奈良

不比等

古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その798)

2018-10-31 08:15:00 | 奈良・不比等
北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
「邪馬台国は朱の王国だった(蒲池明弘著・文春新書2018刊)」を読んだ。蒲池明弘(かまちあきひろ1962生れ)氏は、早稲田大学卒で、読売新聞社(経済部)に入社するも、中途退社し、桃山堂出版を設立した。自らも歴史神話に係わる著述をしている。「邪馬台国は朱の王国だった」は、邪馬台国と大和朝廷の成立の頃を、当時貴重であった鉱物資源の朱(辰砂・水銀と硫黄の化合物/HgS)の探鉱・開発・争奪を追って、古代国家の九州から大和への東遷を意味づけている。これが真実の歴史に近いかどうかは別にして、結構真剣に論考されている。朱の貴重さは防腐剤であり、仙薬であり加熱すれば水銀となり、陵墓の造営にも欠かせない材料であったことは確かである。-----
蒲池明弘氏は理系の人ではないので、鉱物としての朱のことを詳しくご存じではなくて、受け売りの文言が多く、殆どが古代史を邪馬台国から説き起こして、奈良時代の大仏造営までを走り抜けるような章立てになっている。朱に目を付けたことは、これまでの日本古代史の解釈に新たな一石を投じるのではと蒲池明弘氏は述べているがそれ程に、センセーショナルな内容でもなくて、これまでも何方(どなた)かの著作で読んだような気のすることが多かった。でも、朱で一冊の新書を書きあげられているところは大したものである。奈良県も嘗ては朱の鉱床が多く存在したそうであり、記紀で観光振興を図ろうと云う自治体の部局では読んでおいた方が良いだろうと思った。
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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その797)

2018-10-30 08:15:00 | 奈良・不比等
北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない

「半分生きて半分死んでいる~平成とはすべてが煮詰まった時代/宙ぶらりんの立場だから真理が見える(養老孟司著・PHP新書2018刊)」を読んだ。養老孟司(ようろうたけし1937生れ)氏は、1995年、東大医学部教授を退官して、現在は東大名誉教授である。-----
「半分生きて半分死んでいる」は、東京農業大学・昆虫学研究室に行った際に、学生から“養老さんじゃないですか、生きてたんですか、もう死んだと思ってました。もう歴史上の人物ですよ。”と言われて、養老孟司氏本人は頑張っているつもりでも世間では死亡済み扱いだったと教えられて“半分死んでるんだ”と思って付けたタイトルなのだそうである。-----
タイトルの過激さと符合して、養老孟司氏にしては辛辣な発言が随所に見られてとても面白い著作となっていると思った。人間の意識を操っているのは身体であり、眠くなれば寝るのは身体の都合なのであるとか。若い時はそれでも意識過剰で元気だが、歳を重ねると身体が人間の主人であることが嫌と言うほど分かるとも書いている。あちこち身体にガタがくるので分かるそうである。-----
政治は嫌いだがとの前置きの後に、右翼左翼について、右翼は“国だけを公と考える人達”であり、左翼は“個と公をごっちゃにする人達”を言うと、そして左右がいがみ合う時代は寧ろ公が消える時代となって仕舞うのではないかと心配されている。日本の良くできた歴史的なシステムは“三方良しであり、店良し・客良し・世間良しとどこにも自分は無いのであり、それを公と呼びたい、国だけが公ではない”と書いている。地方公共団体の職員なら読んでおくと公の意味合いが深まり職務に役立つことだろう。
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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その796)

2018-10-29 08:15:00 | 奈良・不比等
北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
日本は律令制を導入した際に、“科挙は取り入れずに貴族の子弟を優先的に官吏に採用する方針を取った”と日本史で習った。しかし、明治維新を経て、結局、1000年以上も拒み続けてきた“科挙”を全く“科挙そのものであるかのような試験選抜”を行い官立学校を設置し、その中でも取分け優れた帝国大学を卒業した偏差値最上級の人達により国の運営を任せることにした。そうしなければ近代化は覚束なかったのだろう。明治初年(1868)から150年(1.5世紀)を経た今(2018)もそれは続いており、誠に中国の古代からの施政の仕組みは良くできていたのだなと感心するばかりである。日本は歴史上科挙を取り入れなかったと言っている人は、嘗て程の勢いは無いとも云われるが、それでも腐っても鯛の東大卒の人達が現代社会の要衝を押さえている現実をようく見るがよいと思う。------
地方自治体の公務員職員も、バブル経済崩壊以降の就職氷河期を挟んで、人気の就職先の第1位が国家公務員で、第2位が地方公務員だそうである。絶対に倒産しないしリストラもないという安心がそのように若者の気を引くのであろう。自身の父親が目の前でリストラされてきた様子を見れば、深刻に受け止めて当然だろう。お陰で都道府県や市町村にはこれまで民間に就職していた国家公務員クラスの偏差値上位のビューロクラートやテクノクラートが揃っており、知事や市町村長はその気になれば、立派な仕事を推進できると云うことである。安倍政権になって株価も上昇しているが、公務員人気は衰えることが無い。公務員の職場も非正規や派遣やアルバイトの職員は多いだろうが、益々、正規の公務員に合格するのが難しくなることだろう。将に、中華帝国の“科挙”の再来ではないかと思う次第である。誰しも、政治家や公務員には高偏差値の人にその職責を果たして貰いたいと思うのは、至って正常な考えだと思う。
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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その795)

2018-10-28 08:15:00 | 奈良・不比等
北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
「世界史序説~アジア史から一望する(岡本隆司著・ちくま新書2018刊)」を読んだ。岡本隆司(おかもとたかし1965生れ)氏は、京都府立大学教授にて、専門は中国史とのこと。-----
「世界史序説」は、近代西欧の歴史学を信奉する姿勢を横に置いて、アジアから世界史をグローバルに見る史観を樹立すべく、岡本隆司氏が悪戦苦闘して書いた新書である。それでもこのような試みは新規性があるのか、誰しも手に取りたくなる代物であり、紙面の出来栄えはそれほど重要ではない。-----
そして実際の記述を見ると、ユーラシア大陸の出来事を西欧中心に見てきた史観をイスラム世界や中国世界の歴史事象を加味して、記述し、産業革命以後の西欧の帝国主義はそうだろうけれど、それまでの歴史を展開してきたのはオリエントであり中国であり遊牧地帯であったと自説を開陳している。モンゴル帝国の活躍によって、現在のロシアもイランも国が成立しているのだと、銀と兌換(だかん)の紙幣の流通はモンゴルの考案であるとか、西欧の暗黒の中世は瑣末なことであると片付けている。-----
奈良県のシルクロードへの郷愁はそれはそのままで、モンゴル世界帝国にも関心を示してはどうかと考えさせられた。関孝和がお勉強をした興福寺の数学書は元からの輸入本であったようだ。
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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その794)

2018-10-27 08:15:00 | 奈良・不比等
北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
樋口一葉(ひぐちいちよう1872~1896)も確(しっか)りしたスポンサーがいれば、もっと生きて作品を残せたのにと、5千円札の肖像を見るたびに思います。森鴎外や幸田露伴も激賞は良いが、金銭面の支援をされるべきだったでしょう。それに引き換え、1千円札の肖像となっている野口英世(1876~1928)は、同じく極貧でありながら、アメリカのロックフェラー研究所にまで雄飛している。人は他人に頼るのを良しとしない性(さが)を持っている人と、誰彼なく借金をして返さない人もいる。それでも野口英世は三段跳びのように立身出世した。勿論、お勉強も出来たのだろうけれど。-----
日本はバブル崩壊後、経済産業システムがかなり変化して、大学の授業料は国公立でも私立と変わらぬくらいに相当高くなってしまった。明治大正の時代のように、良くできる子はそれなりにスポンサーのつくこともあったが、現代のように世知辛い時代となっては、それは望むべくもない。高卒と大卒を学費プラス生活費で差し引きすると一人当たり、1000万円になるそうである。高卒で働いて貰うか、それとも大学に進学させるかは、親にとって大変な負担となっている。1000万円を日々の稼ぎから捻出(ねんしゅつ)せねばならない。就職氷河期世代や非正規で働く親の下に生まれた子供達は、自分で返還義務のある奨学金を高利で借りるなど社会に出る前に借金をすることになる。また、偏差値の高い大学への進学を希望するには予備校に通わねばならないが、そのような費用は工面出来ないだろう。結局、Fランクの大学に入学しても余り有利な就職先は見込めそうもない。格差が固定されるだろうと云うのが、識者の見る処であるようだ。これを階級移動できるようにするにはどうすれば良いのか、難しい処だ。医者の息子は医者だし、政治家の息子は政治家になっている例が相当多いのを知らない人はいないだろう。----
下層に生まれる者にこそ、生き残る知恵が求められるのだろう。韓国ドラマ“オクニョ”を観ていてそう思った。
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