っておられるように、論理は明白だが、答えにくい問題を次々と提起して、日本人は直ぐに逃げたり誤魔化したりするので良くないと言うのである。確かに西欧諸国では、消費者に接する態度は日本と較べて客を持ち上げたりしないで対等であるそうであり、日本はあらゆる点で社会の掟が細か過ぎると言うのである。中島義道氏自身は耐えきれないので、堪えなくても良い自分に改造してきたが、まだまだ道半ばなのだと嘆いている。----

哲学者の拘(こだわ)りは、素人からみると、そこまでしなくてもと、匙(さじ)を投げたくなる代物だが、読み物としては、とても可笑しい“中島義道ワールド”を描き出しており、ファン必読の書となっている。

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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その948)

2019-03-30 08:15:00 | 奈良・不比等

北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない

「世界史の実験(柄谷行人著・岩波新書2019刊)」を読んだ。柄谷行人(からたにこうじん1941生れ)氏は、東大(経済学部)卒で、法政大学、近畿大学教授を務めた。専門は哲学史、文芸評論とのこと。多くの著作がある。-----

「世界史の実験」はタイトル通りに、ソ連の崩壊によりマルクスレーニン主義の社会実験が70年で潰えたことを受けている。柄谷行人氏は、歴史の実験は社会主義に限らず、そのような見方が全てに亘ってできるのではと、改めて問いかけているのである。柳田國男(1875~1962)の後期の活動は、日本を舞台にした、世界歴史の辺境における社会実験として眺めればそのように見える筈だと考えた柳田國男が実際に東北や沖縄の民俗史を執拗に調べたことで理解できると言う。-----

柄谷行人氏はどうやら、コミュニズムの失敗を認めるのが本意でないらしくて、何が間違っていたのかについて、学者らしく世界の思想家と日本国内の戦前の思想家を持ちだして、考察を今も続けているもののようだ。-----

大方の論議は日本を題材として話されており、幕末の国学の話から、戦後の網野善彦の史学まで取り込んで、結論としては、突飛でも無く、ノマドであるとか、苦界であるとか、読者を煙に巻くのである。要は、日本社会の武士階級は農耕社会から生まれたのではなくて、疎外された民、流通を担った民、狩猟漁労に携わった民、から発生したと断言している。読者はこの本を読んで理解できると考えるのは、少し甘いと思われる程に、内容は柄谷行人氏らしく、小難しい。然し処どころは成程と膝を打てる箇所もあるので、一読の価値はあると思った。

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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その947)

2019-03-29 08:15:00 | 奈良・不比等

北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない

「サバイバル英会話~話せるアタマを最速でつくる(関正生著・NHK出版新書2018刊)」を読んだ。関正生(せきまさお1975生れ)氏は、慶應大学(英文科)卒で、リクルートのオンライン予備校講師をしている。学生や社会人向けの英語学習教材を多数手掛けている。著書も色々出している。-----

「サバイバル英会話」は、昨今の小学生から英語を教える時代を迎えて、話せる英語を手っ取り早く習得できるためのツールとして出版されている。丸覚えすれば何とか話せる仕掛けとなっている。基本は中学英語だし、それに高校英語を若干足しているのだ。予備校の講師らしく、兎に角直ぐに役立つように書いてあるので、四の五の考えずに頭から呑み込む要領で覚えるばかりであろう。分からない単語の意味を隠しているような参考書も多いのだが、この「サバイバル英会話」は、海外に持参しても即役立ちそうな、切れの良さを持っている。-----

ダボス会議や世界賢人会議に臨む訳ではないのだから、世界中の普通の人と普通の意思疎通を図るための最低限の会話フレーズを、“OK”、“ドンマイ”、“サンキュー”だけでなく、教えてくれている。但し、海外の大学に留学するなどの際にはまったく役立たないと思うが、日本国内で出合う外国人向けには役立つでしょうから、インバウンドの客を相手にしている店では最低限の英会話術として読んでおくと良いと思った。

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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その946)

2019-03-28 08:15:00 | 奈良・不比等

北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない

「日本人の正体~大王たちのまほろば(林順治著・三五館2010刊)」を読んだ。林順治(はやしじゅんじ1940生れ)氏は、早稲田大学(露文科)中退で、編集者生活を40年続けた。文筆家であり、日本古代史研究家でもある。-----

「日本人の正体」は、林順治氏が担当していてすっかりと薫陶を受けられた石渡信一郎(1926~2017)氏の、著作「日本古代王朝の成立と百済(1988)」、「応神陵の被葬者はだれか(1990)」、「百済から渡来した応神天皇(新訂版2001)」などを、広く人口に膾炙(かいしゃ)させるために、素人にも分かり易い文体で、極めて親切に石渡信一郎の“応神天皇/昆支説”とそれを元にした、“蘇我王朝の実在”を、平易に書き出してくれている。石渡信一郎氏の著作が既に入手し難くなっていても、その解説版としての林順治氏のこの本「日本人の正体」が小学生でもわかるように、元編集者らしく読者へのサービスを忘れない、明瞭な文体で、起承転結の効いた文章で簡潔に書いているのだ。石渡信一郎の思考の逡巡や繰り返しを外して、結論のみを書いておられるのである。-----

記紀の内容は矛盾ばかりで価値がないと言う学者もいて、記紀編纂の意味合いから考えると、飾ったり、誤魔化したりしている箇所を読み解く大胆な方法は、玉石混交で難しい。ロゼッタストーンの解読のように、石渡信一郎氏は記紀の真実に肉薄したのであり、林順治氏はその昂奮を鎮めるべくこの「日本人の正体」を表してくれたようだ。

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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その945)

2019-03-27 08:15:00 | 奈良・不比等

北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない

「ユーラシア動物紀行(増田隆一著・岩波新書2019刊)」を読んだ。増田隆一(ますだりゅういち1960生れ)氏は、北大大学院(理学研究科)博士課程修了し、アメリカ国立がん研究所を経て、現在は北大教授である。専門は分子系統進化学、動物地理学とのこと。-----

「ユーラシア動物紀行」では、主に動物地理学についての知見を、ユーラシア大陸の北側について教えてくれている。ロシアや北欧3国が舞台となるので、誰でも興味深く読み進めることが出来る。地理学というだけあって、動物以外の観光名所などもそれとなく紹介してくれてもいる。-----

動物地理学の目指す処は、野生動物の生息域を調べて、分類動物の進化系統を知ることにより、進化の尖端にいる人類の将来を予測することにあるのだと言う。壮大な研究テーマであり、一大学で研究できるものではないので、世界の大学と共同研究して、研究領域をカバーして、地球規模の生息域を把握するとのことである。-----

登場する動物は“へらじか(ムース)”、“クロテン”、“オオワシ”、“トド”、“アナグマ”、“ビーバー”、“ヒグマ”、“ハリネズミ”、“マーモット”、“シマフクロウ”などと、絶滅した“マンモス”である。興味のある人には圧倒的な面白さが感じられることだろう。しかしながら、増田隆一氏のような専門職につくにはものすごく高いハードルがあるのだろうなと思った。

 

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