北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
「古代日本の官僚~天皇に仕えた怠惰な面々(虎尾達哉著・中公新書2021刊)」を読んだ。虎尾達哉(とらおたつや1955生れ)氏は、京大(文学部)卒、同大学院(文学研究科)博士課程中退、京都大学(博士)。現在は鹿児島大学(法文学部)教授である。専門は日本古代史とのこと。------
この本の目次は次の通り。“律令官人とは何か(豪族を官僚に編成する/律令官人群の形成/律令官人の世界/朝服の制定/蔭位の制で貴族を再生産/下級官人の特権)”、“儀式を無断欠席する官人(天皇への賀正の儀式に出ない/御前での任官儀式に出ない/位階昇進などの儀式に出ない/六位以下官人の無断欠席/大目に見られる六位以下)”、“職務を放棄する官人(使者としての派遣を辞退する/小納言が重要政務を遅刻欠席する/郡司が自身の解任を求める/中央官人への抜け道/職務放棄する中央官人たち/写経生たちの無断欠勤/国家的祭祀に集まらない/全国諸社の祝が来ない)”、“古来勤勉ではなかった官人たち(時間にルーズな官人たち/学ぼうとしない官人たち/律令を学ばぬ律令官人/不正を働く官人たち/国司はおいしいと云う宿痾/乱暴な官人たち/女官に取り入る官人たち)”、“官人たちを守る人事官庁(押しの強い実力官庁/怠業する官庁/官人たちを不当な制裁から守る)”、“官僚に優しかった専制君主国家(怒り猛る中国皇帝/罰金を納めない官人たち/律令国家の外観と内実/それでも回る律令国家)”--------
虎尾達哉氏は、六国史を読み解き下級官僚の退廃ぶりを暴き出して、今も昔も官僚の生態は変わらないと主張されているのだ。だから古代日本史の人物歴史を期待した人は少なからず落胆することだろう。------
虎尾達哉氏は定年退官(2021.3)された。日本古代史を専門とするならば、奈良平安時代ではなくて、飛鳥/白鳳時代の真相(聖徳太子の真実など)を解明して欲しかったが、もう無理なのかもしれない。