奈良

不比等

古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その890)

2019-01-31 08:15:00 | 奈良・不比等
北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
「図書館劇場ⅩⅢ第5幕歴史文化を語る(2019.1.27於:奈良県立図書情報館)」が開催された。講演①は「飛鳥以前/欽明天皇と仏教伝来(千田稔館長)」で、欽明天皇と蘇我稲目、小姉君、堅塩媛が登場し、コンパクトにまとまったお話が面白かった。都塚古墳の被葬者は蘇我稲目であるとか、五条野丸山古墳の被葬者は欽明天皇と堅塩媛であるとか断言されて、とても歯切れの良い講演であった。蘇我氏渡来人説はもう誰も否定できない、“蘇我氏の古代学(坂靖著・新泉社2018刊)”で確定だとも云われていた。-----
途中、飛鳥ばかりが脚光を浴びているが、欽明朝のあった桜井の方が、蔑ろにされているのは許せないとも云われて、聖徳太子の上之宮遺跡が桜井市であることなども、もっと宣伝しておれば、桜井市の方が古代史人気が飛鳥よりも進んだかもしれないと残念に思っていると。遅ればせながらも今後は桜井の宣伝を続けたいとの決意も述べられていた。今も旺盛な千田稔館長でした。-----
朗読は“前登志夫著/病猪(やまじし)の散歩”で、都築由美女史の美声に癒された。講演②は“古事記朗唱やまとがたり/大小田さくら子”でした。
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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その889)

2019-01-30 08:15:00 | 奈良・不比等
北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
「日本の同時代小説(斎藤美奈子著・岩波新書2018刊)」を読んだ。斎藤美奈子(さいとうみなこ1956生れ)女史は、成城大学(経済学部)卒で、児童書などの編集者を経て、現在は文芸評論家として活動している。----
「日本の同時代小説」は、1970~2010年代の50年間の日本の小説作品をざっと眺めて、批評した本として出版された。ざっと眺めているだけだが、斎藤美奈子女史の目から見た作品の出来不出来が存分に語られているので、とても面白い。だいたいは芥川賞や直木賞受賞作品を対象にしているが、その他もできるだけ多く取り上げておられるようで、寸評ばかりだが、良い、ダメと判定が分かり易くて、本当に簡単に読める。-----
60年安保闘争から続く70年代から始まって、“赤頭巾ちゃん気をつけて(1969庄司薫)”など懐かしい小説名が登場する。戦前型の知識人の凋落が始まるのだそうである。1970年代は記録文学が隆盛したと書いている。開高健や山崎豊子の名が挙げられている。1980年代は東京ディズニーランド開園(1983)で分かるように、小説も遊園地化したとしてその代表に村上春樹をあげている。つづく1990年代は、女性作家の台頭があったとして宮部みゆきをあげている。次の2000年代は9.11事件に端を発して戦争と格差社会が世界的現象として小説にも強い影響を及ぼしているのであると書いている。漸く日本でも太平洋戦争の功罪について正面から扱える時代になったのではないかと思うそうである。そして2010年代は彼の“東日本大震災(2011)”が重い影響を社会に及ぼして、将にディズトピアの到来を考えざるを得ないところに人々が追い込まれてきたという状況が小説の舞台にもならざるを得なくなって来ていると言う。-----
「日本の同時代小説」は全体に雑駁(ざっぱく)な本であるが、他に同類の本が無いのでそれなりに売れるのだろうと思った。
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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その888)

2019-01-29 08:15:00 | 奈良・不比等
北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
「学問の発見~数学者が語る考えること学ぶこと(広中平祐著・BLUE BACKS 2018刊/1982年版の新書化)」を読んだ。広中平祐(ひろなかへいすけ1931生れ)氏は、京都大学(理学部)卒で、ハーバード大学大学院(数学科)修了、コロンビア大学を経て、1968年にハーバード大学教授となる。1970年にフィールズ賞を受賞している。-----
「学問の発見」は、36年前に出版された本だが、日本社会の経済だけでない低迷を危惧して、広中平祐氏の存命中に、科学技術立国の大切さを説いた名著を、“BLUE BACKS”として再度世に送り出しておこうとしたものであるようだ。-----
「学問の発見」は、文系の学問ではなく、はっきりと理系それも数理の学問の華、数学者・広中平祐氏の誕生の自叙伝となっており、読めば、その中から将来の自然科学者や優秀な技術者が誕生する筈だと言う希望を込めて書かれているのである。-----
親は選べないが、友達は選べると書いておられたり、大変に具体的であり、今も面白い。数学という学問が、20~30代で完成すると言う世間の常識の通り、広中平祐氏のフィールズ賞の受賞は39歳である。だからこそ、人生の円熟などとは関係なく、氏の自叙伝が役立つのである。自然科学の世界はそれ程に若くて柔軟な知性が求められるのであると。-----
高齢化社会の住人には無用の本であるが、日本社会がこれからも世界に伍(ご)して続くためには、科学技術の面で研究開発が為されなければならないのだから、楽な文系の学問を修めるだけで社会で高収入を得られる時代はもう終わるだろうし、若い人たちには難しい数理の学問世界に挑戦して貰って、成功をして貰わねばならない。その方法を広中平祐氏の自叙伝は日本人の代表として書いてくれているので、大事にせねばならないと思った。
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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その887)

2019-01-28 08:15:00 | 奈良・不比等
北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
「新版/議論のレッスン(福澤一吉著・NHK出版新書2018刊/2002年版の新書化)」を読んだ。福澤一吉(ふくざわかずよし1950生れ)氏は、早稲田大学大学院(文学研究科心理学)修士課程修了で、Northwestern University(言語病理学科)博士課程を修了し、PhDを取得した。現在は早稲田大学教授で、専門は認知神経心理学とのこと。-----
16年前の2002年版を「新版/議論のレッスン」として再版した理由は、ずっとベストセラーだったからだそうです。内容はとても易しく書かれていて、分かりよいのだが、こんなレベルの内容で議論のレベルが上がるのだろうかと思ってしまった。しかし、政治家を見ても議論の上手な人は日本人の中では殆どいないことを考えると、日本の教育の上で議論の方法を教えていないことが原因だと知らされるとそれもそうだと肯(うなず)かざるを得ない。----
中程に、議論のレベルの話が書いてあって、“議論レベル1:日常の議論”、“議論レベル2:公の場での議論”、“議論レベル3:科学的議論”と3つあるが、この本で述べているのはレベル1とレベル2であり、科学的議論は対象としていないと書かれており、このレッスンも所詮は文系の学問の領域の話なのだなと少し残念に感じた。第2次大戦中のドイツからのロケット弾がロンドンに着弾した地図を使って、どちらに逃げようとしただろうかと設問があり、区分けの仕方で統計処理の綾(あや)で、集中地域の傾向が変わって見えてしまうと言う例を挙げている。これが唯一の理系的な心理学的な著述であった。-----
この本を使って教えるのならば、小学生か中学生が妥当だと思ってしまう程に、論理が易し過ぎるのではと思った。そして役立つのかなとも思った。結局日本人は直ぐに感情的になるのでしばしば議論にならないのだから、このような本でも読まないよりましなのだろうと理解した。
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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その886)

2019-01-27 08:15:00 | 奈良・不比等
北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
「都市の正義が地方を壊す~地方創生の隘路を抜けて(山下祐介著・PHP新書2018刊)」を読んだ。山下祐介(やましたゆうすけ1969生れ)氏は、九州大学大学院(文学研究科)博士課程中退で、弘前大学を経て、現在は首都大学東京・准教授である。専攻は都市社会学、地域社会学とのこと。-----
「都市の正義が地方を壊す」では、経済活動において地方がお荷物になっているという議論ばかりが先行していて、都市の抱える問題を明らかにしていないと強調している。都市問題を地方に押し付けてきたから地方が衰微したのであると言う論法である。-----
唯、文系の学者であるので、数量的な解明が甘くて言葉が先行しているために、感情的に煽ることはお得意でも、実態解明のメス捌(さば)きは、余りお上手でないと思った。でもこの種の本があるようで無いので、市町村の職員であれば参考にせざるを得ないと思うが、読んでもヒントは見いだせないだろうと思った。総論のオンパレードで、しっかりした各論は一つも見いだせないだろう。-----
少子化の問題は地方を邪魔者扱いしてコンパクト化を図るしか生き延びられないと云った暴論を吐いてきた付けだと言いきってもいる。地方創生で地方に仕事を創りださねば人が居着かないと都市の人は心配しているようだが、見当違いも甚だしくて、地方には仕事があるから現在も人が住んでいるのだと言うことを、実見せよと、書いている。その仕事が都市の仕事のように威信の高い仕事ではなくて、農林漁協のような威信の低い仕事であることで、都市は高慢ちきになっているに過ぎないのだとお叱りの言葉さえ吐かれている。

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