北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
「私の嫌いな10の人びと(中島義道著・新潮社2006刊)」を読んだ。中島義道(なかじまよしみち1946生れ)氏は、東大(教養学部/法学部)卒で、同大学院修士課程、ウィーン大学(哲学科)修了にて、哲学博士である。電気通信大学教授を2009年まで務めていた。専門はドイツ哲学とのこと。------
「私の嫌いな10の人びと」の章立ては、具体的に嫌いな人の特徴を順に挙げている。“笑顔の絶えない人”、“常に感謝の気持ちを忘れない人”、“みんなの喜ぶ顔が見たい人”、“いつも前向きに生きている人”、“自分の仕事に誇りをもっている人”、“けじめを大切にする人”、“喧嘩が起こるとすぐ止めようとする人”、“物事をはっきりと言わない人”、“おれバカだからと言う人”、“わが人生に悔いはないと思っている人”-----
三島由紀夫は同窓の誼(よしみ)で、リスペクトされているようだが、同じく同窓でも、小谷野敦には先輩風を吹かせておられる。小浜逸郎氏となると殆ど喧嘩腰である。ご自身でも“どうにもならない無益な哲学者”であると仰っておられるように、論理は明白だが、答えにくい問題を次々と提起して、日本人は直ぐに逃げたり誤魔化したりするので良くないと言うのである。確かに西欧諸国では、消費者に接する態度は日本と較べて客を持ち上げたりしないで対等であるそうであり、日本はあらゆる点で社会の掟が細か過ぎると言うのである。中島義道氏自身は耐えきれないので、堪えなくても良い自分に改造してきたが、まだまだ道半ばなのだと嘆いている。----
哲学者の拘(こだわ)りは、素人からみると、そこまでしなくてもと、匙(さじ)を投げたくなる代物だが、読み物としては、とても可笑しい“中島義道ワールド”を描き出しており、ファン必読の書となっている。